司法書士と行政書士は、その名前からよく間違われたり混同される方が多い業種です。 業務内容も多少共通しているところもありますが、社会の中で与えられている役割は大きく異なりますので司法書士と行政書士の共通点と違いを、①業務内容、よく重なる業務での比較として②相続、③会社設立に分けて説明します。
1.司法書士・行政書士とは?
司法書士 | 行政書士 | |
資格 | 法律系の国家資格 | 法律系の国家資格 |
合格難度 | 約2~3% | 約20% |
主な業務 | 不動産登記、商業登記、裁判所類作成 | 行政への書類提出、許認可申請、帰化申請 |
書類提出先 | 法務局、裁判所 | 官公庁、役所 |
上が司法書士と行政書士についての簡単な説明ですが、特にみていただきたいのは「主な業務」の欄です。
司法書士は不動産登記や商業登記、裁判など第三者との権利関係を明らかにすることを主な業務としているのに対し、
行政書士は、自動車販売や風営法、建設業などを始めとする事業を行うための許認可の申請や外国人へのビザ申請など、行政に対する許可・登録・申請を主な業務としています。
2.司法書士と行政書士の違い~相続~
相続の手続き | 司法書士 | 行政書士 |
遺言証書の作成 | ○ | ○ |
相続人の調査・戸籍集め | ○ | ○ |
遺産分割協議書の作成 | ○ | ○ |
不動産の名義変更 | ◎ (独占業務) |
× |
相続放棄の手続き | ○ | × |
家庭裁判所へ調停・審判申立て | ○ | × |
相続税の申告 | × (税理士のみ) |
× (税理士のみ) |
司法書士と行政書士の違いを説明する時「相続が起きたとき、どちらに相談すれば良いの?」という質問をよくされます。
上の表は相続の手続きで、司法書士と行政書士ができることの比較ですが、最も大きな違いはやはり「不動産の名義変更(相続登記)」です。
亡くなった方がマンションや一軒家などのマイホームをお持ちの場合、その名義を変更する手続きが必ずいりますが、不動産の名義変更(相続登記)の手続きは司法書士にしか出来ません。行政書士はもちろんのこと、税理士も出来ません。
たまに、遺産分割協議書の作成までは行政書士に依頼し、不動産の名義変更だけは司法書士に依頼する方がいますが、はっきり言って二度手間ですし、専門家それぞれに費用を支払うので一括で依頼するよりも割高になります。 また、遺産分割協議書はきちんとした形式で作成し、銀行や法務局に通用するものでなければ意味がありません。しかし法務局に通用する遺産分割協議書の作成に慣れているのは司法書士だけですので、行政書士が作成した遺産分割協議書が使い物にならず、もう一度相続人の方々に署名と押印をいただかないといけないことが多々あります。 時間と費用を考えても、相続財産に不動産がある場合は初めから司法書士に依頼した方がオトクです。
3.司法書士と行政書士の違い~会社設立~
会社設立の手続き | 司法書士 | 行政書士 |
定款の作成 | ○ | ○ |
公証役場での認証 | ○ | ○ |
会社設立登記 | ◎ (独占業務) |
× |
会社を設立するときには、必ず会社の設立登記申請をすることになります。そして、会社の設立登記を申請できるのは司法書士のみです。
よく、行政書士が運営している「~支援センター」というサイトがあります。そこの費用が一般的な会社設立の相場と比較してかなり安いことがありますが、行政書士は定款の作成と認証ぐらいしかしないので安くて当たり前です。
会社設立に必要な書類や他の書類は、依頼者に作成させるか提携司法書士への外注になります。
時間と費用を考えても、会社設立をお考えであれば間違いなく司法書士に依頼した方がオトクです。
4.行政書士にしか出来ないことは?
相続や会社設立での手続きは、その費用と時間を考えても、まず司法書士に相談した方が依頼者にとってメリットが大きいことはお分かりいただけたと思います。
しかし、司法書士が出来ず、行政書士にしか出来ない業務もありますので、説明したいと思います。
(1)許認可の申請:建設業許可、飲食業許可など
(2)外国人のビザ:在留資格、再入国許可など
設立する会社が上のように許認可を要するものであるときは、行政書士にその申請を依頼することが多いと思います。それ以外の許認可を要しない場合の会社設立は、司法書士を最初の相談窓口にされることをオススメします。
5.まとめ
ここまで司法書士と行政書士の違いについて説明しましたが、司法書士と行政書士はどちらも国家資格であり、国から与えられた役割・使命が違います。
その資格に優劣はありませんが、本来は業務を行えないはずの行政書士があたかも何でもできるように偽っているサイトを最近よく見かけます。(「~支援センター」や「~まるごとサポートセンター」など)
全てのサイトがそうではありませんが、相談者や依頼者が情報弱者であるのを良いことに、誤解を招くような表現で誘導し、相談者にとって真に頼るべき専門家から遠ざけるようなサイトもあり、同じ専門家として恥ずかしく思います。
守られるべきは相談者の利益であり、専門家の利益ではありません。これから相談しようと考えている方は、騙されないようにくれぐれも気をつけてください。