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【相続土地国庫帰属法】いらない不動産を国に返還する方法、いつから始まるか、流れ、期間、費用など

2023 5/02
【相続土地国庫帰属法】いらない不動産を国に返還する方法、いつから始まるか、流れ、期間、費用など

法改正により、令和5年(2023年)4月27日から相続土地国庫帰属制度が開始します。
法務省HP「相続土地国庫帰属制度」

この制度により、今までは不可能だった「いらない土地を放棄して、国に帰す」ことが可能になります。

目次

相続土地国庫帰属制度とは

相続により取得した土地について、一定の条件を満たす場合には手数料(管理費)を納付して土地を国に返還する制度です。

今までは不動産を相続したくない場合は、他の財産も含めて相続放棄をするしか方法がありませんでしたが、この制度により管理ができない不要な土地を国に返還することができるようになりました。

相続土地国庫帰属制度を利用できる人

「相続」「遺産分割」「遺贈(相続人に限る)」によって「土地」を相続した個人が利用できます。

相続・遺産分割・遺贈

先代や兄弟姉妹から相続した人が対象です。売買によって取得した人、相続人ではない方から遺言で土地を取得した人は利用できません。

共有者のうち誰かが相続していれば申請できる

AとBが共有する土地で、Aが死亡しXが相続した場合、XとBの2名がこの制度を利用できます。

共有の場合は全員で申請する

土地の一部だけを国庫に帰属させることはできないので、共有者がいる場合は共有者全員で申請します。

対象は土地のみ

相続土地国庫帰属制度は「土地」が対象であるため、建物はこの制度を利用することができません。

建物は経年劣化があり土地よりも管理が難しく、見えない瑕疵等により国が負うリスクが大きくなることが理由のようです。

令和5年4月27日以前に相続で取得した人も対象

相続、遺産分割、遺贈によって取得した土地であれば、この制度の施行前であっても申請することができます。

30年前に相続した土地であっても、条件さえ満たせば申請することができます。

相続土地国庫帰属制度の利用の流れ

1.要件の確認

却下要件に該当しないこと、相続によって取得したことの要件に該当するかを確認します。

2.申請

国庫に返還したい土地を管轄する法務局に対して申請します。

申請手数料として土地1筆につき1万4000円がかかります。

3.実地調査

法務局が人を派遣し、不承認要件に該当する土地かどうかを実際に調査します。

4.承認・不承認通知

調査の結果、却下要件・不承認要件に該当しない(国に返還できる)土地の場合は、国は必ず承認しなければならないとされています。

不承認要件に該当する場合は、不承認通知が送られてきます。

5.負担金の納付

承認通知がきた場合は、通知を受けてから30日以内に負担金を納付します。

6.国庫に帰属

負担金を納付したときに、土地の所有権が国庫に移転します。

相続土地国庫帰属制度の要件

申請するための重要な要件として、「却下要件」と「不承認要件」があります。

「却下要件」

却下要件に該当する土地は申請自体ができないことなり、却下要件は5つあります。

1.建物がある

管理コストが高く、取り壊しや建替え等の問題があるため、建物が存在する土地は申請できません。

2.担保権や用益権が設定されている

抵当権(住宅ローン)や地上権、地役権などが設定されている土地は、申請できません。

返済済みの抵当権がある場合は抹消登記を申請すれば消すことができます。

登記されていない担保権や用益権は国に対抗することができないため、登記されている担保権や用益権があるかどうかを土地の登記事項証明書で確認しましょう。

3.他人の利用が予定されている

公衆用道路、墓地、水路など、他人が使用することが想定される土地や現に他人に使用されている土地は、申請できません。

4.土壌汚染されている

法務省令で定める基準を超える特定有害物質(注)により汚染されている土地は、申請することができません。

5.境界が明らかでない土地・所有権の存否や帰属、範囲について争いがある土地

隣接する土地の所有者との間で所有権の境界が争われている土地や、承認申請者以外にその土地の所有権を主張する者がいる土地など争いがある土地については、承認申請をすることができません。

具体的に、土地の測量図や境界確認書の提出までを求められるものではありませんが、申請者が認識している隣接土地との境界が既設境界標、地物、地形、工作物等の存在により境界点が明らかになるる場合は、それらを申請者が提出する図面に表示します。

境界標などが存在しない場合は、申請者が認識する境界を表示するため、申請者が境界点を表示する目印を設置し、申請者が提出する図面に表示し、申請者が認識している隣接土地との境界を表示する必要があります。

この境界については「筆界」ではなく、「所有権界」で良いとされています。

「所有権界」とは、実際の土地の境界線ではなく、実体的に隣地所有者との合意で決めた境界線(はみだした垣根、工作物など)によって示されている土地の範囲のことを指します。

