司法書士と弁護士の違いは何?共通点は?

司法書士と弁護士はどちらも法律の専門家だということはご存知の方も多いかと思います。では、どういう時にどちらに相談すべきかご存知でしょうか? 弁護士はメディアなどにも露出し活躍しているため、だいたいのイメージは付くかと思いますが、司法書士との違いはあまりご存じないかと思います。 裁判=弁護士のイメージが強いと思いますが、実は司法書士も弁護士と同じように裁判の手続きをすることもあります。
今回は司法書士と弁護士の違いを、①業務内容、よく重なる業務の代表として②相続、③過払金の3つに分けて解説します。

1.司法書士・弁護士とは?

司法書士 弁護士
資格 法律系の国家資格 法律系の国家資格
合格難度 約2~3% 約20%
主な業務 不動産登記、商業登記、裁判所類作成 紛争トラブルの解決、訴訟、法務顧問など
書類提出先 法務局、裁判所 裁判所

以上が司法書士と弁護士についての簡単な説明ですが、次にいくつか補足します。
弁護士の合格率は約20%とありますが、弁護士・裁判官・検察官を目指す場合、まず司法試験の受験資格を得るために法科大学院の課程を修了しなければいけません。 そして、近年では法科大学院の修了は司法試験そのものよりも難しいとまで言われるほどハードルの高いものになっていますので、%だけで難度を比較できません。 さらに言うと、司法書士試験より法律の知識がいりますので、個人的には司法試験の方が圧倒的に難しいと思います。
他には、弁護士は裁判所への書類提出が主と記載していますが、それ以外にも顧問先の契約書の作成や法務監査、金銭トラブルの債権債務者、離婚や交通事故における相手方との交渉など多岐にわたるので、確実に提出しているだろう裁判所のみを記載しています。


2.司法書士と弁護士の違い~相続~

相続の手続き 司法書士 弁護士
遺言証書の作成
相続人の調査・戸籍集め
遺産分割協議書の作成
遺産分割協議についての助言・相続人との交渉 ×
不動産の名義変更 ×
相続放棄の手続き
家庭裁判所へ調停・審判申立て
相続税の申告 ×
(税理士のみ)
×
(税理士のみ)

相続の事件において、司法書士と弁護士の大きな違いは、「代理人として相続人と分割協議の交渉ができるかどうか」です。
司法書士と異なり、弁護士は自ら依頼者の代理人となって遺産分割協議の話し合いに参加したり、交渉することができます。これは、紛争になる可能性が高い相続の相談でとても大切な要素です。 ですので、専門家を介入させて話し合いを有利に進めたいときや、遺産分割協議がまとまらず紛争になるおそれがあるときは、直接交渉可能な弁護士への相談をオススメします。
反対に、司法書士は弁護士のように紛争性の高い相続の事件で自ら交渉することは禁じられていますが、そうでない時は滞りなく手続きを進めることができますので、紛争になる可能性がないのであれば、費用的に安価な司法書士への依頼をオススメします。
また、弁護士の不動産の名義変更欄を×にしましたが、一応代理人として業務を行うことは可能のようです。しかし実際は、登記業務は司法書士の独占業務になっていますので、弁護士が慣れない登記を受任しミスする危険性を考えて、司法書士に依頼することがほとんどです。
したがって、不動産の名義変更は弁護士であっても出来ないことがほとんどで、司法書士が業務を行うことになります。


3.司法書士と弁護士の違い~過払いなどの裁判~

過払いなどの裁判 司法書士 弁護士
受任可能な金額 元本140万円以内 無制限
代理可能な裁判所 簡易裁判所 家庭、簡易、地方、高等、最高
裁判所への書類提出
個人再生・自己破産 ×

司法書士と弁護士の裁判手続きにおける違いは以上のとおりです。
司法書士も弁護士と同じく過払金請求や未払い賃料、建物明け渡し請求などの訴訟の代理人となることができますが、その訴額が140万円以内で簡易裁判所の管轄のみという制限がついています。
したがって、例えば債権者1社の金額が140万円を越える過払い請求や離婚訴訟、高額な慰謝料請求などは弁護士しか代理することができません。 また、司法書士はどの裁判所に対しても提出書類の作成を代理することはできますが、代理できるのは簡易裁判所だけなので、個人再生や自己破産の手続きを代理人として行うことはできず、依頼された場合はあくまでサポートという形になります。


4.まとめ

これまで説明した司法書士と弁護士の違いを簡単にまとめると、次のようになります。

相談内容 相談先
紛争性の低い(ない)相続
ex)相続人が1人、遺言がある等
司法書士
相続で不動産の名義変更をしたい 司法書士
紛争性の低い(ない)相続で
なるべく費用を抑えたい
司法書士
紛争性の高い相続
ex)相続人の仲が悪い、協議がまとまらない
弁護士
離婚、慰謝料請求 弁護士
個人再生、自己破産 弁護士

ただしこれらはあくまで当事務所の判断であり、相談先の目安ですので、司法書士であれ弁護士であれ、まずはご依頼者様が相談しやすい専門家を頼ることが大切です。
司法書士や弁護士をはじめ、各専門家はそれぞれの得意・専門分野を熟知していますので、まずは相談しやすい専門家にあたり、その後その相談内容に応じた専門家を紹介してもらうのが良いでしょう。