近年、お一人様や核家族化が一般的になり、ご自身に万が一があったときのことをすぐに共有、相談できる相手が減っている方が多くなっています。
そのような方々のために、「終活」という活動が注目されています。
終活身辺整理は、自身の生活を快適にし、残された親族や親しい方々に負担をかけないための行動で、非常に大切な準備になります。
この記事では、終活の重要性やステップごとの具体的な方法、注意点について詳しく解説します。
終活身辺整理の重要性
終活とは、ご自身に万が一があったときのために、契約、財産状況、ご自身の医療行為に関する希望などを整理していく活動のことを指します。
終活は人生が終わりに近づくための準備で行うため、どうしても後ろ向きなイメージを持つ方がおられるかもしれませんが、それは誤解です。
終活は、遺された家族や親しい方々に負担をかけないよう、人生の終わりについて考える活動ではありますが、自己の人生を振り返り、死後の準備を通じて、残りの人生をより良いものに充実させるための活動の一環でもあります。
終活を行うことで、今と将来の自分にとって必要なもの、ご自身の置かれた状況などを落ち着いて見つめ直し、今後の生活を心身共に豊かにするとともに、病気や怪我などで医療行為が必要になったときのために、自分が自分らしい選択をして他人に理解してもらうことができます。
終活は若年層も意識が高まっている
楽天インサイト株式会社の調査によると、若年層でも終活意識が以前より高まっています。
20代男性の10%が終活を行っており、女性は特に60代で「終活を実施中」が14.9%、「近いうちに始める」が26.7%と高い割合を示しています。
終活における活動としては、「家の中の荷物整理」が48.1%で最も多く、「財産整理」や「データ整理」も重要視されています。特に女性は「荷物整理」や「エンディングノート・遺書の作成」に関心が高いです。
詳細は楽天インサイトの調査レポートをご覧ください。
引用元:終活に関する調査|楽天インサイト株式会社
終活とは具体的に何をすべきか?
上のグラフにあるように、終活といっても行うことは非常に多岐に渡ります。
終活を行ううえで大切なことは、大きく3つのカテゴリに分けることができます。
(1)生活状況や交友関係のこと
1つめは、ご自身の生活や交友関係などについてのことです。
将来的には在宅生活から施設に移ることを検討しているのか、いざというときに連絡してほしい親族や交友関係があるか、習い事や収支の状況、持病や通院歴など、ご自身の今を整理していきましょう。
最近では終活で行うべき準備や整理をまとめた「エンディングノート」がありますので、エンディングノートを活用しながら終活を少しずつ進めていくと良いでしょう。
(2)死後や緊急時の医療行為のこと
2つめは、緊急時の医療行為や死後のことについての希望です。
病気や事故などで意思表示ができなくなったときの手術、延命治療についての考え方など、医療に関する自分の意思を記載しておくことで、自分の意思を外部に発信することができます。
もっと身近な例でいうと、インフルエンザやコロナのワクチン接種を希望するか否かも大切な意思表示です。
最終的に亡くなった場合に、葬儀を執り行うか否か、宗派や喪主のこと、お墓や永代供養のことなど、死後の自分の希望を整理することも大切です。
(3)財産のこと
3つめは、財産に関することです。
財産とは、預貯金、不動産、株式、車、家財道具など、自分の資産をまず整理した上で、自分の死後その財産を誰にどのように承継してほしいかを考えます。
注意したいこととして、財産に関する希望がある場合はエンディングノートに記載するだけでは法的な効力を生じないということです。
財産を相続人にどのように承継してもらうのか、あるいは寄附したい場合など、財産についての考えがある場合は必ず遺言書を作成しましょう。
年代別終活身辺整理のポイント
年代別に終活身辺整理のポイントをそれぞれ見てみましょう。
30代 不慮の事故や病気に備える
30代は、結婚、子どもの誕生、転勤、家の購入など、生活環境が大きく変わりやすいタイミングです。
資産状況や生活環境を整理して、定期的に更新することが大切です。
万が一の事故や病気に備え、保険に加入して家族を守れるようにしている方が多いと思いますが、保険契約も立派な1つの終活です。
ライフプランニングを行い、見つめ直すのと同時に、自分自身の身辺を整理してデータやPCでいざというときに共有できるようにしておきましょう。