「不承認要件」

法務局が現地で実地調査をした結果、次の不承認要件に該当する場合は承認されません。

1.一定の勾配・高さの崖があって、かつ、管理に過分な費用・労力がかかる

勾配30度以上+高さ5メートル以上に該当する崖がある土地があり、かつ土砂崩れなどの危険性がある土地は承認されません。

2.地上に、土地の管理・処分を阻害する有体物がある

ボロボロの車や石垣、古い樹木などがあるような土地は、土地の維持管理に余分な費用がかかるだけでなく、有体物の処分にコストがかかると考えられるため、承認されません。

3.地下に、除去が必要な有体物がある

産業廃棄物、屋根瓦などの建築資材、建物の基礎部分やコンクリート片、古い水道管、浄化槽、井戸、大きな石 などがある場合は、その除去に余分な費用がかかるため、承認されません。

4.隣接する土地の所有者等との争訟によらなければ管理・処分ができない

土地の使用が妨げられている状態のことを指し、具体的には、土地の上に不法占拠者がいる、隣の土地の排水が申請する土地に常時流れ混み通常の使用が制限されている、土地から公道にでるための通路が塞がれていたり急勾配な崖になっている等です。

5.その他、通常の管理・処分に当たって過分な費用・労力がかかる

抽象的な表現により不承認要件の受け皿を果たしていますが、法務局の具体例によると、

・土砂崩れを起こしそうな土地
・人が落下するほど地面が陥没している土地
・大量の水が漏出している土地
・スズメバチやヒグマなど、人間に有害な生物が生息している
・適切に管理されていない森林

などがこれに当てはまるとされています。

これらの土地はすべて将来的に何かの危険が生じる可能性が高く、その措置を行う必要がある(=コストがかかる)ため、不承認とされています。

相続土地国庫帰属制度にかかる費用

1.申請時

法務局への申請時に、土地1筆につき1万4000円の手数料がかかります。

2.承認時

国庫への帰属が承認された土地は、管理の負担金として承認通知から30日以内に一定の金額を納めることになります。

宅地、田畑、雑種地など山林以外:基本的に面積にかかわらず20万円。
ただし、市街化区域など一定の要件では面積に応じて算定

山林:面積に応じて算定

とされています。

また、隣接する土地をまとめて申請する場合、隣接する土地がどちらも同じ地目(宅地と宅地、畑と畑など)である場合は、2つの土地を1筆とみなして申請できる特例があります。

この制度により、例えば本来は2筆で負担金が40万円の土地を、1筆とみなして20万にすることができます。

負担金額は、法務省から自動計算シートが公開されています。

相続土地国庫帰属制度で必要な添付書類

1.すべての方が必要な書類

承認申請書
土地の位置及び範囲を明らかにする図面
隣接する土地との境界点を明らかにする写真
土地の形状を明らかにする写真
申請者の印鑑証明書

2.遺贈、相続で土地を取得した相続人が必要な書類

遺言書または遺産分割協議書
亡くなった方の出生から死亡までの戸籍全部事項証明書、除籍謄本又は改製原戸籍謄本
亡くなった方の除かれた住民票又は戸籍の附票
相続人の戸籍一部事項証明書
相続人の住民票又は戸籍の附票
相続人全員の印鑑証明書

相続土地国庫帰属制度の注意点

1.申請後、不承認でも申請手数料は返金されない

国庫帰属の申請後、調査官の現地調査の結果不承認となった場合でも、手数料は返金されません。

土地1筆につき1万4000円かかるので、返還予定の土地が要件を満たすか確認しましょう。

2.承認後30日以内に負担金を納付しないと失効する

承認されたあと、通知を受け取ってから30日以内以内に負担金を納付しないと承認が失効します。

失効した場合、一からやり直し(再度申請し直す)になります。

3.共有者がいるときは全員で申請する

共有者がいるときは、全員が印鑑証明書を添付して申請しなければなりません。

行方不明者、未成年者、後見制度を利用している人がいる場合は複雑になります。

4.現地を調査する

承認できる土地かどうか、調査官が現地を調査します。

前述した不承認の事由に該当しないように、予め現地写真を撮り入念に現地を確認する必要があります。

相続土地国庫帰属制度を専門家に相談するメリット

1.専門的なアドバイスを受けてじっくり検討できる

施行されたばかりの制度は、経験者がいないため承認する法務局側も手探りです。

不動産に長けた司法書士などの専門家であれば、法務局への照会や、法律に基づく専門的な知見から手続の流れや問題点を洗い出し、依頼者をサポートできます。

2.申請書や必要書類を揃えてくれる

専門家が申請書の作成や戸籍などの必要書類を集めるため、不足や不備になることが少なく、依頼者の負担を減らすことができます。

また、地図の作成や境界線を明示する写真の添付も必要になるため、場合によっては専門家が現地に赴いて調査することができます。


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