今すぐ手続すべき相続と急がなくていい相続の違い|判断ポイントを司法書士が解説

急ぐ相続と急がない相続

ご家族が亡くなり相続が発生すると、「何から手を付ければよいのかわからない」「すぐに手続しないといけないのだろうか」と不安になる方は少なくありません。

実際、相続手続には期限が設けられているものもあれば、比較的時間をかけて進められるものもあります。

しかし、その違いを理解しないまま放置してしまうと、本来できたはずの手続ができなくなったり、相続人同士のトラブルにつながったりすることがあります。

そこで今回は、今すぐ手続を進めるべき相続と、比較的急がなくても対応できる相続の違いについて、司法書士の視点からわかりやすく解説します。

目次

相続手続はすべてを急ぐ必要があるわけではありません

相続が発生すると、直後から葬儀の手配、親族関係者への連絡、病院や施設の清算、私物の引き取り、菩提寺への連絡、役所や公共料金の手続など精神的に疲弊している中で慌ただしく様々なことを行わなければなりません。

それでけでなく、戸籍の収集や相続人による遺産分割協議、預貯金の解約や不動産の相続登記など、複雑な手続が必要になります。

そのため、「全てを急いでやらなければならない」と考えてしまう方もいらっしゃいますが、実際には手続ごとに緊急度は異なります。

一方で、期限が定められているものや、放置することで不利益が生じるものについては、早めの対応が欠かせません。
まずは、どのようなケースが「急ぐべき相続」に該当するのかを確認していきましょう。

相続手続を急ぐべきケース

①相続放棄を検討している場合

相続手続の中でも特に注意が必要なのが相続放棄を検討しているケースです。

相続放棄は、亡くなった方に借金などの負債がある場合によく利用される制度ですが、手続には、原則として「自分が相続人になったことを知った日から3か月以内に家庭裁判所へ申述」しなければならない期限(熟慮期間)があります。

この熟慮期間を過ぎると相続放棄ができなくなってしまい、原則として法律上プラスの財産とマイナスの財産を含めてすべて相続を承認したものと扱われます。

また、被相続人の財産を処分したり使用した場合にも、相続放棄が認められなくなることがあります。
そのため、借金の有無がわからない場合や相続放棄を検討している場合は、できるだけ早く財産調査を行い、必要に応じて相続放棄をすることが重要です。

②不動産が含まれる相続の場合

相続財産の中に不動産がある場合も、早めの対応が望ましいケースといえます。

不動産を相続した場合には、亡くなった方から相続人へ名義を変更する「相続登記」が必要になります。
以前は相続登記を長期間放置しているケースも少なくありませんでしたが、令和6年4月から相続登記が義務化され、正当な理由なく3年以内に登記手続を行わない場合には過料の対象となる可能性があります。

また、不動産は相続登記を行わないと不動産を売却することもできません。時間が経過すると相続人が増え、権利関係が複雑になることもあるため、不動産が含まれる相続は早めの対応が重要です。

③毎年確定申告していた場合

亡くなられた方が個人事業を営んでおり毎年確定申告をしていた場合や、高額医療費の還付を受ける場合、不動産収入があった場合などは、相続から4か月以内に「準確定申告」が必要となります。

4か月以内に戸籍や申告に必要な書類を収集することはかなりのスピードが求められますので、急いで着手する必要があります。

④財産が多額の場合

被相続人名義の財産が多額になる場合、「相続税」がかかることがあります。
相続税がかかるかどうかの基準として、相続人の数に応じた相続税の基礎控除額があります。

相続税の基礎控除額=3000万円+(相続人の数×600万円)

ただしこれはあくまで目安であり、基礎控除額を下回っていても相続税がかかることがあり、反対に基礎控除額を上回っていても相続税がかからないこともあり、詳細は税理士に相談しながら進めていくことになります。

仮に相続税がかかる場合には相続から10か月以内に申告と納税が必要なため、急いで財産調査に着手することが大切です。

⑤相続人同士で意見が対立している場合

相続人同士の関係が良好であれば問題ありませんが、遺産の分け方について意見が対立している場合には注意が必要です。
「話し合いがまとまらないからしばらく放置しよう」と考える方もいますが、時間が解決してくれるとは限りません。

むしろ、時間の経過によって感情的な対立が深まったり、相続人が亡くなって新たな相続が発生したりすることで、問題がさらに複雑化することがあります。
争いが生じている場合ほど、早い段階で専門家を交えて整理することが重要です。

⑥預貯金の凍結が生活に影響する場合

亡くなった方名義の預貯金は、金融機関が死亡を把握すると原則として凍結されます。
そのため、被相続人の口座から生活費や施設費用を支払っていた場合には、遺族の生活に大きな影響を与えることがあります。

また、個人事業を営んでいた方の場合には、事業資金の確保が必要になるケースもあります。
このような場合には、預貯金の相続手続を早めに進める必要があります。

相続手続をそこまで急がなくても良いケース

すべての相続が緊急対応を必要とするわけではありません。
比較的落ち着いて相続手続を進められるケースをご紹介します。(必ずしも全員に当てはまる訳ではなく個別の事情により異なります)

財産状況が明確で争いがない場合

相続財産の内容が明確であり、相続人全員が内容を把握している場合には、ある程度時間をかけて話し合いを進めることも可能です。

特に相続人同士の関係が良好で、遺産分割について大きな意見の対立がない場合には、慌てて結論を出す必要はありません。
まずは財産の内容を整理し、全員が納得できる形で手続を進めることが大切です。

現金や預貯金のみの相続手続の場合

相続財産が預貯金などの金銭中心で不動産が含まれていない場合は、比較的手続が進めやすい傾向があります。

不動産のように登記手続が必要なく、評価額をめぐる争いも生じにくいためです。
もちろん、相続人同士の合意は必要ですが、不動産相続に比べると手続の負担は軽くなることが一般的です。

相続手続を「急がなくてよい」=「放置してよい」ではない

ここで注意したいのは、「急がなくてもよい相続」は「長期間放置してよい」わけではないという点です。

相続手続を放置すると、相続人の死亡による権利関係の複雑化や、必要書類の取得困難、不動産管理の問題など、さまざまなリスクが生じます。

特に不動産がある場合には、時間の経過とともに問題が大きくなる傾向があります。
さらに、相続登記義務化により、原則として相続が発生してから3年以内に相続登記を申請する義務が生じ、懈怠すると最大10万円の過料を科される可能性があります。

急ぐ必要がないケースであっても、できるだけ早い段階で全体の方針を決めておくことが重要です。

相続手続の優先順位に迷ったら司法書士へご相談ください

相続手続には、それぞれ異なる期限や注意点があります。
相続放棄のように期限が厳格に定められているものもあれば、不動産の相続登記のように放置することで問題が大きくなるものもあります。

そのため、「自分の場合は急ぐべきなのか」「何から手続を始めればよいのか」が分からない場合には、早めに専門家へ相談することをおすすめします。
司法書士であれば、相続関係の整理や相続登記、必要な手続の優先順位の判断まで総合的にサポートすることが可能です。

相続は早く動くほど選択肢が広がります。手続の進め方にお悩みの方は、お気軽にご相談ください。

初回無料のご相談予約はこちらお気軽にご相談ください。
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