遺言のメリット・デメリットは?

遺言を書くか悩んでいる方をよく見ます。
また、「私は遺言を残した方が良いんですか?」とよくご質問をいただきます。

専門的な立場から申しますと、遺言は絶対に残した方が良いと言えます。

遺言を書き残すことのメリットが大きいからというのもありますが、それ以上に「遺言がないこと」のデメリットが大きいことが理由にあります。
上手に利用することで、費用や時間の面でオトクになる遺言書のメリットやデメリットについて説明します。


1.遺言を残すメリット

遺言を書くというのは、実に様々なメリットがあります。その中でも主なメリットとして、次のものが挙げられます。

(1)相続人への財産の分配方法を決められる
(2)相続人全員が集まって協議する必要がなくなるため、紛争の可能性が非常に低くなる
(3)相続人への財産の分配方法が決まっているため、相続人が納得しやすく、紛争の可能性が非常に低くなる
(4)誰が財産を相続するかが明確になるため、不動産の名義変更や銀行の手続がスムーズになる
(5)誰が財産を相続するかが明確になるため、戸籍などの集める書類が減り、費用が少なく済む
(6)内縁者や孫など、本来は相続人でない人への財産の分配が可能になる


遺言は一度作成したらそれで確定するわけではありません。後から考えが変われば内容を追加・変更・撤回することが可能です。
遺言を残すのが面倒だとおっしゃる方も多いですが、ご自身の没後、相続人たちにかかる費用や時間を先に負担することで、相続人の負担はかなり軽くなります。

遺言は愛する家族への最期のラブレターです。そのラブレターで相続人の紛争はなくなり、費用と時間の負担も軽くなるのです。


2.遺言を残すデメリット

続いて遺言を書くことによるデメリットを挙げていきます。考えられるデメリットとしては、以下のものがあります。

(1)公正証書遺言の場合作成の段階で費用がかかる
(2)先に作成した遺言書を公正証書遺言で追加・変更・撤回すると費用がかかる
(3)内縁者や孫など、本来は相続人でない人への遺言を書くと、相続人とその内縁者等で紛争になるおそれがある


以上のことが挙げられますが、(1)や(2)の費用に関しては、遺言を残さないことで相続人が集まって協議したり、余分な書類を集めたりすることで同じかそれ以上に費用がかかるので、 相続人に迷惑や面倒をかけたくないと考えるなら確実に遺言を残している方が良いと考えられます。

また(3)に関しても、内縁者や孫に全額でななく相続人にもある程度遺産を分配したり、付言事項として相続人へ一言添えておくことで紛争の可能性を少なくすることもできます。
それに、内縁者や相続人でない人に財産をあげようと考える人は、そもそも本来の相続人たちとは疎遠になっている可能性があるので、 遺言を書かなければ相続人たちへ渡ってしまう財産を、本当にあげたい人に渡せる手段として考えると、デメリットとは一概に言えないかもしれません。


3.遺言を残さないデメリット

2とは少し見方を変えて、遺言を残さないことによるデメリットを考えてみます。1.遺言を残すメリットの反対解釈ともいえますが、

(1)遺言者の希望通りに相続人への財産の分配方法を決められない
(2)相続人全員が集まって協議する必要があり、協議がまとまらない可能性が高くなる
(3)相続人への財産の分配方法が決まっていないため、相続人の私利私欲が入り交じり、紛争の可能性が高くなる
(4)遺産分割協議がまとまるまで誰が財産を相続するかが不明確なため、不動産の名義変更や銀行の手続に時間と費用がかかる
(5)誰が財産を相続するかが不明確なため、戸籍などの集める書類が増え、全体的に費用が高くなる
(6)内縁者や孫など、本来は相続人でない人への財産の分配ができない
(7)相続人が多い場合、遺産分割の間に二次相続が起き始めて、相続できないおそれがある
(8)相続人の中に未成年者や判断能力の不十分な者がいると、手続に時間と費用がかかる


以上のようなことが挙げられます。
(8)のように相続人の中に未成年者や判断能力の不十分な者がいると、その者のために代理で遺産分割協議をする特別代理人を裁判所によって選任してもらう必要があり、余分な時間とお金がかかってしまいます。


4.まとめ

簡単に見比べてみても、遺言書があるのとないのとでは大きく違うことが分かるかと思います。 遺言書は書くメリットが大きく、かつ書かないことのデメリットが大きいのです。

遺言書はその都度変更や撤回もできるので、相続人たちが自分の死後も互いに笑顔で暮らしていけるように、遺言書は書くことをおすすめします。