相続手続きは遺言書がある場合と遺言書がない場合とで対応が大きく異なります。
亡くなった方(=被相続人)が遺言書を作成していない場合は、ほとんどの相続の場面で「遺産分割協議」を行い、「遺産分割協議書」を作成することになります。
万が一、親族から突然遺産分割協議書が送られ、「実印を押したうえで印鑑証明書を提出して」と要求された場合、そもそもその書類がどんな意味をもつのか、どう対応すべきなのかを解説します。
遺産分割協議書とは?
遺産分割協議書とは、「被相続人の財産を、誰が、どのような割合で相続するかについて相続人が話し合い、合意した」ときに作成する、合意内容を記載した書面です。
相続人同士が話し合うことを「遺産分割協議」と呼び、その内容を具体的に記載した書面が「遺産分割協議書」です。
遺産分割協議証明書との違いは?
遺産分割協議書と呼称が似ているものとして「遺産分割協議証明書」があります。
遺産分割協議書は相続人が一堂に会して合意した場合に1つの用紙に連名で署名押印するのに対し、遺産分割協議証明書は「協議証明書内に記載された内容に間違いないことを証明します」と各相続人が個別に署名押印して証明する書面です。
どちらも法的には同じ効果を持ちます。
遺産分割協議は一部の相続人のみ(例えば過半数)でも有効?
遺産分割協議は、相続人全員が同じ内容に合意しない限り意味をなしません。
つまり、相続人の過半数が合意しているからといって遺産分割は有効になりません。
遺産分割協議は書面が必須?
遺産分割協議自体は口頭でも成立します。
ただし、不動産相続登記、預貯金解約など、実体的には書面を提出することが求められますし、後日の紛争防止のために書面で作成のうえ署名と実印で押印したものを提出します。
親族が遺産分割協議書を送ってきた意味・理由
疎遠な親族が突然遺産分割協議書を送ってきた場合、または突然電話で遺産分割協議を送ると伝えられた場合、そこにどのような意図、理由があるのかを推察します。
「財産(遺産)放棄して」の意味
相続の現場では、「法律上の相続放棄」と「口語としての相続放棄」の2パターンがあります。
法律上の相続放棄は、「自己が相続人であることを知ってから3か月以内に、家庭裁判所に対して相続放棄の旨を申述し受理された」ことを意味し、法律上はじめから相続人でなかったものとみなされます。
一方、口語としての相続放棄は、「遺産分割協議の結果、ある相続人が財産をまったく相続することがない」状態を意味し、法律に詳しい人でないかぎり、相続の現場ではこの意味で財産(相続)放棄と表現することがほとんどです。
親族が「財産放棄して」と言ってきた場合、それは裁判所での手続きを要求しているのではなく、ほとんどの場合は「遺産分割協議の結果、何も取得する財産がないことに合意してほしい」という意味です。
「実印ついて印鑑証明書をだして」の意味
遺産分割協議は口頭でも成立しますが、実際の手続においては金融機関や法務局に対して遺産分割協議書を提出しなければなりません。
そして、書面で作成した遺産分割協議書は、各相続人が実印で押印し印鑑証明書を提出しなければなりません。(外国籍、海外在住者で印鑑登録がない場合を除く)
親族が独自に実印と印鑑証明書を要求しているというわけではなく、遺産分割協議書を提出する以上実印と印鑑証明書は必須となるため、手続上必要だから要求していることが分かります。
「銀行の手続で必要」と言われた意味
先ほど述べたように、相続の各手続きは「遺産分割協議書+実印での押印+印鑑証明書」がセットです。
親族から銀行の手続で必要と言われた場合は、文字通り「被相続人に預金があり、その解約手続きのために遺産分割協議書が必要」であることを意味します。
遺産分割協議書が送られてきたときの注意点
遺産分割協議書が突然送られてきた場合にとりうる方法は、端的に言えば「応じる」か「応じない」かの二択です。
遺産分割協議は、相続人の全員が合意しなければ成立せず、相続人が2名であろうと50名であろうと、たった1名でも合意できない場合は不成立となります。
どのような遺産分割に応じるかは、各相続人に与えられた権利です。
しかし、最終的に遺産分割に合意するか否かは別として、そこに至るまでに注意すべき点がいくつかあります。
即座に署名押印に応じない
疎遠な親族や親戚から突然遺産分割協議書が送られてきたケースは、特に注意が必要です。
