遺言書がないとき、原則は相続人全員が話し合いをして「誰が、何を、どのように」相続するかを決めることになります。
しかし、例えば相続人の仲が悪かったり、お互いの主張や感情にほんの少しのすれ違いがあって、話し合いが上手くまとまらないこともあります。
そんなときどうすれば良いのか、また、どういう手段があるのかを簡単にご紹介していきたいと思います。
1.法定相続分で受け取る
相続したとき、原則は相続人それぞれが各相続分の割合で相続する権利をもっています。現金や預貯金はもちろん、不動産もそれぞれの持分で共同相続することは可能です。
ただし、不動産を相続人全員の共有名義に変更したとき、その不動産を売るときや担保に入れるときに相続人全員が手続に関与しないといけないため、非常に面倒になります。
さらに、相続人のうち誰かが死亡したとき、その人について相続の登記(相続人への名義変更)をしないといけないため、費用や時間が余計にかかるおそれがあります。
金銭の分け方について詳細は決まっていないが、不動産を手放すことは確実であるなどの場合は、相続人全員の名義にして不動産は売却し、金銭に換えたうえで話し合う方が得策かと思います。
2.第三者に仲裁してもらう
客観的に判断できる有識者に仲裁してもらい、話を進めていくという方法です。相続人たちでは感情的になる話も、第三者がいることで冷静に話し合いができることがあります。
ただし身内や親戚が仲裁人だと、相続という家庭内の複雑な事情をさらけ出してしまうため身内には話しづらかったり、相続人の一方に肩入れして余計に話が複雑になる場合もあります。
また、弁護士のような専門家に依頼すると費用がかかる点、弁護士を代理人に立てることで相手が身構えてしまい、態度や関係が悪くなってしまう可能性もあります。
うまく仲を取り持つ人を見つけることが出来れば、話し合いが前進するかもしれません。
3.冷却期間をおく
相続人それぞれがあと少し譲歩すれば話し合いがまとまるのに、感情的になってしまうあまりに協議がまとまらない、という場合には思い切って話し合いをやめて、時間をおくという方法もあります。
お互いに冷静になる時間を設けることで、まとまらなかった話がすんなり進むこともあります。新しい解決策が見つかる可能性もあります。
ただし、冷却期間が長いとそのまま疎遠になり再度話し合う機会がなくなったり、こちらは時間を置くつもりが、相手方がしびれを切らして遺産分割調停を申し立てるおそれもあります。
さらに、相続人がご高齢の場合、時間をかけるとさらなる相続が起き、相続が余計に複雑になる危険性もあります。
4.遺産分割調停を申し立てる
どうしても話し合いができない場合の最後の手段として、遺産分割調停があります。
物理的な距離の問題、感情的な問題、相続人が多すぎるなどの問題が原因で遺産分割調停の申し立てを利用するケースは増えています。
遺産分割の調停を申し立てると、相続人たちは調停委員と一緒に遺産分割について話し合いをすることになります。
ただし、調停はあくまで「裁判所での話し合い」ですので、相続人の1人に何かを命じたり、財産の分け方について強制力のある発言をする訳ではありません。
相続人が主体となって裁判所で話し合う機会だと考えてください。
無事調停がまとまれば調停調書が作成され、遺産分割協議書と同様に相続人全員が同意した法的に有効な書面となります。
一方、調停でも話し合いがまとまらないとき、遺産分割審判に自動的に移行し、裁判所が強制力のある審判(いわゆる判決のようなもの)を下すことになります。