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保佐人とは?業務内容、後見や補助との違い

2024 3/03
保佐人とは?業務内容、後見や補助との違い

認知症などで判断能力が低下した方の財産と権利を守るための方法として、成年後見制度が存在します。

この成年後見制度を利用すると、ご本人には法律上定められた代理人が選任され、法定代理人がご本人の財産と権利を守ることになります。

成年後見制度には、ご本人の判断能力によって「後見・保佐・補助」という3つの類型に分類されますが、それぞれに代理できる範囲や業務の注意点が異なります。

ここでは保佐人がどのような場合に選任されるのか、保佐人の業務、保佐人が本人に代わって代理できる行為の範囲や報酬について説明します。

目次

保佐人とは?

保佐人とは、ご本人の法定代理人として法律行為をし、ご本人の権利、財産を守り、身上監護に当たる人のことを指します。

保佐人は、家庭裁判所に対して保佐開始の審判申し立てを行い、審判が下りた場合に選任されます。

保佐人に特別な資格が必要なわけではなく、司法書士や弁護士などの専門家のほか、親族がなることもあります。

保佐人が選任されるのはどんなケース?

保佐人が選任されるのは、ご本人の判断能力が低下しており、ご本人が「精神上の障害により、事理を弁識する能力が著しく不十分」な状態にある場合です。

ご本人の判断能力の有無は司法書士、弁護士などの法律専門職やご本人の周りにいる親族が判断するわけではなく、医師が後見の診断テストによって判断します。

判断能力の程度を測るチェックテストにおいて「支援を受けなければ、契約等の意味、内容を自ら理解し、判断することができない」と診断された場合に、「保佐相当」として保佐人選任の申立をすることができます。

保佐人ができる業務

保佐人は「代理権」「同意権」「取消権」を有しており、ご本人のために契約などの法律行為を代理したり、本人が行った法律行為の取り消しなどを行うことができますが、ご本人の意思決定、自己決定権を尊重するために、これらの権利の行使には一定の制限が設けられています。

保佐人が有する代理権の範囲

保佐人が法律上代理できる行為は限定的に解釈されており、裁判所によって認められた代理権についてのみ行使することができます。

具体的に、保佐人が有する代理権の範囲は民法第13条に規定された次のものの中で裁判所が特に代理が必要と認めた行為に限られます。

①元本を領収し、または利用すること
②借財または保証をすること
③不動産その他重要な財産の権利の得喪を目的とする行為をすること
④訴訟行為をすること
⑤贈与、和解または仲裁合意をすること
⑥相続の承認、放棄または遺産分割をすること
⑦贈与の申し込みを拒絶し、遺贈を放棄し、負担付贈与の申込を承諾し、または負担付遺贈を承諾すること
⑧新築、改築、増築または大修繕をすること
⑨短期賃貸借に定める期間を超える賃貸借契約をすること
⑩前各号に掲げる行為を制限行為能力者(未成年者,成年被後見人,被保佐人及び第17条1項の審判を受けた被補助人をいう。)の法定代理人としてすること

保佐人の同意を要する行為

保佐人は上述した行為について、同意権を有しています。

ご本人が保佐人の同意を得ずに行った行為は、保佐人が取り消すことができます。

保佐人の同意を要することにより、本人が知らず知らずのうちに多額の物品を購入してしまったり、自己に不利益となる行為をしてしまうことを事後的に取り消し、防ぐことができます。

ただし、「日用品の購入その他日常生活に関する行為」について同意権と取消権を認めてしまうと、本人がスーパーでの買い物1つさえ満足に出来なくなってしまうため、日用品の購入その他日常生活に関する行為に関しては保佐人の同意権や取消権は認められていません。

保佐人の報酬はどのように決まる?

保佐人は裁判所から選任され業務として本人の支援を行うため、一定の報酬を得ることができます。

保佐人の報酬は家庭裁判所の決定により定められるため、各保佐人が自由に報酬を決定することはできません。

保佐人は1年毎に裁判所に対し本人の収支や生活状況に関する定期報告を行いますが、その定期報告と同時に報酬付与申立をすることで、家庭裁判所から報酬付与の審判がなされます。

報酬額は本人の資力、保佐人が行った業務の内容によって決定され、一般的には月換算で2~3万円となることが多いでしょう。しかし、例えば本人が相続人となる相続手続を行った場合や本人所有の不動産を売却した場合など、通常の保佐人業務を超える業務を行った場合には、付加報酬が認められることがあります。

後見人・補助人との違いは?

保佐人は後見人、補助人と同じく後見制度の一類型であり、法定代理人です。

保佐人と後見人、補助人の違いは、大きく分けると「本人の判断能力の程度」と「法定代理人の権限の強さ」があります。

本人の判断能力が低下しているほど法定代理人の権限は強くなります。

本人の判断能力が低い順に「後見」「保佐」「補助」に類型され、後見人は日常生活に関する行為を除いてほぼ全ての法律行為を代理することができます。

補助人は本人の判断能力がまだある程度残っている状態ですので、裁判所から特に認められた一定の行為についてのみ、代理権や同意権、取消権が与えられます。

保佐人は後見人と補助人の中間に分類される法定代理人であり、「本人の判断能力が低下しているとは言えまだ在宅生活は出来ている方」や、「特定の法律行為や行動についてのみ記憶がかなり鮮明である(例えば金銭の話になるとかなり記憶が鮮明で警戒心が強い)」など、本人と法定代理人の権限の調整が最も難しい立場であると言えます。

後見人保佐人補助人
本人の判断能力 (事理弁識能力)欠く著しく不十分不十分
診断書支援を受けても、契約等の意味・内容を自ら理解し、判断することができない。支援を受けなければ、契約等の意味、内容を自ら理解し、判断することができない支援を受けなければ,契約等の意味・内容を自ら理解し、判断することが難しい場合がある。
長谷川式10点以下11~18点15~22点
MMSE14点以下15~17点17~23点
代理権ほぼ全ての法律行為裁判所に許可された一部の行為のみ裁判所に許可された一部の行為のみ
同意権×法律上規定された行為のみ裁判所に許可された一部の行為のみ
取消権日用品の購入その他日常生活に関する行為を除くほぼ全ての行為同意なくされた行為同意なくされた行為
医療行為の同意×××
身元保証人への就任×××

保佐人を選任する方法

保佐人を選任する方法は、家庭裁判所に対して「保佐開始の申立て」を行うことです。

保佐に限らず後見、補助にも共通していますが、申立の前提として医師の診断書によって「保佐開始相当」と診断されていることが必須です。

申立人

申立人になれるのは、本人、配偶者、4親等内の親族、市区町村長、検察官です。

本人以外の者が申し立てる場合、本人が保佐開始の申立て、代理権付与の申立について同意していることが必要です。

保佐開始の手続は司法書士に相談

保佐開始の申立ては、医師の診断書を受け取るところから保佐人が就任するまで半年ほどかかる手続です。

申立には戸籍や親族関係図、事情説明書や収支予定表、財産目録など、作成しなければならない書類が大量にあるだけでなく、保佐人が就任したあとは保佐人が定期的に裁判所に報告し、かつ本人の財産を適切に管理しなければなりません。

司法書士であれば裁判所への申立書類作成から、実際に保佐人に就任することもでき、本人やご家族の方を心身共にサポートすることが可能です。

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