法律の用語で、「法定相続人」という言葉があります。
法定相続人の確定は、あらゆる相続手続のもっとも基本的なポイントでありながら、もっとも重要なポイントでもあります。
仮に法定相続人の把握を間違えたり見逃してしまうと、せっかく作成した遺産分割協議書などの書類や相続税の申告書類などが根本から覆ることになります。
相続でもっとも重要といえる「法定相続人」について解説します。
法定相続人とは
法定相続人とは、「民法の規定により、亡くなった人(被相続人)の財産について相続する権利を有している人」のことを指します。
推定相続人との違いは?
法定相続人と似た用語で、「推定相続人」があります。
推定相続人とは、実際には「ご健在の人が今亡くなったとしたら財産を相続する権利を有する人」のことです。実際には相続が起きていない仮定の話であるため「推定」という表現を用います。
推定相続人という表現は、主に相続対策(税金の対策、遺言書作成時に相続人が誰であるかを把握するため)等で使われます。
相続放棄をした人は?
法定相続人は法律によって定められた相続人のことを指します。
相続が起きたあと法定相続人が相続放棄をした場合、相続放棄をした人は「はじめから相続人でなかったもの」とみなされ、次順位の相続人がいればその者が相続人となります。
実務の現場では法定相続人が誰か?と聞かれれば、それは相続放棄をする前の状態の相続人を指しますので、相続放棄者も法定相続人である(ただし相続放棄をした)という表現がなされます。
相続欠格者は?
相続欠格とは、被相続人に対する不法行為等により、強制的に法定相続人から除外される制度です。
欠格事由は民法に規定されており、次の5つの事由を指します。
1.故意に被相続人又は相続について先順位若しくは同順位にある者を死亡するに至らせ、又は至らせようとしたために、刑に処せられた者
2.被相続人が殺害されたことを知って、これを告発せず、又は告訴しなかった者。ただし、その者に是非の弁別がないとき、又は殺害者が自己の配偶者若しくは直系血族であったときは、この限りでない。
3.詐欺又は強迫によって、被相続人が相続に関する遺言をし、撤回し、取り消し、又は変更することを妨げた者
4.詐欺又は強迫によって、被相続人に相続に関する遺言をさせ、撤回させ、取り消させ、又は変更させた者
5.相続に関する被相続人の遺言書を偽造し、変造し、破棄し、又は隠匿した者
欠格事由に該当する場合は被相続人や他の相続人らの申し出や特別な手続きをするまでもなく当然に相続権を失います。
相続人の廃除
相続人の廃除とは、遺留分を有する推定相続人(被相続人からみて配偶者、子、親)が被相続人の生前に虐待、暴言その他著しい不行跡があった場合に、被相続人の生前の意思により、裁判所手続で相続権と遺留分完全に剥奪する制度です。
相続欠格と相続人廃除は要件や手続の有無などが違うものの、どちらも相続権を失う点は同じです。
法定相続人の順位とは?
法定相続人には順位があります。
後順位の相続人は、先順位の相続人がいないときにはじめて法定相続人になります。
「先順位の相続人がいない」状態とは、相続放棄や相続欠格、相続人廃除によって法律的に相続人がいなくなったことを指します。
配偶者は常に相続人
被相続人に配偶者がいるときは、配偶者が常に法定相続人となります。
配偶者と被相続人の婚姻期間に条件はありませんので、婚姻期間がどれだけ長い期間でも短い期間でも関係なく法定相続人に該当します。
内縁者は?
婚姻関係にない「内縁の妻夫」や「同性パートナー」は、現在の民法では法定相続人に該当しません。
ただし、内縁関係者や同性婚の関係にある者は、法定相続人としてではなく、民法に定める「特別縁故者」として財産を受け取ることができる可能性があります。
第1順位:子供(直系卑属)
被相続人に子供(直系卑属)がいるとき、子供は第1順位の相続人になります。
子供は最終の配偶者との間の子供だけでなく、前夫・前妻との子も該当するほか、婚姻関係にない人との間の子(認知のみしている子)や養子縁組した養子も含まれます。
孫がいる場合
被相続人の子供が被相続人より先に死亡している場合、死亡した子供の子(被相続人の孫)が相続人になり、これを「代襲相続」と呼びます。
第2順位:親(直系尊属)
子供(直系卑属)に相続人がいないとき、被相続人の親(直系尊属)が相続人になります。
親は実父実母のほか、養子縁組をした場合の養父養母も相続人になります。
また、父母の両方が死亡している場合はその上の世代(被相続人の祖父母)が相続人になります。
第3順位:兄弟姉妹
子供(直系卑属)、親(直系尊属)のいずれにも相続人がいないとき、被相続人の兄弟姉妹が相続人になります。
被相続人の兄弟姉妹は、父母を同じくする兄弟姉妹だけでなく、父母の一方を異にする兄弟姉妹(いわゆる異母兄弟、異父兄弟)も法定相続人に該当します。
また、兄弟姉妹が被相続人より先に死亡している場合、兄弟姉妹の子(被相続人の甥姪)が代襲相続人となります。
法定相続人でありがちな間違い
相続手続きの現場でよくありがちな、「法定相続人」の把握に関する勘違いをご紹介します。
死亡した順番に注意
相続の実務では、被相続人が死亡する前後で別の方が亡くなっていることが多々あります。例えば、被相続人の子供が先に死亡しているケースなどです。
このようなケースの場合に、被相続人の子供の配偶者は相続人にならず、亡くなった子供の子供(被相続人の孫)のみが代襲相続人になります。
対して、被相続人が死亡したあとに子供が亡くなった場合には、子供の配偶者が相続人になります。
婚姻して名字が変わっても、相続権には影響ない
被相続人の子供が婚姻し名字が変わっていることがありますが、被相続人の子供である以上、名字が変わっていても相続人に該当します。
名字以外にも、名前を改名している、日本国籍を喪失した、海外に居住しているなどの属性的な情報は相続人であるかに影響がありません。
前配偶者との子供は相続人である
離婚した相手との間にいる子供は、被相続人の直系卑属として相続人になります。
現配偶者との間の子供と前配偶者との間の子供はどちらも同じ子供として、等しく相続権を与えられます。
疎遠絶縁していても相続人
子供、親、兄弟姉妹で疎遠になっている、もしくは絶縁するほど関係性が悪くても、法定相続人に該当し得ます。
相続開始前の話し合いは相続人に影響がない
「被相続人が亡くなる前に、遺言のように皆の前で話をした」「相続が起きる前に相続人同士で話し合いを完了させていた」事実があったとしても、相続人から廃除されるわけではなく、法定相続人に該当します。
相続手続きを専門家に依頼するメリット
相続が発生しているときは相続の専門家に依頼していただくことで様々なメリットがあります。
1.法定相続分や法定相続人を判断してもらえる
法律に詳しくない方が法定相続分を計算することは簡単ではありません。
相続の専門家に依頼いただければ法定相続人が誰で法定相続分がいくらなのかをしっかりと判断します。
2.相続手続きを任せられる
相続の専門家であれば、法定相続分の計算だけでなく、法定相続人の調査、遺言書の調査、財産調査、不動産の相続登記など、相続手続きを一括して任せることができます。
3.相続に関する具体的なリスク、紛争回避方法などを聞ける
相続の専門家にご相談いただければ、相続に関する具体的なリスク、費用、時間、紛争の可能性や回避策まで幅広い知識の提供を受けることができます。
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