実際にあったモメる遺言①

実録モメる遺言①

 

こんにちは、司法書士の上塩入です。

今回は、私が業務の中で実際に見た遺言と、その遺言によりどんな相続が起き、どんな問題があったのかをご紹介したいと思います。

これからご紹介する内容は全て実例ですが、司法書士には守秘義務がありますので登場人物や相続人について手を加えております。ご了承ください。

【登場人物】
被相続人X
Xの妻Y(AとBの母。既に他界)
Xの元妻W(Zの母。)
相続人A、B、Z

依頼の概要

被相続人Xの相続人であるAから、Xが住んでいた実家の相続登記手続を依頼されました。

相続関係を聞き取りや戸籍などで調査したところ、相続人は依頼者Aの他に弟のB、そしてXの元妻Wとの間の子Zがいました。

A、BはZの存在について一応知ってはいたものの、一度も会ったことがなく、どこに住んでいるのかも知らないとのことでした。

AとBは、Xの老後の面倒を見てきたのは自分たちであり、全く会ったこともないZが相続人だとは思っておらず、Xの遺産相続について無関係だと考えていました。

法律上は、A、BだけでなくZも相続人となるので、遺言書がない場合3人で話し合いをして遺産をどのように分けるのか決めなければなりません。

遺言の内容

 

AがXの遺言書を見つけたというので、その遺言書を見せて貰いました。

Xは、Zも自分の相続人になる権利があることを知っており、自分の死後、A、B、Zが相続で争う可能性があることを見越していたのか、遺言(自筆証書遺言)を書き残していました。

遺言の内容は、不動産や現金など、相続人への財産の分け方を書いているのみで、付言事項は書かれていません。
また、遺言書は便せんに書かれている簡素なもので、封筒などに入っているものではありませんでした。

そして、その肝心の遺言の内容を読み解こうとしたものの、遺言書を書き残したXがあまりにも達筆で、続け字で書き綴っていたため、「誰に何をどのように相続させるのか」という最も重要な部分が解読不能だったのです。

もし遺言書に書かれた内容が分からないということになると、その遺言内容は無効となってしまい、相続人全員で話し合いをしなければなりません。

そこで、遺言書の検認手続をする家庭裁判所に事情を説明し、遺言書の内容について照会を求めました。

裁判所の判断

 

照会をしてから10日ほど経った頃、裁判所から連絡が入りました。

結論としては、「裁判所でも遺言書の内容を読み解くことは出来ないので、遺言書の内容を実現することは出来ないだろう」という判断でした。

つまり、Xが書き残した遺言の内容は無効となり、AとBはあらためてZと遺産分割について話し合わなければいけなくなったのです。

遺産分割協議の難航

 

Zの住所地については戸籍附票を取り寄せることで判明していたので、Aから連絡を取ってもらいましたが、案の定話し合いは難航しました。

AによるとZは「自分や母WはXに捨てられ、相当な苦労をしてきた。Xに生前迷惑を掛けられたのだし、遺産を相続する権利は当然ある」と主張してきたようです。

A、B、Zそれぞれが互いに思うところがあるため話し合いが一向に進まず、結局家庭裁判所での遺産分割調停を申し立てることになりました。

遺産分割調停の結果、実家に関してはAが相続することができましたが、代償としてAからすると今までまったく面識もなかった、いわば見ず知らずのZに対し相続分相当の金銭を支払うことで合意となりました。

まとめ

 

今回のケースの問題点は、遺言書を書き残したXの字が判読不可能であったため、遺言書が事実上無効となってしまった点です。

XはA、Bの他にZが相続人になることまでは分かっており、紛争にならないように遺言書を残したのだと思います。

しかし、理由は分かりませんが公正証書ではなく自筆証書での遺言書を選択し、その書き方に不備があったため、せっかく書き残した遺言書が何の意味もなさなくなってしまったのです。

このように、自筆証書で残している場合、せっかく遺言書を書き残しても内容や形式に不備があると無効になってしまうおそれがあります。

相続人たちが争わないよう、最期の思いを書き残す大切な遺言書は、専門家に依頼してちゃんと公正証書として残すことが大切だと思います。

※もちろん、公正証書で遺言書を作成していたとしても、その内容について疑義が生じたり、相続人の間で不平不満が生じたり・・・という問題は起こりえます。

しかしそれはあくまで遺言書の内容が分かった上での話であり、内容が判読できないというのは誰にとってもプラスになりません。

事実、遺言書の内容を解明するまでに多くの時間と費用を費やしてしまいました。

遺言を作成することはとても大切です。

そんな大切な遺言が原因でモメるなんて悲しいことにならないように、できるだけ公正証書で作成して少しでもリスクを減らすようにしましましょう。