「公証役場」をご存じでしょうか?
公証役場とは、法務大臣から認定を受けた「公証人」と呼ばれる専門家が、重要な契約書、私文書、遺言書、法人設立時の定款など、様々な場面で書面の真実性を担保するために認証を行ったり、公的文書を作成する公的機関です。
公証役場では、対面での書面作成が原則とされているものが数多くありましたが、令和7(2025)年10月から、公証役場における作成手続がデジタルで行える制度が始まりました。
デジタル公証制度の概要と、本記事執筆(令和8年2月)時点での実務上の取り扱いについて解説します。
公正証書作成手続きデジタル化制度の概要
2025年(令和7年)に施行された「情報通信技術の活用等の進展に伴う事務の簡素化及び効率化を図るための公証法等の一部を改正する法律」により、これまで対面が原則だった日本の公証制度は大きな転換期を迎えました。
2026年現在、不動産取引、遺言、契約事務においてオンライン公正証書の活用が本格化しています。
1.公証役場を利用する場面とは?
そもそも、公証役場という機関を知らない方も多いかと思います。
公証役場とは、法人設立時の定款、公正遺言書作成など、法律上の要請に基づき公証人による認証等を受け公的文書を作成する公的機関です。
公証役場は日本全国に存在し、兵庫県下には神戸市中央区の神戸公証センターをはじめとする10か所に公証役場があります。
公証役場には「公証人」と呼ばれる法律の専門家がおり、公証人が公正証書遺言書を作成したり、法人設立時の定款認証、離婚協議書を公正証書にするなどの業務を行います。
2.従来の公証制度とその問題点
改正前の公証制度は、対面による作成(公証)が原則でした。
そのため、ほとんどの場合で当時者が公証役場に行かなければならず、大きな負担となっていました。
特に遺言書作成時には、ご高齢の方が公証役場まで行かなければならず、大きな負担となっていました。
公正証書遺言書作成時には公証人が高齢者のいる自宅・施設・病院に赴いて作成することも可能ではありますが、手数料が高くなること、万が一大きな変更や修正が必要となったときに対応できないなどの懸念点がありました。
3.デジタル公証制度の法的根拠
以上の問題点を解決し、なるべく多くの方に手軽に利用しやすい制度とするべく、デジタル公正証書制度が始まりました。
デジタル公証制度は、公証役場へ足を運ぶことなく、嘱託人(申請者)が自宅やオフィスからビデオ通話等を通じて公正証書を作成できる制度です。
- 根拠法: 改正公証法(特に第62条の3以降の電磁的記録による公正証書の作成に関する規定)
- 改正の目的:国民の利便性の向上(遠隔地や身体的不自由がある者の支援)
- 契約実務の迅速化
- デジタル社会における証拠力の確保
これまで、定款の認証など一部の手続きでは先行して電子化が進んでいましたが、今回の改正により「公正証書の作成」そのものが全面的にデジタル環境で完結可能となりました。
オンラインでの作成が可能となった主な手続
原則として、従来の紙の公正証書で作成可能であったものの多くが対象となります。
オンラインでの公正証書作成が可能となった主なもの
- 公正証書遺言書
- 任意後見契約
- 離婚公正証書
- 金銭消費貸借契約書
- 贈与契約書
- 保証意思宣明公正証書
オンラインでの手続が可能になったものとして、「嘱託」と「リモート方式によるオンライン手続」があります。
デジタル公証制度利用手続きの要件と流れ
デジタル公証制度のうち、リモート方式による公正証書等の利用要件は次のとおりです。
(1)嘱託人、または代理人によるリモート方式利用の申し出があること
(2)嘱託人・代理人のリモート参加について、他の嘱託人に異議がないこと
(3)公証人が嘱託人・代理人のリモート参加を相当と認めること
このうち、(3)にある相当か否かは、リモート参加の必要性・許容性(リモートでの本人確認、真意の確認、判断能力の確認のしやすさ等)を総合的に考慮して判断されます。
続いて、リモート方式による公正証書等の作成は次の流れで行います。
(1)必要な機器を用意する
(2)公証人から送られるウェブ会議招待メールからウェブ会議に参加
(3)公証人による音声・映像の確認、本人確認・意思確認
(4)公正証書文案を画面上に表示したうえで、公証人が公正証書案を読み上げ、列席者が内容を確認
(5)公証人が列席者に対し、公正証書案文を記録したPDFファイルへの電子署名をメールで依頼
(6)メールを受信した列席者の全員が電子署名し送信
(7)公証人が電子署名・電子サインを行い、公正証書が完成
デジタル公正証書制度のメリット
デジタル公正証書制度のメリットは、次のとおりです。
(1)原本紛失等のおそれがない
従来の公正証書は嘱託人・代理人が紙の書面に直接署名押印しており、それを原本としていたため、公証役場が天災地変等により公正証書原本を消失するリスクがありましたが、改正後は電子署名したデータが原本となるため、紛失のリスクがなく、さらに保管が容易になります。
