相続法改正案のポイント~民法改正~

相続法改正案の主なポイント

民法の中でも相続の規定は、高齢社会における日本では特に重要な法律なのですが、ここ30年以上目立った改正はなされてきませんでした。

そのため、どうしても現代社会には馴染まない規定や、法律的な解釈に疑義が生じる条文もあり、実際の相続手続でも相続人や特定の方にとって不都合な場面が多々ありました。

そこで、大きく改正されることになった債権法に続き、民法の相続規定、いわゆる相続法の改正も検討されています。

まだ正式に改正は決まっていませんが、今回は相続法改正が検討されている中でも特に重要な条文についてポイントを解説したいと思います。

 

 

自筆証書遺言の方式見直し

現行法の自筆証書遺言書は、主に3つの問題点があり、専門家の立場からあまりオススメできるものではありませんでした。

改正案ではその3つの問題点を改善し、少しでも遺言書を作成しやすくしようと検討されています。順番に説明します。

(1)自筆証書遺言書の要式

<現行法>

まず1つめに、現行法の自筆証書遺言書は要式が厳しく(全文と日付を自署して押印する)決められており、その要式を満たしていなければどんな遺言書も無効、つまり紙くずになってしまう大変厳しいものです。

相続の実務でも、自筆証書遺言書の要式を満たしていないがために無効になってしまい、遺言者の最期の気持ちが実現できないケースがたくさんあります。

<改正案>

要式を緩和し、財産目録についてはパソコンで作成することを認める。

現行法だと財産目録の部分も自署なので、書いてある内容が読み取れないor間違いのために遺言書が無効になることがありましたが、そのリスクは減ります。

また、相続財産が多い場合はパソコンで作成できればかなり楽な作業になります。

しかしその他の本文については現行と変わらず自署しないといけないので、あまり嬉しい改正とはいえないかもしれません。

 

(2)公的機関での保管制度

<現行法>

自筆証書遺言は公正証書遺言と違い公証役場など第三者が保管してくれないので、紛失や改ざんのリスクもあります。

<改正案>

法務局で自筆証書遺言書を保管することが可能になる。

法務局で自筆証書遺言書を保管し、保管の申請時に要式に不備がないかをチェックしてくれるようになります。また、相続人は法務局に遺言書の有無について検索することができるようになります。

これにより遺言者、他の相続人による紛失や改ざんのリスクはなくなります。(法務局が紛失する可能性もゼロではありませんが)

 

(3)裁判所での検認が不要

<現行法>

自筆証書遺言書は遺言者が死亡したあと相続人全員立会のもと家庭裁判所で検認という手続をしないといけないため、遠方で暮らす相続人にとって大きな負担となるだけでなく、検認費用や交通費もかかります。

<改正案>

検認手続を不要とする。

法務局での保管申請時に要式をチェックしてもらうので、真正が担保され、死亡後の検認手続がなくなります。相続発生後の遺産承継手続がとてもスムーズになるだけでなく、相続人の精神的・時間的・費用的負担も大幅に減ります。

 

 

配偶者の居住権

<現行法>

配偶者が住んでいようといまいと相続財産には変わりがないため、税金の支払いや他の相続人との遺産分割の過程で売却して手放さないといけなくなることがある。

<改正案>

所有権とは別に配偶者に「居住する権利」与え、たとえ所有権が第三者にわたっても無償で住み続けられるようにする。

さらに、婚姻期間20年以上の夫婦が自宅を贈与や遺言で渡した場合は、遺産分割の対象から外れて、その人固有の財産になる。

この改正案により居住権がある配偶者は、自宅以外の財産がなく、自宅を手放すことになっても無償で住み続けることができるようになり、婚姻期間が長い夫婦は住居を手放さずに済むだけではなく、その他の相続財産の取り分も増えるので、生活の安定に繋げることができるようになります。

 

 

寄与分の見直し

<現行法>

亡くなった方の生前に特別な寄与(療養看護や財産、労働の提供)をした人には多めに財産をあげましょう、という寄与分の規定があるのですが、どこまでの寄与ならいくらぐらい財産をもらえるのかなど曖昧な点が多く、実務上ではほとんど認められることがありません。

たとえば、3人兄弟ABCのうちAだけが親の面倒をずっと看てきたとしても、子供が親の介護をするのは当然だとして寄与分が認められません。

また、配偶者の親の看護をしている人も多いと思いますが、現行法では寄与分は相続人にしか認められないため、例えば嫁がどれだけ姑の世話をしても寄与分は認められません。

 

<改正案>

相続人の間で療養看護に顕著な差がある場合は、その貢献部分を金銭で請求できるようになります。

さらに、相続人じゃない2親等以内の親族(先ほどの嫁など)は、寄与分に応じて相続人に金銭を請求できるようになります。

 

 

預貯金の扱い

<現行法>

現行法では、預貯金は相続が起きれば相続人全員の相続分に応じて自動的に分割相続され、相続人がそれぞれ勝手に使用することが可能という解釈なのですが、遺産分割や遺言の有無の確認、相続トラブルに巻き込まれたくないという理由から銀行が預金を凍結して事実上勝手に引き落とせないようにしています。

<改正案>

仮払制度を新設し、遺産分割などが終わっていなくても、儀費用や残債務の支払いのためにすぐに引き落とせるようになります。

 

 

遺留分の見直し

遺留分は現行法でも改正案でも特に複雑で説明の難しい制度ですので大まかに説明します。

<現行法>

遺言書などで相続する財産が特定されていても、兄弟姉妹を除く相続人に認められている最低取り分(遺留分)の権利を他の相続人に行使されてしまうと、すべての財産が一時的に共有の状態になってしまうため、株や預貯金の相続手続が滞る。

<改正案>

実務上では金銭解決がほとんどであることを考慮し、すべての財産を共有にするのではなく、遺留分相当分の対価を請求できる権利とし、実際にどう解決するかは協議のうえ定めるようにする。

 

 

まとめ

上記以外にも、相続登記を義務化する案や、相続割合を変更する案などが検討されています。

民法などの国民生活に直結する法律の中には、高齢化が進み、デジタル化が進んでいる現代には馴染まないものも少なからず存在します。

その中でも相続はどんな方であってもかならず直面する、とても大切な問題ですので、これからも動向に注視し、新しい情報が入れば随時お知らせしていきたいと思います。