ご相談内容
ご相談者は亡くなられた方のお孫様です。
ご自身の祖父が亡くなり、田舎に誰も使用していない山林が1筆だけあるが相続登記をしてこなかったため、令和6年4月からの相続登記義務化に伴い、相続登記をしたいとのご相談で来所されました。
相続人はご相談者の親ですが、高齢で主体的に動くことが難しく、そのお子様が親世代で相続問題を片づけてほしいという願いからご相談に来られたそうです。
相続人同士の関係性が薄いため、まずは他の相続人が何名いてどこに住み、どのようなご状況なのかを知りたいとのことでした。
当事務所の解決方法
相続人調査
ご依頼に基づいてまずは相続人調査を行いました。
遺言書がない相続登記の場合、亡くなられた方の相続人を確定させるために、亡くなられた方の出生から死亡までのすべての戸籍、相続人の戸籍、相続人が死亡している場合はさらにその相続人の戸籍までを追いかける必要があります。
当事務所がまずは相続人の数、現在のご住所を確定させるために戸籍収集を行いました。
相続人への連絡
相続人調査が無事に完了し、現在の法定相続人は5名であることが判明しました。
次に、長年連絡を取っていない相続人の方々にいきなり相続の手続書類を送付すると混乱される可能性があるため、相続人の方々に事情を説明すべく書類を送付することにしました。
亡くなられた祖父名義の不動産があること、相続登記義務化により放置することができないこと、手続きをするには相続人の協力、つまり遺産分割協議書への署名押印と印鑑証明書の提出がいることを、相続人の関係図や不動産登記事項証明書などを添えて説明しました。
相続人の1名が宛所尋ねあたらずで返却
5名の相続人のうち、4名からは無事に遺産分割協議書と印鑑証明書が戻ってきましたが、残る1名に送付した書類は「宛てどころ尋ねあたらず」で返送されてきました。
「宛てどころ尋ね当たらず」とは、こちらが記載した住所に該当する人物が居住していないために返送されたことを意味します。
考えられる可能性として、相続人が住民票を移さずに住む場所を変えている、送付先の住所を書き間違えた、タイミングが悪く相続人調査~書類の郵送までの間に住所を移してしまったなどがあります。
そこで、再度相続人の住民票を取り直したところ、住民票の住所は移していませんでした。
事情を知っていそうな相続人に、手紙をお送りし、何度か無視されていたものの、粘り強く調査を続けた結果、最後の相続人が在監中(刑事事件により刑務所に服役中)であることが判明したのです。
在監者が相続人であるときの遺産分割協議
通常、遺産分割協議書は、相続人本人が遺産分割協議に署名または記名し、役所に登録されている印鑑(実印)で押印し、印鑑証明書を添付することが求められます。
印鑑登録がないためにそもそも印鑑証明書を発行することができない海外居住者は、実印の代わりにサインし、印鑑証明書の代わりにサインしたことを領事館等で証明してもらう署名証明書(サイン証明書)を添付することで対応しますが、在監者は印鑑登録があるものの、物理的に実印での押印と印鑑証明書の添付をすることができません。
かと言って、刑期を終えるまで遺産分割協議を待つわけにもいきませんし、待ったところで遺産分割協議が成立する保証もありません。
そんなとき、在監者の遺産分割協議に関する通達が役に立ちます。
「刑務所在監者(刑務所に服役中の者)が登記義務者として印鑑証明書を提出できない場合には、本人の拇印である旨を刑務所長又は刑務支所長が奥書証明した委任状を添付すべきである。」
(昭和39年2月27日民事甲第423号)
かなり古い通達ではありますが、法務局に確認を行ったところ、上記の通達で対応して構わないとの返答があり、服役中の相続人に拇印をしてもらい、さらにその拇印をした遺産分割協議書に刑務所長の奥書証明を添付してもらうことで、無事に相続登記を進めることができました。
相続登記義務化により期限が決まっている中で、見ず知らずの相続人が刑務所に服役中と聞いたとき、ご相談者様は頭の中が真っ白になったそうです。
しかしながら、相続手続の専門家である司法書士にお任せいただいていたことで、ご自身だけであれば諦めていたかもしれない手続きを、無事に進めることができ、長年悩みの種であった祖父名義の土地に決着をつけることができたと、親御様とともに大変喜んでいらっしゃいました。
当事務所では、相続人に行方不明者がいる、刑務所に服役中の相続人がいる、外国に居住している方がいる、亡くなられた方が北朝鮮の方であるなど、難度の高い特殊な相続手続きを数多く解決してきました。
相続手続きでお困りの際は是非当事務所にご相談ください。
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