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相続人が遺産分割協議書への押印に協力しない理由と対応方法

2025 1/07
相続人が遺産分割協議書への押印に協力しない理由と対応方法

相続の分野はしばしば裁判沙汰になることがありますが、そのほとんどは「特定の相続人が遺産分割協議書への押印に応じてくれない」ことが原因で生じます。

遺産分割協議書に押印してくれない相続人がいる場合、相続の手続きが止まってしまい、円滑な遺産の承継ができなくなり、相続人全員にとって大きな不利益になります。

ここでは相続人が遺産分割協議書への押印を拒むケースごとの理由と、どのような対応ができるかを解説します。

目次

遺産分割協議書が必要となるケースは?

遺産分割協議書とは、「相続人全員で亡くなった方(被相続人)の財産を、誰が、どれだけの割合で取得するかを話し合い、合意した内容を書面にしたもの」を指します。

相続が発生したとき、すべての手続で遺産分割協議書が必要になるわけではありません。

遺産分割協議書が必要となるのは、一般的に次の3つの要件を満たしている場合です。

①遺言書がない
②相続人が2名以上いる
③相続人が法定相続分以外の割合で遺産を相続する

特に勘違いしやすいのは③「相続人が法定相続分以外の割合で遺産を相続する」の考え方です。

例えば、現金500万円と、家(500万円)相当の財産を有していたXが亡くなり、相続人が妻Aと子供Bの合計2名であるとします。

配偶者と子供1名のとき、法定相続分は2分の1ずつですので、AとBは法律上2分の1ずつ財産を取得する権利があります。

Aが500万円相当の家の名義を取得(相続)し、Bが現金500万円をすべて相続するとき、AとBが取得する財産額は対等なので遺産分割協議書が不要に思う方がいますが、実はこのケースは必ず遺産分割協議書を作成することになります。

AとBが2分の1ずつ財産を相続する権利がある場合、この2分の1とは全ての財産を2分の1ずつ取得することを意味していますので、法律どおりに考えると、ABが家を2分の1ずつ、預金も2分の1(250万円)ずつ取得することになるのです。

ところが、金額は同じと言えども、Aは不動産だけ、Bは預金だけを取得することになるので、法律上の取り分とは異なる合意がなされたものとして、遺産分割協議書を作成する必要があるのです。

つまり、遺産分割協議書は、相続人が相続財産のすべてを法定相続分どおりに取得しない限りほぼ必要になるのです。

遺産分割協議書への押印に応じてくれない理由と対応策

先ほどのケースのように、遺産分割協議を行う相続人が2名だけのときは、比較的合意がまとまりやすい傾向にあり、反対に相続人が多数になればなるほど遺産分割協議の難度は上がります。

そして、相続の手続では、遺産分割協議書への押印が1名でも漏れていると、つまり相続人全員が合意しないかぎり、法定相続分以外の取得ができません。

遺産分割協議書に押印してくれない相続人がいる場合、その理由が判明しているのであれば、ある程度対策は考えることができます。

押印に応じてくれない相続人の所在がわかる場合と、そもそも所在自体がわからない場合とに大別し、遺産分割協議書への押印を拒む理由をまとめます。

所在がわかるケース

所在がわかるケースとは、遺産分割協議書を送る、あるいは遺産分割の提案は出来ているものの、対応してくれないケースを指します。

感情的な理由

相続人同士の仲が悪い

相続人同士が何らかの理由で仲が悪かったり、橋渡し役になってくれていた親が亡くなったことで兄弟仲が悪化したことが理由で押印に応じないケースです。

このケースは金銭的な理由でないため、当事者がいくら協議をしようとしてもなかなか進みません。

親族間のトラブルや面倒ごとに関わりたくない

面倒ごとや揉め事が嫌いで、関与したくないという理由で遺産分割協議に応じないケースです。

その相続人さえ押印に応じてくれれば遺産分割協議がまとまるのに、押印をすることがイコール面倒ごとに巻き込まれてしまうと捉えており応じてくれないこともあります。

昔の合意内容と異なる

生前に話し合っていた合意内容と、いざ相続が起きてからの合意内容に乖離があるために押印を拒むケースがあります。

相続が起きる前の遺産分割協議は法律上認められていませんが、理屈では納得してもらえないことも多々あります。

実印での押印に抵抗がある

実印は命、家族、お金と同じぐらい大切なものと考え、実印での押印に対して反射的に拒絶をしているケースです。同様に、印鑑証明書を提出することに抵抗がある方もいます。

昨今の権利意識の向上、特殊犯罪の増加から考えると仕方ないかもしれません。

実印以外で押印するという方もいますが、例えば不動産登記では、遺産分割協議は実印で押印し印鑑証明書を提出することが法律上で定まっているため、実印の押印と印鑑証明書はセットでなければ意味がありません。

金銭的な理由

一定の対価を要求している

ある意味もっともはっきりした理由なのが、対価の要求です。

法律上の取り分を手放す相続人からすると、あるいは相続の仕方に不公平があるケースでは、その差を金銭で補填することがあります。

相続手続では、特定の相続人が財産を取得する遺産分割協議を作成し、その代償として財産を手放すことになる相続人に一定額の金銭を支払う旨の合意が可能です。

一身上の理由

看護介護仕事で忙しい

親や配偶者の介護、仕事で心身が疲弊し、とても他のことを考える時間も暇もないことから、協力したくない訳ではないが協力する余裕がないケースがあります。

疾患や病気等により内容を理解できない

怪我、病気、精神疾患により相続手続や遺産分割のことを理解できないケースです。
また、場合によっては相続人が未成年者のことがあります。

法律上理解することが難しいとされている未成年者や判断能力が低下した人の場合は、別の制度を併用することで解決を図ることができます。

存命であることはわかるが一切返事がない

住所や所在地は判明しているものの、連絡を試みてもなしのつぶてというケースがあります。この場合は上述のようにそもそも何が原因で遺産分割協議書への押印ができないのかさえ分からないため、法律上の手続きに則って粛々と手続きを進めていかざるを得なくなります。