なぜなら、本来であれば相続手続きは、「相続人が話し合い、協議が成立し、書面を作成する」という過程を経るべきところ、突然遺産分割協議書が送られてきたということは、本来であれば先に行われる協議を飛ばして書類を作成しており、順番が逆だからです。
そうせざるを得ない、やむを得ない理由があるのかもしれませんが、即座に署名押印に応じてしまうと大きな損失を被ることもあります。
書類が送られてきたら、冷静に対処することが大切です。
無視は得策ではない
近年では様々な犯罪が発生しており、突然親族を名乗る人物から相続で必要だから実印と印鑑証明書を要求されても、警戒する方が多いのは当然です。
特殊詐欺などの犯罪の可能性が高い場合は、送られた書類を警察に提供することも大切ですが、本当に相続手続きに関連する場合は、接触を試みるために何度か連絡があるはずです。
この場合に、「自分には関係ない」「忙しい」「財産はいらないから協力する必要もない」と無視をしていても、あまり得策ではありません。
遺産分割協議は相続人全員が合意しないかぎり成立せず、協議が成立しない場合は家庭裁判所で相続人が「遺産分割調停」を申し立てる可能性があるからです。
遺産分割調停の申立てがされた場合や調停を経て遺産分割審判に移行した場合、裁判所から相続人に対して通知書面が届きます。
そのたびに相続人や裁判所から何かしらの連絡がくることは、精神的な負担にもなりえます。
遺産分割協議書が送られてきたときに確認すべきこと
被相続人が誰で、法定相続人が誰か
相続でもっとも基本かつ重要な点は、「亡くなった人(被相続人)」と「法定相続人」の把握です。
親族から書面が送られてきた場合、親族と自分がともに相続人になっていることが分かります。そして、被相続人が誰であるのか、法定相続人が自分と親族以外誰なのかをまずは把握します。
手紙や書面が送られてくる場合、相続関係説明図という家系図のような書面が同封されていることがあります。
もし相続関係が不明な場合は、書面を送ってきた相続人に対して確認しましょう。
法定相続分の割合
相続人が誰であるかを把握すれば、次に相続分の割合を確認します。
相続人には法定相続分と呼ばれる持分があり、特段の事情がないかぎり、各相続人には法定相続分の取得が認められます。
自分の法定相続分がいくらなのかによって、取得できる財産の価格が分かります。
遺産の内容
相続人は、被相続人のすべての財産を法定相続分の割合で共有します。
すべての財産とは、遺産分割協議書に記載のある財産だけでなく、遺産分割協議書に記載のない財産も該当します。
さらに、プラスの財産だけでなくマイナスの財産、つまり借金も相続します。
遺産分割協議書に署名押印する前に、被相続人のすべての財産を把握しておくことで、後から思わぬ相続トラブルに巻き込まれるリスクを減らせます。
遺産分割協議の前に、遺産分割協議書を送ってきた相続人に相続財産の提示を求めてみましょう。
遺産分割協議書の内容
遺産分割協議はすべての財産を対象に行っても、一部の財産のみを対象に行っても成立します。
一部の財産のみを対象に遺産分割をした場合は、残りの財産はなお法定相続人が法定相続分で遺産共有する状態となります。
突然遺産分割協議書が送られてきた場合は、遺産分割協議書に財産がどのように記載されているかを確認しましょう。
「本協議書に記載のないすべての財産」「後日判明した財産」「本協議書を除く財産」などと記載されている場合は、協議書に記載されていない財産を含めて合意していることになりますので、書きぶりに注意しましょう。
遺産分割や相続手続きのお悩みは司法書士に

相続人が遺産分割協議をする相続手続きでは、相続人同士の関係性から、話し合いがまとまらなかったり、特定の相続人のみに負担を強いることが不公平になるなど、複雑な事情が絡み合います。
しかも、相続税がかかるケースでは相続開始から10か月以内に申告をしなければならず、亡くなられた方の不動産がある場合は3年以内に相続登記をする必要があります。
司法書士であれば、相続手続きに必要な戸籍収集、遺産分割協議作成、不動産調査、相続登記、預貯金の解約まですべてお引き受けすることができ、相続税がかかる場合には税理士と連携して手続きをスムーズに進めることが可能です。
相続手続きや遺産分割協議でお困りの方は、ぜひ相続の専門家である司法書士にご相談ください。
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