40代 人生の振り返りと今後の設計
40代は、今後の生活の収支や環境がある程度予想できるようになっているかと思います。
これまでの人生を振り返り、今後の人生設計を考えるうえで、車、保険、投資、不動産など、資産を整理したり、将来の生活に向けた貯蓄を積極的に行っていくタイミングです。
自分自身を含めた家族がこれから余計なことで時間や体力が奪われないように、情報を整理して身軽にしていきましょう。
50代 終活の適齢期
50代は、私生活では子どもがある程度大きくなって親元から離れる時期です。
また、仕事では上の役職になり、部下や後輩を育てる立場になっている方も多くおられます。
さらに、自分の親が後期高齢者になり、介護や万が一のことを意識し始める時期でもあります。
体力や気力の低下を嫌でも感じ始め、また私生活や仕事でも1つの区切りを迎えるタイミングですので、終活を本格的に始めるには最適な時期とも言えます。
子どもがいなくなって手広になった家をどうするのか、親の介護や亡くなったときの相続のことなど、自分自身のことだけに収まらず考えることは多いですが、まず親の介護や相続について少しずつ考えを一緒に整理していくと良いでしょう。
60代 セカンドライフと万が一への備え
60代は親の死去、仕事の退職など大きな変化が起きやすい時期です。
親が亡くなったことで財産が増加したり、反対に家を手放したりすることも考えられます。
親から引き継いだ(引き継ぐ予定の)財産を踏まえて自分が今後どのような人生を歩みたいのか、財産は子どもや親族など、どのように引き継いでいってほしいのかを少しずつまとめましょう。
終活身辺整理のステップ
終活身辺整理では、財産の把握から始め、遺品整理、遺言書の作成、死後を任せる人の選定を行います。これにより、自分の意志に沿った終活が可能となり遺族の負担も軽減されます。
- 自分の財産を把握する
まずは、自分の所有する財産を全て把握します。
財産とは、銀行預金口座、不動産、株式、債券、保険、退職金、現金、仮想通貨、貴重品、自動車などです。これらをリストアップすることで、財産の全体像が明確になります。
反対に、債務やローンがある場合は債務の返済状況や契約書などもまとめておきましょう。
また、財産の中にはデータで管理されている「デジタル遺品」と呼ばれるものがあります。
具体的には、スマホやPCのデータ、サブスクリプションサービスなどです。
これらの情報は家族であっても存在を認知していない事が多く、パスワードなどで自由に閲覧処分ができないことがほとんどです。
財産整理をする際は必ずデジタル遺品も整理しましょう。 - 遺品整理の計画を立てる
遺品整理では、物品を「保持するもの」「家族に引き継ぐもの」「売却・寄付するもの」「廃棄するもの」に分類し、それぞれの処分方法を決定します。これにより、遺族にとって負担となる物品を減らし、思い出深い品を大切に保つことができます。 - 遺言書の作成
遺言書は、自分の財産を誰がどのように承継するのかを示した法的な書面です。
遺言書は形式や要件が決まっているため、単にエンディングノートなどに希望を記載するだけでは法的な効力を生じません。
遺言書は自筆証書または公正証書の方法で作成し、財産の分配方法などを明確に記述することが大切です。法的な要件を満たしているか確認し、必要に応じて相続の専門家である司法書士や弁護士に相談することが重要です。 - 死後を任せる人の選定
死後のことを任せられる人がいない方は、司法書士や弁護士と契約を結ぶことで、死後の葬儀や永代供養、墓じまいなどを任せることができます。これを死後事務委任契約と呼びます。
死後事務を契約により専門家に任せることで、残された親族の負担が減るだけでなく、専門家が確実にご自身の死後の希望を叶えることができます。
終活身辺整理の注意点
終活身辺整理は、始めるべき時期や方法は特に決まっていません。そのため、どうしても目の前の生活を優先して後回しにしてしまうことがあります。
しかし、終活は保険と同じく万が一に備えた大切な準備です。
なるべく早く、そして少しずつ行うことで、将来の自分自身や大切な家族を守ることができます。
終活身辺整理を行う際は、法的な知識、家族とのコミュニケーション、ご自身の気持ちの整理が必要になります。
まずは自分自身の希望や今の状況を整理し、その後法律の専門家に相談することで、法的なリスクや将来のトラブルを回避することができ円滑な終活を実現することができます。