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後見人は医療行為に同意できる?本人死亡後はどうなる?

2024 4/04
後見人は医療行為に同意できる?本人死亡後はどうなる?

後見人・保佐人・補助人は、判断能力が低下した本人の代わりに法律行為を行う法定代理人です。

後見人の業務を行っていると「医療手術行為の同意」、「身元保証連帯保証」、「死亡後」について相続人、親族、医療介護福祉関係者から誤解されることが多々あります。

後見人の医療手術行為への同意、身元保証、死亡後について少しお話したいと思います。

目次

後見人とは

後見人とは

後見人(保佐人・補助人)とは、判断能力の低下した本人が行えない法律行為を代わりに行う代理人のことです。
後見人は家庭裁判所から選任され、業務を行います。後見人は特別な資格が必要なわけではなく、司法書士や弁護士などの法律専門職のほか、親族がなることができます。

世間一般では後見人というと身の回りから何でもするお世話係的なイメージで使われていますが、法律上の後見人は少し違います。
本来、代理人というのは本人(委任する人)が「自分の意思で」「誰に、何をしてもらうか」を決め、選ばれます。
ところが、成年後見制度を利用する方は、程度の差こそありますがご自身で判断する力が既に低下している状態です。

判断する力が低下している方の代理人として何でも行えるとすると、後見人による権利の濫用に繋がったり、本人が本来であれば問題なく行える行為・権利を必要以上に制限してしまうことになります。

そのため、後見人(保佐人・補助人)は法定代理人ではありますが、代理人として出来る行為は民法にしっかりと規定されており、それ以外の行為は出来ません。

後見人の業務

後見人の業務

後見人の業務は、主に「身上配慮」と「財産管理」の2つです。

身上配慮とは、その名のとおり本人の生活状況や心身の状態に配慮することを指します。
具体的には、本人の心身の状況に応じて生活拠点(自宅、施設、病院)の選定をしたり、必要な介護福祉サービスを入れるなど、生活福祉に関する契約や本人の状態を把握します。

財産管理とは、本人の財産、不動産や預貯金、株式などの保有財産、年金や各種税金の支払いなど、本人の財産を管理する行為を指します。
場合によっては生活保護や給付金の申請、債務整理や破産、相続放棄などを行うこともあります。

後見人は本人に対して善管注意義務があります。つまり、後見人は本人の財産管理や身上監護をするうえで、本人に対して不利益が及ばないよう、自分のこと以上に気をつけて業務に当たらなければならないのです。

成年後見人による医療手術行為の同意

医療行為の同意

身上配慮と財産管理を法定代理人として行う後見人は、実は医療手術行為の同意ができません。
延命措置の判断やインフルエンザワクチン、コロナワクチンなどの接種同意も同じです。

実務上、医療行為の同意書にサインしている後見人もいますが、それは実のところ

・後見人が本人の親族なので、肩書きは後見人だが実態は親族としてサインしている
・話が進まないので、仕方なく善意で(何の法的効果もない)同意書にサインをしている
のどちらかです。

病院側は本人に何かあったとき、いの一番に後見人が医療行為の同意書にサインするよう求めることがありますが、本人が会話可能であれば病院から本人に手術について説明してもらい、同意を得るのが大原則です。
本人が同意しているけど単にサインできないのであれば、後見人が代筆して対応します。

後見人が就任している=本人の判断能力がないから、同意をとっても仕方がない、同意を取る意味がないと考える病院や施設がありますが、本人の意思を尊重し決定する支援を行うのが後見人や周囲の支援者の務めですので、まずは本人に確認するのが筋です。

本人が意思表示できないときは、親族に同意の有無を確認してもらうことになります。
仮に親族がいない、あるいは疎遠で確認ができないときは、それまでの本人の手術に関する考え方、年齢的な問題(手術に耐えうるのか)、完治する手術なのか手術後も完治が望めないのか、リスクがどの程度あるのか、単に延命目的の手術なのか等を、後見人が医師から説明を受けたうえで、本人、医師と一緒に判断することになります。(後見人が独断で医療行為に同意することは基本的にありません)

手術を行う場合のメリットデメリット、行わない場合のメリットデメリットを関係者と議論して、最終的に手術を行うことが本人にとって最善の利益に繋がるのであれば、医師の判断で手術を行うことになります。

