民法改正 ポイントは?生活はどう変わる?

※この情報は平成29年5月26日時点のものです※

こんにちは、司法書士の上塩入です。

先ほど朝日新聞デジタルのニュースで、
改正民法が参院本会議で可決成立したというニュースがありました。

民法は暮らしの中のいろんな行為を法律行為として規定しているため、今回の改正で敷金や利率、時効など直接関わるものも多くあります。

どこがどう変わり、暮らしにどう影響するのかを解説したいと思います。

民法(債権法)の改正

※この情報は平成29年5月26日時点のものです※

民法(債権法)の改正は約120年間もの間改正されておらず、現代社会に適していないものや、慣習化されつつも明文化されていないものがありました。

今回の改正は、条文を修正、あるいは新設することで現代社会に適した規定にし、契約や取引をより安全・確実に行えるようにするという趣旨です。

債権法はその名のとおり、人々の暮らしの中で債権債務にかかわる行為(契約など)について規定している分野で、とても重要な分野です。

今回の改正の中から特に多くの方に関係がありそうなものを順にご紹介していきたいと思います。

 

民法改正で主に変わること

①消滅時効を5年間に統一
②法定利率を5%から3%変動制に
③連帯保証人への公証人による意思確認の義務付け
④売主の瑕疵担保責任を拡充
⑤「約款」の明文化
⑥敷金返還について明文化
⑦賃貸借の原状回復義務について明文化

今回の民法改正で変わるのは上のような点です。
順番に説明していきます。

 

①消滅時効の統一:5年間に統一

これまで消滅時効はその内容によってバラバラでした。
(※消滅時効とは一定期間請求しないと権利が消えてしまうこと)

例えば飲み屋のツケなら1年間、バイト代も1年間、弁護士への報酬は2年間、医者への支払いは3年間といったように、どのような内容かによって時効までの期間が変わり、分かりにくいものでした。

それが今回の改正により「債権を行使できることを知ってから5年」に統一されることになります。

②法定利率を5%から3%変動制に

お金の貸し借りなどのときに、当事者で利息を何%にするかを決めていたり、無利息と決めていたりしないときは、法定利率が適用されることになります。

現行法では、その法定利率は5%とされていますが、今回の改正により3%になりました。

銀行への預金も利率なんて0.001%とかの時代ですから、
5%(ちょっと前までの消費税)がいかに現代にそぐわないか分かると思います。

③連帯保証人への公証人による意思確認の義務付け

「連帯保証人になったら債務者が逃げて自分が借金を背負うことになった」

なんて話はよく耳にしたことがあるかと思います。

貧乏芸人や芸能人が昔話で「父親が連帯保証人で借金を背負い家庭崩壊・・・」と話しているのもよくTVなどで見ますし、今でこそ連帯保証人にはなっちゃいけないという認識は当たり前になっていますが、昔はそれで自殺したり生活が破綻してしまう人もかなりいました。

そういうこともあり、連帯保証人の問題は昔から議論され続け、今回の法改正でも連帯保証人になる場合の意思確認をより厳格にする規定が設けられました。

連帯保証契約を結ぶ場合は書面によることが義務付けられていますが、改正後は連帯保証人に対して公証人が意思確認をする必要があります。

保証人が連帯保証契約を締結することの意思をしっかり確認することで、脅迫されて無理矢理保証人にさせられるなどの問題をクリアすることができます。

④売主の瑕疵担保責任を拡充

現行法では、買った物に何かしらの欠陥があったときに、売主に対して請求できるのは、契約の解除か損害賠償の請求だけでしたが、新たに修理や交換の費用負担を求めることが出来るようになります。

契約を一からやり直したりせずに済み、より円滑な取引が可能になります。

⑤「約款」の明文化

インターネットでの取引や保険などでよく見かける約款について、消費者や契約者が知らず知らずの内に不利な内容で契約したりしないように、規定が置かれることになりました。

後で説明する敷金や原状回復義務もそうですが、消費者保護の意識が高くなり、情報格差や契約上の力関係の均衡を図る規定が置かれるのはとても良いことだと思います。

⑥敷金返還について明文化
⑦賃貸借の原状回復義務について明文化

この敷金返還と原状回復義務の明文化が、おそらく多くの人にとって一番ありがたい規定だと思います。

今までは家を借りる時に渡す敷金は、全額返ってこないのがほとんどだったと思います。

でも、実は敷金は全額返ってくるのが当たり前だと知っていましたか?

敷金というのは、そもそも「家賃などが未払いになったときの保険」として賃貸人が預かるものであるので、家賃その他の支払いが未払いでないときは、賃貸借契約が終了して家を明け渡したときに全額請求できるんです。

「家のフローリングに傷があるから修繕費用で引かれる」

「時計を飾るために壁に少し穴を開けたから修繕費用で引かれる」

とか何とか理由を付けて賃貸人が敷金を返さなかったことはありませんか?

実はこれも間違いなのです。

上のような、日常で人が生活していく中で自然についてしまう傷や損傷、劣化などは「通常損耗」と呼ばれ、家を貸し借りする時には当然に予想、予定されているべきものなのです。

そして「当然に予定されている通常損耗による修繕費用などは本来賃料に含まれているのだから、敷金から通常損耗にかかる修繕費用を差し引くことはできない」

というのが最高裁判所の判断によって明らかにされています。
(最高裁平成17年12月16日判決)

しかし、普通の人はこの最高裁判決など知らないので、敷金は礼金と同じように返ってこなくて当たり前という認識のまま、損をしていました。

今回の法改正で、これ以上賃借人が不利益を被らないように、この最高裁判決を明文化することで、消費者保護を手厚くし敷金トラブルを防ごうという狙いです。

 

つまり、賃貸借契約が終了すれば、普通に住んでいたら発生する傷や劣化は賃借人が修繕せずにそのまま明渡し、敷金は全額返して貰うのが原則

となります。

 

ただし、

①通常使用することによる損耗の程度を越えている場合
②賃借人が補修費用を負担することになる通常損耗の範囲が賃貸借契約書の条項内に具体的に明記されている場合
③賃貸人が通常損耗の補修について口頭で説明し、賃借人がその旨を明確に認識し、かつそれを合意の内容としてものと認められるなど、通常損耗を賃借人が補修する特約が明確に合意されている場合

は、賃借人が通常損耗の補修義務を負うことになります。

 

まとめ

今回の民法改正は約3年間の周知期間を経て2020年頃施行される予定になっています。

これからTVや雑誌などで徐々に取り上げられていくと思いますが、今回の敷金のように消費者にとって知っていたらおトクな法律もたくさんありますし、知らないと損する法律もあります。

今まで法律や制度に無関心だった方は、目にする機会があれば一度だけでも関心をもって触れてみてください♪