MENU

電話・メールでご相談
メール24時間受付中

お電話はこちらから WEBからのご相談はこちら

管理不全土地建物管理人制度とは

2023 11/13
管理不全土地建物管理人制度とは

管理不全土地管理制度と管理不全建物管理制度は令和5年(2023年)4月1日から施行された法律による制度で、主に管理の不適切な土地や建物について裁判所が選任した管理人が適切に管理することを目的としています。

管理不全土地管理制度、建物管理制度の概要、制度が利用できる土地建物、申立人、注意点などを解説します。

目次

管理不全土地・建物管理制度とは

管理不全土地管理制度、管理不全建物管理制度とは、令和5年4月1日から施行された新しい法律で、所有者による適切な管理がなされていない土地や建物について、裁判所が選任した管理人が所有者に代わって管理できる制度です。

例えば、土地に設置されたブロック塀が道に倒壊する危険がある、樹木が腐敗して倒木の恐れがある、建物が老朽化しており倒壊の恐れがある、敷地内がゴミだらけで周辺の住環境が悪化しているなど、適切な管理がなされないことで他人の権利が侵害される恐れがある土地建物が該当します。

管理不全土地建物管理制度を利用(申請)できる人

管理不全土地管理制度・管理不全建物管理制度は利害関係人です。

利害関係の有無は、申し立ての実情にあわせて裁判所が個別に判断することになりますが、先ほどの例でいうと、ブロック塀・樹木・建物などが倒壊すると被害を受ける隣地の人や、ゴミの放置により悪臭や害虫の被害が現に発生している近隣住民が利害関係人に該当します。

管理不全土地建物管理制度利用のための要件

管理不全土地管理制度・管理不全建物管理制度を利用するための要件は大きく次の3点です。

(1)所有者による土地や建物の管理が不適当である

当然ながら本来は所有者が自分の土地や建物を管理しなければならない立場ですが、様々な理由によって管理が適切に行われていないことがあります。

裁判所が管理人を選任するためには、所有者による土地建物が社会通念上不適切であることが必要です。

(2)他人の権利又は法律上保護される利益が侵害され、または侵害されるおそれがある

不適切な管理方法によって、他人の権利が侵害されたり、その可能性が高い場合に制度を利用できます。

具体的には、先ほどの例のように土地に設置されたブロック塀が道に倒壊する危険がある、樹木が腐敗して倒木の恐れがある、建物が老朽化しており倒壊の恐れがある、敷地内がゴミだらけで周辺の住環境が悪化しているなど、周辺あるいは他人の権利が侵害されてしまう危険性が高い、あるいは現に侵害されていることが必要です。

単に管理が少し雑である程度で危険性がない場合には利用できません。

(3)管理状況に照らし、管理人による管理の必要性が認められる

管理の必要性とは、(2)で説明した管理不全状態を改善しなければ、他人の権利が侵害され(続け)る場合のことを指します。

基本的には管理不全によって他人の権利が侵害され、または侵害されるおそれがあるときは必要性があると考えられるでしょう。

管理不全土地建物管理制度はどこに申し立てる?

管理不全土地建物管理制度はどこに手続きをするかというと、不動産の所在地を管轄する地方裁判所に対して申し立てることになります。

管理不全土地建物管理制度を利用する効果

管理不全土地建物管理制度を利用するとどうなるのかというと、裁判所が管理不全土地(建物)管理人を選任し、管理不全土地(建物)管理人が申し立ての対象となった土地や建物を管理します。

管理の対象となる財産

管理不全土地(建物)管理人は、申し立ての対象となった土地や建物だけではなく、その土地建物にある樹木、ブロック塀、灯篭などの付合物、動産(ゴミ、自転車)、それらを処分したことで得た金銭も管理することになります。

管理不全土地(建物)管理人ができること

(1)管理対象財産の保存・管理・利用・改良行為

土地や建物だけではなく、その土地建物にある樹木、ブロック塀、灯篭などの付合物、動産(ゴミ、自転車)などの適切な管理、保存、あるいは利用などができます。

具体的には、ゴミの処分、害虫の駆除、雑草の除草、建物やブロック塀などの補修などです。

(2)処分行為

土地の売却、倒壊のおそれがある建物の取り壊しなど、管理財産そのものを処分したり性質を変えてしまうほどの変更を加える場合は、裁判所の許可と所有者の同意が必要です。

管理不全土地建物管理制度はその名のとおり、管理がなされていない土地や建物の「管理」を行うことが前提であり、その管理行為は裁判所の許可を要することなく行えますが、処分行為は本来の管理財産そのものの消滅に繋がるため、裁判所の許可(正当性)と所有者の同意を要求しています。

管理不全土地(建物)管理制度申立の流れ

(1)必要書類の収集、申立書の作成

・申立書(正本1通、副本(所有者分及び管理人分)
申立書の記載については、東京地方裁判所のHPにひな型があります。

あわせて読みたい
共有に関する事件(非訟事件手続法第三編第一章)、土地等の管理に関する事件(非訟事件手続法第三編第二章...

