相続人同士で遺産の分け方について話し合いがまとまらない場合、裁判所の「遺産分割調停」を利用することになります。しかし、「相手が遠方に住んでいる」「自分が遠方の裁判所まで行けない」というケースも少なくありません。
近年、裁判所では手続きのIT化(オンライン化)が進んでおり、遠方にいながら遺産分割調停や家事事件手続に参加する方法が広がっています。
本記事では、遺産分割調停の基本や管轄(どこの裁判所で行うか)、オンライン化でできることと注意点を分かりやすく解説します。
遺産分割調停とは?
遺産分割調停とは、相続人同士での話し合い(遺産分割協議)がまとまらない、または話し合い自体ができない場合に、家庭裁判所の調停委員会(裁判官と調停委員)を挟んで解決を目指す手続きです。
当事者双方が直接顔を合わせるのではなく、調停委員が交互に双方の言い分を聞き、お互いが合意できるよう客観的な視点からアドバイスや提案を行います。
遺産分割調停の管轄はどこ?
遺産分割調停は、全国どこの家庭裁判所でも申し立てられるわけではありません。
法律によって、以下のいずれかの裁判所で行うと決められています。
①相手方の住所地を管轄する家庭裁判所
②当事者が合意で定めた家庭裁判所
例えば、あなた(申立人)が東京に住んでいて、相手方(遺産分割に協力してくれない相続人)が大阪市に住んでいる場合、原則として上記①に記載した「相手方の住所地である大阪市の管轄家庭裁判所」に申し立てる必要があります。
相手方が複数いる場合の管轄はどこ?
相続人が何十人もおり、相手方が全国に散らばっているケースも珍しくありません。
このように相手方が複数いる場合は、「相手方のうちの誰か1人の住所地」を管轄する家庭裁判所に申し立てることができます。
どこを選ぶかは申し立てる側が決めることができます。
万が一裁判所に行く必要が生じた場合等を想定し、一般的には申立人の住所地に最も近い相手方の住所地を管轄する家庭裁判所に申し立てます。
自分が遠方に住んでおり、相手方の住所地を管轄する家庭裁判所まで通うのが肉体的・経済的に難しい場合は、「当事者が定めた合意管轄裁判所」を管轄裁判所として申し立てることができます。
ただし、これはあくまで当事者が合意していることが条件ですので、遺産分割調停のように話し合いがそもそも成立していない場合に合意管轄が成立していることは稀ですので、相手方の住所地を管轄する家庭裁判所に申し立てることになるでしょう。
遺産分割調停のオンラインでできること
裁判所のIT化に伴い、遠方にいる当事者(申立人や相手方)でも以下の方法で調停に参加できるようになりました。
①Web会議(テレビ電話)による調停
Microsoft TeamsやzoomなどのWeb会議システムを利用し、画面越しに調停委員と顔を合わせて話を進める方法です。自宅のパソコンやスマートフォンから参加できるため、交通費や移動時間を大幅に削減できます。
②電話による調停
Web環境が整っていない場合、電話回線をつないで音声のみで調停を行う「電話会議方式」も利用できます。
遺産分割調停のWeb手続で注意すること
非常に便利なオンライン調停ですが、利用する際にはいくつか注意すべきポイントがあります。
①対応可能(認められる)かどうかは各家庭裁判所によって異なる
全国の家庭裁判所でIT化が進められていますが、運用状況や設備、対応している手続きの範囲は各裁判所によって異なります。事前に管轄の裁判所へ確認が必要です。
②事前に書面等で申し出が必要なことがある
オンラインでの参加を希望する場合、勝手に接続することはできません。
事前に裁判所に対して「Web会議(または電話)による実施」を希望する申出書を提出し、裁判所の許可を得る必要があります。
③操作に不慣れな場合は手続が出来ないことがある
Web会議システムを利用して遺産分割調停をするためには、PC、カメラやマイクの設定、アプリの操作が必要です。
遺産分割調停は原則として「非公開手続」のため、当事者でない限り家族であってもその場に立ち会う(画面に映る・同席する)ことはできません。
ZoomやTeamsなどの方式を希望しても、高齢の相続人がスマートフォンの操作に対応できない場合や、セキュリティ(周囲に誰もいない環境)を確保できない場合は、テレビ電話方式での調停が行えない可能性があります。
テレビ電話方式での遺産分割調停が難しい場合は、電話での調停を希望しましょう。
④裁判所によっては設備が不十分で期日まで時間を要することがある
都心部の家庭裁判所ではテレビ電話の設備が複数あり、多数の遺産分割調停事件があったとしても遺産分割調停期日を同時に行うことができますが、裁判所側のWeb会議用ライセンスや端末の台数には限りがあります。
希望者が多い場合や裁判所の設備が不十分な場合、次回の調停期日を決めるまでに通常よりも長い時間を要してしまうケースがあります。
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遺産分割調停は、相続人の確定、相続財産の確定をするために書類を多数収集するだけでなく、遺産分割協議書の作成や相続分譲渡証明書など相続人の人数や合意可能性の有無、調停当事者の数などにより作成すべき書類や見通しが変わります。
さらに、遺産分割調停の管轄選定やオンライン手続きの申し出、裁判所に提出する書面の作成など、専門的な知識と事前の準備が必要不可欠です。
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