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相続放棄が無効になる場合とは?

2024 2/25
相続放棄が無効になる場合とは?

相続放棄とは、亡くなられた方に関する債権債務、不動産、預貯金、株式など、相続財産と呼ばれるすべての財産を放棄し、法律上はじめから相続人ではなかったことになる法的手続です。

相続放棄は、プラスの財産だけでなくマイナスの財産すべてを放棄することができ、さらに「相続人」の地位からも離脱することができるため、主に多額の借金を抱えている方が亡くなった場合や、相続人同士の争いに巻き込まれたくない方が利用することの多い手続です。

目次

相続放棄が無効になる場合

相続放棄は、家庭裁判所に対して書類を提出し(申立て)て行います。

一度相続放棄をすると撤回することができません。

しかし、例外的に一定の条件に該当する場合には相続放棄が無効になることがあります。

(1)相続放棄の要件を満たしていなかった

相続放棄は法律上の相続人から外れ、すべての債権債務を承継しないことになるため、非常に厳格な手続要件があります。

具体的には、「自己のために相続が開始したことを知ったときから3か月以内」の熟慮期間と呼ばれる期間内に、裁判所に対して申述を行うことになっています。

相続放棄の熟慮期間を経過してしまうと、自動的にすべての財産を承継する「単純承認」が成立します。

相続放棄の申述をしたものの上記の熟慮期間を超えてしまっている場合には、相続放棄の要件を満たしていないために無効になることがあります。

(2)相続放棄前に、相続財産の一部または全部を処分した

相続放棄は相続人の地位から外れる法的手続であり、亡くなった方(被相続人)とは法律上他人になりますので、当然その方の財産を勝手に処分したり使うことはできないはずです。

しかし、相続放棄をする前に亡くなった方の相続財産(預貯金や現金、動産)を処分した場合には、相続人として財産を承継する意思表示をしたもの(法定単純承認)とみなされ、相続放棄を行ったとしても後から無効になる可能性があります。

具体的にどの程度の相続財産の処分が法定単純承認に該当するかは個々のケースにより判断されると思いますが、典型的な例では次のような行為が処分行為に該当すると考えられます。

・不動産の相続登記を行った
・預貯金を解約してお金を受け取った
・自動車の名義変更をした
・不動産を解約して敷金の返金を受けた
・家の中の残置物や遺品を処分した

一方で、社会通念上相当と認められる範囲での葬儀費用を支出することや、金銭的価値がほとんどない物の形見分け、相続財産の処分には該当しないとされています。

(3)相続放棄後に、私に相続財産を消費し、隠匿し、または悪意で財産目録にこれを記載しなかったとき

相続放棄をした後であっても、相続財産を私に消費したり、隠匿した場合には相続放棄が無効となり法定単純承認とみなされます。

相続放棄をするほとんどの場合は、債権者が存在します。そして、相続放棄後の「私に消費」とは、相続の債権者にとって不利益になる(債権の回収ができなくなったりする)ことを認識して処分してしまう行為を指します。

また、「悪意で相続財産目録にこれを記載しない」とは、相続放棄と比較される制度である相続の限定承認手続において作成する財産目録の中に、わざと記載しない行為を指します。

相続放棄の取り消し

相続放棄は一度行うと撤回することができません。
ただし、撤回とは別に一定の条件では相続放棄を「取り消す」ことができる場合があります。

(1)詐欺脅迫によって相続放棄をさせられた

第三者や次順位の相続人の詐欺や脅迫によって相続放棄をさせられた場合、追認できるとき(詐欺や脅迫の事実に気づき、自らの意思で認めたり否定する)から6か月以内または相続放棄から10年以内であれば、相続放棄の取り消しをすることができます。

(2)錯誤によって相続放棄をした

借金がたくさんあると思い込んでおり相続放棄をしたものの、実は借金が存在しなかった場合や、多額のプラスの財産を把握できておらず相続放棄した場合など、相続放棄をしたこと自体が錯誤(間違い)であり、重大な過失がない場合には、相続放棄自体の取り消しができる可能性があります。

錯誤による取り消しの場合も、詐欺脅迫と同様に追認できるとき(錯誤の事実に気づき、自らの意思で認めたり否定する)から6か月以内または相続放棄から10年以内に行うことになります。

(3)認知症の方が分からずに相続放棄をした

認知症などで判断能力が低下している方が、事情や法律効果をよく理解せずに相続放棄してしまった場合、後見人がいれば成年後見人が取り消すことができます。

相続放棄が無効にならない場合

相続放棄をした前後で財産を処分しても相続放棄が無効にならないものもあります。

具体的には、次のようなケースです。

・一般的に許容される範囲での葬儀費用の支出
・遺骨、墓などの祭祀財産の承継
・金銭的価値がほとんどない形見分け
・受取人が相続人に指定されている生命保険金
・健康保険加入者に対して市区町村から喪主に支給される葬祭費
・未支給年金の受け取り
・相続財産ではなく自己の金銭からの債務の弁済
・施設、医療機関などで死亡した人の遺品をやむを得ず受け取る行為
・靴下、下着など価値のない少量の財産の処分

相続放棄の無効を主張された場合はどうなる?

法定相続人全員が相続放棄をした場合、相続人が存在しないものとして扱われ、最終的には相続財産は国庫に帰属します。債権者からすると、相続放棄をされてしまうと自己の債権を回収できない恐れがあるため、相続放棄に対して異議を申し立てることがあります。

相続放棄の無効を主張されてしまった場合は、自己が適切な手続きによって相続放棄を行い、かつ要件を満たしていることを主張しますが、ほとんどのケースでは訴訟によって決着をつけることになります。

相続放棄の無効を主張された場合、相続放棄の有効性を巡ってこちらに有利な物的証拠や状況証拠、証人などを集めていくことが重要ですので、必ず弁護士に相談するようにしましょう。

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