・申立書副本(所有者と管理人分)
申立書の副本(正本のコピー)は所有者が見ることになるため、具体的な侵害や管理不全の内容の記載については、書き方を考慮しましょう。

・資格証明書(法人が当事者であるとき)
所有者や利害関係人が法人であるときは、法人の履歴事項全部証明書を提出します。
履歴事項全部証明書は、最寄りの法務局の窓口で発行できます。

・所有者の土地又は建物に係る登記事項証明書
管理の対象となる土地や建物の登記事項証明書を提出します。
登記事項証明書は、最寄りの法務局の窓口で発行できます。

・建物の敷地利用権を証明する資料(該当する場合)
建物の賃借人が土地について申し立てる場合などは、自分が建物を利用する権利があることを証明する賃貸借契約書の写しなどを提出します。

・不動産登記法14条1項の地図又は同条4項の地図に準ずる図面の写し
不動産登記法14条1項の地図は法務局に備え付けられており、土地の形状や位置、距離関係についてかなりの正確さをもって記録されています。
地図に準ずる図面とは、明治時代の税徴収のために作成されたもので、不動産登記法第14条1項の地図と異なり正確さには欠けます。
正確には後者を「公図」と呼びますが、現代では前者を公図と呼ぶことがほとんどです。

・土地(建物)の所在地に至るまでの通常の経路及び方法(土地(建物)の住居表示を記載する。)を記載した図面
周辺の地理関係や、土地建物に至るまでの簡易な図面を添付します。これは手書きやソフトを用いて作成します。

・土地(建物)の現況調査報告書又は評価書(保有する場合)
土地や建物の現状がどのようになっているのか、調査時点の詳細な報告書を文章で提出します。
具体的な管理不全の内容、他人の権利を侵害する(しうる)情報を記載します。

・(登記されていない場合)土地についての不動産登記令2条2号に規定する土地所在図及び同条3号に規定する地積測量図
土地に関してはほぼすべての土地が登記されていますが、ごくまれに登記されていない(未登記)の土地が存在します。
登記がされている土地については土地の登記事項証明書を提出しますが、登記されていない土地の場合は、土地に関する所在図と、地積測量図を提出します。
登記されていない土地の所在図と地積測量図は法務局で取得することができないため、土地家屋調査士に依頼して作成してもらうことになります。

・(登記されていない場合)建物についての不動産登記令2条5号に規定する建物図面及び同条6号に規定する各階平面図
建て替えや修繕、増改築などを繰り返したり、かなり築年数の古い建物については、登記されていない(未登記)の建物が数多く存在します。
登記がされている建物については土地の登記事項証明書を提出しますが、登記されていない建物の場合は、建物に関する図面と、各界平面図を提出します。
これらは土地家屋調査士に依頼して作成してもらうことになります。

・所有者の土地建物について、適切な管理が必要な状況にあることを裏付ける資料
管理が不全であり、適切な管理を要する状況であることを裏付けるために、写真を提出します。
写真は台紙に貼り、撮影日時と撮影者を記載します。より明確にするために、撮影位置を変えて何枚もの写真を提出することになります。

・ごみの除去や雑草の伐採等、管理不全土地・建物を適切に管理するために必要となる費用に関する資料
ごみの除去、管理不全の土地建物を適切に管理するために発生しうる費用に関しての資料を提出します。例えば、残置物の撤去業者に見積もりをしてもらう方法や、修繕費用であれば工務店などの見積書、新たに購入しなければならない物(窓ガラス、ブロック、電気など)があればそのパンフレットや価格のわかる資料です。

(2)裁判所への申立

管理不全土地建物の不動産所在地を管轄する地方裁判所に対して提出して申し立てます。

提出方法は裁判所に直接持参する方法のほか、郵送でも可能です。

このとき、管理不全土地建物の管理にかかるであろう予納金を納付することになります。

(3)所有者の陳述の聴取

所有者不明土地建物管理制度と異なり、管理不全土地建物管理制度は所有者自体は把握しているため、原則として所有者に対して陳述する機会を与えます。

しかし、所有者の陳述を設けていると管理不全土地建物の管理を実現できない恐れがあるときは、例外として所有者の陳述をする機会を経ずに申立て手続が進みます。

(4)管理命令

申し立て内容が認められ管理の必要性があると判断されると、裁判所から管理命令が発令されます。

(5)管理人による管理

管理命令によって管理不全土地(建物)管理人が選任され、以降は管理人が対象物件を管理します。

(6)管理の終了・管理命令の取消

管理人が管理不全土地建物を管理する必要性がなくなったときは、その管理が終了され、管理命令が取り消されます。
予納金から管理人への報酬、管理に要した費用が控除され、なお予納金が余った時は返還されます。