そもそも住所がわからないケース

単に住所を知らない場合

相続人が他の相続人の住所地を単に知らないために遺産分割協議ができないケースは、司法書士や弁護士などの相続の専門家に相談しましょう。

専門家は依頼を受ければ法定相続人の戸籍や住民票を調査し、住所を特定することができます。これは相続人からの正当な依頼であれば職務上の権限として行うことができます。

住民票住所はわかるが、いない場合

住民票上の住所を突き止め接触を試みたものの、そこには全くの他人が住んでいるケースや居住実態がないケースがあります。

DV避難、何らかの犯罪に巻き込まれた、転勤族で住所を変えるのが面倒になっている、一時的に別の場所に滞在しているなど、様々な理由が考えられますが、行方が不明になっている場合は対応難度が上がる傾向にあります。

遺産分割協議書に押印してくれない相続人への対応

押印してくれない理由を基に協議内容を提案する

上に述べたように遺産分割協議に応じてくれない理由は人によって様々です。

応じてくれない理由がどのようなものであれ、相続人全員の意見がまとまらないかぎり話が進みませんので、押印を避けているのが相続人の正当な権利である以上は、なるべく感情的な話は避け、建設的に解決を図ることが望ましいでしょう。

押印を拒む理由が金銭であることが分かっていれば、具体的な金額を話し合って解決を図ります。

押印に対する拒否感、面倒ごとに巻き込まれたくないという理由であれば、制度の趣旨、手続きの流れ、押印してもらう必要性やリスクなどを丁寧に話して理解してもらえば解決が近付きます。

弁護士を介入させたり、裁判所の手続きを経ることでも解決ができますが、それには相続人同士が互いに一定の譲歩をすることが不可欠です。

相続人から手紙を送る

話し合いに応じてくれない、押印してくれない相続人に対しては、まず相続人の誰かが代表として手紙を送ることから始まります。

いきなり電話をかけたり、遺産分割協議書を送ってしまうと、感情的なもつれや誤解が生じやすいため、なるべく最初は状況を理解してもらうために、参考資料などと一緒に接触することのみを目的にしましょう。

弁護士や司法書士から書面を送る

相続人からの接触に応じてくれない場合は、司法書士や弁護士など相続の専門家から書面を送ることが考えられます。

専門家から書面を送るメリットとして、客観的中立的な立場から、相続の手続きを進めていくことができる(感情面を廃除して手続きに注力できる)こと、相続人からの質問や相続人がもつ法律上の誤解について説明回答できることがあります。

専門家が入るデメリットとしては、法律の専門家、特に弁護士というと紛争をイメージして身構えてしまう方が多いこと、専門家報酬がかかることがあります。

弁護士と比較すると、司法書士は固いイメージや争いごとのイメージを持たれていないことが多いため、司法書士から書面を送る方が効果的なことがあります。

専門家から書類を送る場合は、客観的な証拠や参考となる資料を添付してなるべく警戒や誤解をされないようにしましょう。

遺産分割調停を申し立てる

遺産分割協議がまとまらない場合、長期間そのままにしておくしかないのかというとそうではなく、遺産分割調停という手続をとることができます。

遺産分割調停は家庭裁判所に対して行う申立てで、家庭裁判所の調停委員を交えて家庭裁判所で行う話し合いを指します。

調停委員は相続人同士の間に入って話を聞き、落としどころを探る仲介者として役に立ちますが、裁判での判決と異なり強制力がないため、相続人同士の話し合いができない(まとまらない)状態だと調停が成立しません。

遺産分割調停でも話がまとまらない場合、最終的に遺産分割の審判を行い、審判の中で相続人の取り分を決定することになります。

時間と費用はかかりますが、最終的な解決を図れるため、やるだけ無駄だったということにはなりません。

不在者財産管理人、成年後見、失踪宣告、未成年後見、特別代理人など裁判所の手続

 相続人が正常に判断することができる状態で話し合いに応じない場合や話し合いがまとまらない場合は、先ほどの遺産分割調停が選択肢になりますが、そもそも相続人が行方不明(生死不明)、認知症などの原因で判断能力が低下している、未成年者であるといった特別の事情がある場合には、それぞれ裁判所で手続きをすることで当該相続人に代わって遺産分割協議をする代理人を選ぶことができます。

遺産分割や相続手続きのお悩みは司法書士に

相続人が遺産分割協議をする相続手続きでは、相続人同士の関係性から、話し合いがまとまらなかったり、特定の相続人のみに負担を強いることが不公平になるなど、複雑な事情が絡み合います。

しかも、相続税がかかるケースでは相続開始から10か月以内に申告をしなければならず、亡くなられた方の不動産がある場合は3年以内に相続登記をする必要があります。

司法書士であれば、相続手続きに必要な戸籍収集、遺産分割協議作成、不動産調査、相続登記、預貯金の解約まですべてお引き受けすることができ、相続税がかかる場合には税理士と連携して手続きをスムーズに進めることが可能です。

相続手続きや遺産分割協議でお困りの方は、ぜひ相続の専門家である司法書士にご相談ください。

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