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成年後見制度が激変!閣議決定された改正案のポイントを司法書士が徹底解説

2026 4/21
成年後見制度が激変!閣議決定された改正案のポイントを司法書士が徹底解説

2026年(令和8年)4月3日、政府は成年後見制度の抜本的な見直しを含む「民法等の一部を改正する法律案」を閣議決定しました。

これまでの成年後見制度は、「一度始めると一生やめられない」「自由が制限される」といったイメージが強く、利用を躊躇するケースも少なくありませんでした。

しかし、今回の改正は「必要な時に、必要な分だけ利用する」という、利用者主体の柔軟な制度への大転換となります。
本記事では、閣議決定された内容に基づき、現行制度との違いや具体的なケーススタディを分かりやすく解説します。(令和8年4月21日本執筆時点)

目次

現行の成年後見制度の主なデメリット

現行の成年後見制度は、ご本人の財産管理、身上監護を通して本人の利益を保護することが主な目的になっております。
判断能力が低下した本人の利益を保護するために、本人の気持ちと後見人の行動が相反する結果になることもあり、次のようなデメリットが指摘されています。

(1)終身制の負担

現行の成年後見制度は、事実上終身制となっており、一度後見制度を利用し始めると本人が死亡するまでは後見人が本人の財産を管理し続けることとなっております。

判断能力が低下した本人の財産を保護することが重要なのは間違いありませんが、一方で、日常生活や支払関係には問題がなく、瞬間的に利用したいだけ(相続での遺産分割協議、不動産の換価処分、入所入院手続など)のケースも多々あります。

しかし、現行の成年後見制度は一度開始すれば、後見人に手伝ってほしい内容が終了したあとも後見人が代理人になり続けるため、本人にとって大きな精神的負担となっています。

(2)継続的な費用の発生

後見人が行う本人の財産管理や身上監護は、後見業務=すなわち仕事です。
誰が本人の後見人になるかは最終的に裁判所が決定するため、本人の全く知らない司法書士や弁護士が選任されることもあります。

そして、司法書士や弁護士などの専門家が後見人に選任された場合、月2~5万円程度の後見人報酬が発生し、本人の財産から支弁することになります。
先ほど述べた終身制に加えて永続的に費用が発生することは、本人にとって大きな経済的負担となります。

(3)権利の制限

現行の成年後見人・保佐人・補助人は、それぞれ代理権、同意権、取消権など与えられた権限が異なるものの、本人にとって必要ない可能性がある権限まで付与される傾向にあります。

特に、本人の判断能力が最も低い類型である成年後見人の場合、日用品の購入その他日常生活に関する法律行為を除き、後見人が一律に取り消すことができ、本人にとっては行動を抑制、制限される原因になっています。

成年後見制度改正、4つの大きな変更点

先に述べたような現行の成年後見制度の問題点を踏まえ、2026年(令和8年)4月3日に成年後見制度の改正要綱が閣議決定されました。主な相違点は、次のとおりです。

項目現行の成年後見制度改正案
類型後見・保佐・補助補助(特定補助)の一本化
利用期間原則として、一生継続「有期」「目的」別に利用が可能
支援(代理権)の範囲より広い代理権、同意権が付与必要最小限の行為に限る
代理人の交替一定の条件が必要本人の利益に照らして交替

(1)類型

現行の成年後見制度は、ご本人の判断能力の程度に応じて、後見・保佐・補助の3類型があります。
それぞれ代理権、取消権、同意権などが付与されていますが、その内容は一般の方には区別がつきにくい点、類型の線引きも曖昧でした。

改正案では、後見・保佐・補助の3類型を廃止し、「補助」に一本化する方向で話が進められています。
なお、判断能力が著しく低下している方には「特定補助」として、民法に規定される特定の項目、例えば不動産の処分などに限定して取消権を付与する仕組みが検討されています。

(2)利用期間

現行の成年後見制度は、本人の判断能力が回復した場合に、終了することができます。
しかしながら、一般的に認知症などで判断能力が低下した方が、その後判断能力を回復することはほぼありません。
つまり、現行制度は実質的に一度利用すると本人が死亡するまで終了することができない終身制の制度となっています。
仮に本人ではなく後見人が先に死亡した場合には、裁判所の選任を経て新たな後見人が本人の財産管理を担います。

これに対して、改正案の後見制度では、より具体的に本人にとって必要な範囲で後見制度を利用することが可能となる見込みです。

例えば、「不動産の相続に関する遺産分割協議のためだけに後見制度を利用したい」「不動産を売却する手続のみを後見人に依頼したい」などのスポット的な使い方ができるようになる予定です。

(3)支援(代理権)の範囲

現行の成年後見制度は、保佐・補助の類型の場合は代理権の範囲、同意権の付与などを個別具体的に検討することになっていますが、成年後見人の場合、本人の判断能力の程度や必要性にかかわらず、日常生活に関する法律行為を除き、一律に代理権が付与されています。
そのため、本人にとっては過大に法律行為を制限されることになり、また、成年後見人による恣意的な運用ができてしまう問題があります。

新制度では、類型を補助に一本化し、さらに補助人に付与する同意権、代理権の範囲を個別具体的に判断することとされています。
また、同意権、代理権を付与する際には、本人の同意を要することとされています。

(4)代理人の交替

現行の成年後見制度において、後見人・保佐人・補助人が交替するには、家庭裁判所の許可を得る必要があります。また、家庭裁判所の許可を得るためには、一定の相当な事由、例えば「本人が遠方に引っ越したことで後見人との物理的な距離が生まれ、後見人が円滑に本人の財産管理や身上監護を行うことが困難となった場合」や、「本人による度重なる暴言暴力により、後見人が精神的に疲弊し、業務を行うことが困難である場合」などに該当する場合に限られ、いつでも誰でも自由に交替できるわけではありません。

新しい成年後見制度では、より「本人の利益」を最優先に考える制度設計になっており、見ず知らずの第三者が補助人であることよりも親族が補助人である方が、本人にとって良いと考えられる場合には、今の成年後見人に何ら問題がなくても、自由に柔軟に交替ができるようになる予定です。

なぜ後見制度が変わるのか

後見制度が変わる理由は、主には先ほど述べたような問題点、利用のしにくさを改善し、これから益々増加する高齢者の方々が利用しやすくする点にあります。

そして、もう1点の理由として、現行の成年後見制度はあくまで本人の財産管理、身上監護を目的とし、どちらかと言えば本人を監督するような立場と位置づけられていたところ、近年では「本人の意思決定支援」としての側面が重視されるようになり、本人とともに伴走するサポーターという考え方が広まっています。

こうした社会的な価値観の変化を反映するために、今回のような改正案が閣議決定されました。

新しい後見制度の注意点

(1)改正時期は未定

今回の内容はあくまで「閣議決定」された案です。
今後、国会での審議・成立を経て、実際の施行は2027年から2028年頃になると予想されます。

既にご家族が認知症などで判断能力が低下し、喫緊の問題が生じている場合は、現行の成年後見制度を利用し将来的に改正された制度に基づいて後見人の交替、後見制度の終了を行う余地があると考えられます。

(2)家庭裁判所の介在はある

改正要綱は、「いつでも、好きなときに自由に後見利用を止められる」イメージがありますが、実際には家庭裁判所が関与します。
現行の成年後見制度と比較してより柔軟に後見人の交替や終了ができるのは間違いないと思いますが、無条件ではありません。あくまで本人の利益に照らして相当かの判断のもとで制度を利用する点は注意が必要です。

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