管理不全土地(建物)管理制度申立にかかる費用

(1)裁判所への申立費用

裁判所への申立費用として、不動産1筆ごとに1000円の収入印紙がかかるほか、郵便切手6000円分がかかります。
郵便切手は内訳が決まっており、東京地方裁判所HPによると500円×8、100円×10、84円 ×5、50円×4、20円×10、10円×10、5円×10、2円×10、 1円×10とされています。

(2)予納金

管理人への報酬、及び管理にかかる費用を申立人が負担することになるため、それらの費用を前もって裁判所に納めることになります。
具体的な金額は個々の事例によって異なり、申立て時に裁判所から説明を受けることになります。

(3)専門家への申立報酬

管理不全土地(建物)管理命令申立てを司法書士または弁護士に依頼する場合、専門家への申立報酬が発生します。
申立報酬については個別の事案によって変わりますので、司法書士または弁護士に相談しましょう。

管理不全土地(建物)管理制度の注意点

所有者の意見を聴取する

管理不全土地建物管理命令申立ては、原則として所有者からの意見を聴取します。

例えば対象の不動産の所有者が遠方におり、管理が不全であるにもかかわらず反対しているようなケースでは、裁判所はその管理の必要性を勘案して命令を発することがありますが、申立人は所有者の近隣地の方であることがほとんどですので、所有者との関係性や今後のことを考慮して申立て書類を作成するように注意することが推奨されます。

所有者が実際に建物に住んでいる場合

管理不全建物に所有者が実際に住んでいる、例えばゴミをため込んでいる家に所有者が住んでおり、近隣住民とトラブルになっているケースなどでは、申し立てを行ったとしても所有者の反発や妨害により管理人が対象不動産の管理を現実的に実行することができず、空振りに終わってしまうことがあります。

所有者からの妨害や抵抗により管理人が現実に管理をすることができない可能性があるケースは、民事訴訟等による強制執行で対応することが望ましいと考えられています。

所有者が分からない場合

所有者の所在が分からないときは、所有者不明土地(建物)管理制度を活用すべきことになります。

ただし、特措法によって、例えば所有者が分からない土地や建物の管理不全によって土砂崩れや洪水など災害の危険性があるときは、市区町村長が申し立てを行うことができるとされています。

マンション(区分建物)には適用されない

区分所有建物については管理不全建物管理制度が適用されないため(改正区分所有法6条4項)、マンションなどの区分所有建物の専有部分及び共用部分について、管理不全建物管理命令申立てをすることができません。
対象となるのは土地や戸建てということになります。

所有者不明土地建物管理制度との違い

所有者不明土地(建物)管理制度との主な相違点は次のとおりです。

管理不全土地(建物)管理所有者不明土地(建物)管理
申立人利害関係人利害関係人
要件管理不全土地建物によって他人に権利が侵害され、またはその恐れがある調査を尽くしても所有者を知ることができない
申立先不動産を管轄する地方裁判所不動産を管轄する地方裁判所
公告の有無なしあり
所有者への聴取原則あり 例外目的を達することができないときはなしなし
権限の専属(管理人が当事者となって訴訟等ができるか)×(あくまで所有者が原告被告)〇(管理人が原告被告になれる)
登記の有無なしあり

管理不全土地建物を司法書士に相談するメリット

不動産に関してのプロ

管理不全土地建物は不動産登記に大きく関連する手続であり、その専門家は司法書士か弁護士です。
ただし、弁護士は訴訟等、相手方との交渉に長ける一方で、不動産登記に関しては知識がない方がほとんどです。
司法書士は不動産登記の専門家であり、複雑な権利関係の土地建物について問題なく対応できます。

相続・後見が発生しても対応できる

司法書士は相続に精通しているため、仮に申し立ての途中で所有者や申立人について相続が発生しても素早く対応することができます。

また、管理不全の原因が所有者の判断能力低下によるものだとすると、管理不全土地建物の解消には所有者に後見制度を活用してもらう方法がもっとも効果的です。
司法書士は後見制度についても精通しているため、ご相談のケースに応じて臨機応変に対応できます。

登記、裁判所申立て書類に強い

管理不全土地建物管理命令申立ては司法書士か弁護士に相談することになりますが、そのどちらにも強いと間違いなく断言できるのは司法書士のみです。
弁護士は登記手続に詳しくない方が多いため、誤った資料や証拠を提出したり、権利関係を誤認してしまうこともあります。

司法書士であれば登記手続から申立てまで正確に行いますので安心してご相談いただけます。

この記事が気に入ったら
いいねしてね!

目次
閉じる