また、公正証書の正本、謄本もデータで交付を受けることが可能になっているため、原本と同様に書面そのものの紛失リスクや再発行の手間などがなくなります。
(2)非対面で作成可能
先ほども述べましたが、これまでは直接公証役場に赴く必要があった公正証書の作成が、遠隔地(自宅・病院・施設など)からでも環境が整ってさえいれば作成できることになったため、移動の負担がなくなりました。
また、離婚公正証書のように、関係性の悪化した当事者が対面しなければならない心理的な負担を軽減することも可能になりました。
電子公正証書のデメリット・問題点・今後の課題となる点
本記事作成時点では電子公正証書制度が開始してまだ数か月ですが、実務現場レベルではいくつかの問題点も浮き彫りになっています。
(1)書面の内容によっては時間がかかる
これまでの公正証書は、作成する日に当事者が公証役場を訪れ、列席者全員の前で公証人が書面を読み上げ、その後書面(原本)をその場で回して署名する形式が主流でした。
しかし、リモート方式による電子公正証書の場合、各列席者にメールを送り、メールが届いたら署名後送信し、内容を確認しする作業が必要となります。
そのため、契約書の内容やリモート参加者の数によっては、書面で作成するよりもかえって時間がかかるという事態が生じています。
実際に、当事務所がご依頼いただいた任意後見契約、死後事務委任契約、遺言書作成のケースでは、書面作成の場合は20分~30分程度だったところ、リモートによって1時間以上かかったこともあります。
(2)リモートが適さない書面のために公証役場が断る
電子公正証書は、より多くの方に公正証書を利用しやすくするという目的のために導入されました。
一方で、法律上の効果を生じる書面、とりわけ公正証書で作成する書面(金銭消費貸借公正証書、遺言公正証書、離婚公正証書)は、当事者本人が自由な意思に基づいて作成したという、真性が担保されていることが大前提です。
特に、遺言公正証書は、本人が何度も作成する可能性が低く、かつ効力を生じるときには作成者本人が亡くなっており、しかも作成する時点で高齢であることが多い書面です。
そのため、リモート方式による作成を安易に認めてしまうと、画面外から誰かの指示誘導を受けているおそれ、判断能力が低下しているのに気づけないおそれ、手元に台本があって台本通りに話すよう強要されているおそれなど、あらゆるリスクを廃除することができず、後に法的トラブルになる可能性が高くなってしまいます。
真正を担保するための公正証書が、紛争を招く火種となっては本末転倒ですので、各公証人の裁量に委ねられているものの、遺言書作成については依然としてリモート方式を認めない公証人が多いようです。
(3)機器の不備
今では公証役場側はすっかり慣れていますが、嘱託人側や列席者側にシステム障害やネット環境の不備があると、手続きが中断し、その日の作成を断念することもありえます。
公正証書遺言書作成は当事務所にお任せください

法的に有効な遺言書ができる
相続に特化した司法書士であれば、法的に有効な遺言書を作成することができます。
また、公正証書で遺言書を作成しますので、改ざん紛失などのリスクがありません。
二次相続や財産変化に対応した遺言書ができる
遺言書を作成する際は、二次相続が起きた場合や、財産を受け取る相続人が先に死亡している場合を想定して作成することが重要です。
また、遺言書を作成したあとに、不動産を購入する、不動産を処分する、預貯金を解約する、親の不動産を取得するといった財産状況の変化が起こることがありますので、財産状況の変化まで想定して作成すれば、作成し直すことがなくなります。
相続専門の司法書士に相談いただくことで、二次相続や財産状況の変化を考慮した遺言書が作成できます。
遺留分に配慮した遺言書を作成できる
兄弟姉妹を除く法定相続人には遺留分があるため、遺言書の内容によっては遺留分の請求をされることを前提とした相続対策が求められます。
相続に強い司法書士であれば、遺留分を考慮した遺言書の作成や、相続対策を相談することができます。
死亡後の相続手続きも依頼できる
遺言書は作成して終わりではなく、実際に遺言者が死亡して初めて効力が発生し、手続きを進めていくことになります。遺言書に基づいて相続手続きを行う人を遺言執行者と呼びます。
相続の手続きは相続人への連絡、戸籍の取得、金融機関、証券会社、法務局での相続手続きなど、平日に様々な手続きが求められます。
相続に特化した司法書士にご相談いただくことで、遺言書作成段階から遺言執行者も任せることができ、相続が起きた後のスムーズな相続手続きが可能です。
また、不動産の相続登記手続は司法書士が専門家ですので、司法書士を遺言執行者にすることで、弁護士や行政書士を遺言執行者にする場合に比べ、登記手続きを別途依頼する必要がなくなり、その分費用が安くなります。
初回相談無料ご予約はこちらのフォームから。お気軽にご相談ください。







