司法書士と弁護士は同じ法律を専門とする士業ですが、扱える事件には違いがあります。
このページでは相続で生じる一般的な手続の紹介と、司法書士と弁護士が行える業務の共通点、違いをご説明します。
相続で必要な手続
相続人の調査、確定(戸籍収集)
相続が発生したときは、遺言書がある場合など一部の例外を除き、原則として戸籍を収集します。
具体的には被相続人の出生から死亡まで、相続人全員の現在の戸籍を取得します。
戸籍によって、相続人が誰なのかを確定させます。
財産調査、確定(相続財産の確定)
相続人の調査と同様に、被相続人が亡くなったときの財産を調査し確定させます。
被相続人の不動産、預金、株式、保険などを調査していきます。
遺産分割協議書の作成
複数の相続人で「誰が、どの遺産を、どれぐらい相続するのか」を話し合い、合意すれば書面を作成します。
これを遺産分割協議書と呼びます。
遺産分割協議書に各相続人が署名、実印で押印し、印鑑証明書を添付することで、各相続手続が可能となります。
相続人の紛争が起きたなら、裁判所に調停申立
相続人同士の話し合いがまとまらない場合は、家庭裁判所が間に入って協議を取り持ってくれます。
このための手続を調停申立と呼び、裁判所に書類を作成して提出します。
家、土地の名義変更(不動産登記)
不動産を相続し、相続人に名義が変わる場合は「登記」が必要です。
不動産の相続登記をしないと、不動産を売却したり、修繕費用を借りるといったことが出来ません。
預貯金や株式の解約、移管
どの相続人が何を相続するか(遺産分割協議)がまとまれば、実際にその内容に基づいて被相続人名義の預金の解約や株式の移管手続を行います。
相続放棄なら裁判所への申述書類作成
相続を放棄したい場合は、相続が起き、自分が相続人になったことを知ってから3か月以内に家庭裁判所に申述書類を提出しなければなりません。
自筆証書遺言書があるなら裁判所への検認
自筆証書遺言書がある場合は、遺言書の改ざん防止のため、家庭裁判所に「検認」という手続をする必要があります。
検認手続のために、書類を集めて提出します。
相続人に認知症や未成年者がいる場合の申立
相続人の中に認知症や未成年者がいる場合、その方の代わりに遺産分割協議をする代理人を選任する必要があります。
具体的なケースにより異なりますが、特別代理人や成年後見人を選任するように、裁判所に書類を提出します。
司法書士と弁護士の業務の比較
業務内容 | 司法書士 | 弁護士 |
相続人の調査 | ○ | ○ |
財産調査 | ○ | ○ |
遺産分割協議書の作成 | ○ | ○ |
調停の申立 | ○ | ○ |
紛争解決、仲裁 | × | ○ |
相続登記(不動産の名義変更) | ○ | × |
預金の解約など相続手続 | ○ | ○ |
相続放棄の手続 | ○ | ○ |
自筆証書遺言書の検認 | ○ | ○ |
認知症や未成年者がいる場合の手続 | ○ | ○ |
弁護士にしかできないこと
相続手続において弁護士にしかできないことは、「紛争が起きたときの仲裁や解決」です。
紛争が起きたときに、相続人の代理人として矢面に立ち、他の相続人と協議できるのは弁護士だけです。
司法書士にしかできないこと
相続手続において弁護士にしかできないことは、「不動産の登記(名義変更)」です。
不動産を相続し、相続人に名義が変わる場合は「登記」が必要です。
不動産の相続登記をしないと、不動産を売却したり、修繕費用を借りるといったことが出来ません。
厳密には弁護士も登記申請業務ができますが、実体的に登記業務を行っている弁護士はほとんどいませんので、ほぼ司法書士の独占業務となっています。
司法書士と弁護士の費用の比較
案件によって費用が変わるため単純な比較はできませんが、一般的には弁護士よりも司法書士の方が安価です。
これは、弁護士が紛争の際に代理人として対応することも想定した金額の設定になっているからだと思われます。
司法書士は安価ですが、紛争が起きたときは調停申立の書類を裁判所に提出することぐらいしかサポートできません。
司法書士に依頼する方が良いケース
相続財産の中に不動産がある
相続財産の中に不動産がある場合は、相続人がご自身で申請する場合を除いて司法書士に依頼することになります。
弁護士に依頼し、後から司法書士に再度依頼するよりも、始めから司法書士に依頼する方がスムーズな手続が可能ですし、費用も1士業に依頼するだけなので割安になります。
相続人の紛争がない
相続人の紛争がない場合は、司法書士と弁護士が行える業務内容に差はありませんので、司法書士に依頼する方が一般的には割安になります。
弁護士に依頼する方が良いケース
相続人の紛争がある
相続人同士がもめてしまっている場合、仲裁したり相続人の代理人として対応できるのは弁護士だけです。
この場合は、確実に弁護士に相談することになります。
使い込みや使途不明な相続財産がある
一部の相続人が被相続人の生前に財産を勝手に使っていたり、管理する中で使途不明な金額がある場合は、相続人の紛争に繋がる可能性が高く、その財産額の確定にかなりの労力を要します。
また、使い込みではありませんが、被相続人が特定の相続人に多額の金銭援助を行っていた場合や、相続人の親族(たとえば長男の配偶者)が介護をしていたケースなども、相続財産の確定で紛争になる可能性が高くなります。
このような場合は、司法書士よりも弁護士に相談する方が良いケースです。
司法書士と弁護士どちらに相談するべきか
司法書士と弁護士がともに行える業務の相談の場合でも、その難度や依頼者の性質などから判断するため、どちらが良いと言い切ることは難しいですが、相続に関する相談の窓口としては、
- 当事者でもめているときは弁護士
- 裁判所で訴えなどを起こしたい場合は弁護士
- 当事者がもめていないときは司法書士
- 不動産がある場合は司法書士
- どちらにも依頼できる場合で、なるべく費用を抑えたいなら司法書士
となります。
司法書士、弁護士ともに、自分のできない業務であれば提携している専門家を紹介することになります。
当事務所は相続に特化した事務所です。
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