医療行為の同意権がない後見人が病院の要した同意書にサインする意味は、病院は誰か(本人、親族、後見人)の医療行為の同意がないと手術が行えず、同意書なしに医療行為をすることで傷害、あるいは医療過誤の際の責任問題になることを避けるため、つまり病院側の都合です。

後見人としては、医療行為の同意によって本人の快復後に本人とトラブルになること(本人は望んでいない治療をされた等)や、他の親族や推定相続人から医療行為の結果(重度の障害が残ったり死亡した場合の後見人による手術同意)によって責められる可能性があり、安易な同意は危険です。
本人がある程度意思表示できるうちに、手術や延命措置などの医療行為、ワクチン接種についての考え方などをしっかり聞いておく準備が必要ですし、連絡の取れる親族がいる場合、後見人が医療行為に同意できないことを理解してもらい、医療行為に関する意見、緊急時には決断してもらうように伝えることが大切です。

身元保証人・連帯保証人

身元保証人・連帯保証人

病院や施設に入るとき、身元保証人や連帯保証人欄に後見人のサインを求められることがありますが、後見人が業務として身元保証や連帯保証人になることはできません。

後見人は親族ではないので身元保証人にはなりませんし、業務として本人の財産管理、身上監護をしているだけなので、後見人が個人的に債務を負担するような連帯保証人には当然なりません。

病院や施設側は、金銭賠償と退所時の身元引き取りさえどうにかしてくれたら良いと考えているので、後見人として本人の財産から支払する旨、仮に退所や退院になるときは次の病院や施設が決まってから退所退院し、介護ヘルパーサービス等で対応できる旨を説明すると、身元保証人や連帯保証人にはサインしなくて済むことも多々あります。

身元保証人や連帯保証人がなしでも対応してくれる病院や施設も多いので、検討中の場所が身元保証人や連帯保証人絶対条件の場合、別の場所を探すことになります。

本人の死亡後

後見人等は、本人の代理人です。

本人が死亡した瞬間に、代理人=後見人等ではなくなります。
つまり、後見人等としての法律上の権限もなくなります。

病院からの緊急連絡に始まり、ご遺体の引き取りや清算などを当たり前のように要請されますが、法律上すでに後見人ではないので、原則としては対応することができません。

ただし、後見人に限り、

成年被後見人(以下「本人」といいます。)が死亡した場合において,必要があるときは,本人の相続人の意思に反することが明らかなときを除き,相続人が相続財産を管理することができるに至るまで,

  1. 相続財産に属する特定の財産の保存に必要な行為
  2. 相続財産に属する債務(弁済期が到来しているものに限る。)の弁済
  3. 本人の死体の火葬又は埋葬に関する契約の締結その他相続財産の保存に必要な行為(上記1,2の行為を除く。)

を行うことができます。

(3)に該当する行為をするには、例えば下の行為は、家庭裁判所の許可が必要です(民法873条の2)。

  1. 本人の死体の火葬又は埋葬に関する契約の締結(葬儀に関する契約は除く。)
  2. 債務弁済のための本人名義の預貯金の払戻し(振込により払い戻す場合を含む。)
  3. 本人が入所施設等に残置していた動産等に関する寄託契約の締結
  4. 電気・ガス・水道の供給契約の解約 など

後見人は、本人の死亡後も一定の行為をできることがありますが、保佐人、補助人には権限がありません。

保佐人、補助人は、本人の死後は「事務管理」や「応急処分義務」に基づいて最低限の行為が出来るにとどまります。

本人が死亡したときの対応方法は、必ず事前に親族に伝えておくか、病院施設と話しておくべきです。

元後見人が法的な権限なく安易な同意や手続で相続人等とトラブルになることもあり得ます。

元後見人として、本人のためにできる限りのことはしたいですが、出来ないことは出来ないと線引きしないと無用なトラブルや対応に追われかねません。

事前に医療、介護関係者、本人と情報共有

医療行為、身元保証、死後のことなどは、ある日突然やってきます。

後見人として大切なことは、これらのことを事前に医療関係者、介護福祉関係者と連携して情報共有をしておくことです。

また、出来るだけ本人からこれらの希望を事前に何度もヒアリングし、本人が何を望んでいるのかをある程度明確にしておくことも大切です。

ご相談フォームはこちら初回相談料無料ですのでお気軽にご相談ください。

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