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相続で親族間の紛争を避けるための対策と対処法

2024 2/13
相続で親族間の紛争を避けるための対策と対処法

親族間の相続における争いは、それまでの関係を一変させ、今後の親族間の関係をも悪化させてしまう可能性があります。相続人同士の争いは、ほぼすべてが感情的なものか金銭的なものを原因として起こりますが、適切な対策と事前の準備を行うことで、これらのトラブルを大幅に減少させることが可能です。

この記事では、親族間での相続における争いを避けるための具体的な対策と実践的なアドバイスをご紹介します。

目次

相続問題におけるポイントとそれを避ける戦略

相続問題におけるポイントとそれを避ける戦略


増加傾向にある相続関連のトラブル

相続に関わる調停や審判の件数は、最高裁判所による司法統計からも明らかなように、近年増加傾向にあります。令和3年度には、1万3,447件の調停や審判が行われており、これは10年前の1万793件に比べて約1.2倍、さらに20年前の9,004件と比べては約1.5倍に増加しています。

相続に関する調停、審判の件数が増加傾向にある理由として、①インターネットから相続人がそれぞれ「相続分」や「遺留分」などの相続に関する情報を入手しやすくなり、権利意識が高まっていること、②同じくインターネットなどから弁護士や司法書士などの専門家にアクセスすることが容易になり、専門家介入のもと手続を行うことが増えたこと、③相続税法の改正により相続税が生じるケースが増え、金銭的な問題が発生しやすいことが考えられます。

いずれにしても、相続における争いが社会的にも深刻な問題であることを示しており、適切な予防策と対応がより一層求められているといえるでしょう。
裁判所|司法統計情報 年報

相続問題とその解決策

相続問題とその解決策

相続手続において発生しやすい代表的な問題と、その対応策、解決策を列挙しました。
以下に説明する内容に該当している可能性がある方は、弁護士や司法書士の専門家に速やかに相談することで、リスクを回避できることもあります。

相続人同士の関係が悪化している

相続でもっともトラブルになりやすい例は「相続人同士の不和」です。
多くの相続手続では、相続人全員が遺産の分割方法を話し合う「遺産分割協議」を行いますが、相続人が疎遠であったり、関係性が悪い状態であれば、たちまち遺産分割協議が困難になります。
相続人の全員が合意しないかぎり遺産分割協議は成立しないため、利害の対立する相続人同士が違いに妥協や譲歩することが不可欠ですが、残念ながら相続人の不和により相続が決着しないケースは珍しくありません。

事前対策

相続人同士がもめている場合にできる事前対策は「遺言書作成」です。
遺言書を作成すれば、相続人同士の話し合いを省略することができます。

「遺留分」という問題は生じますが、これは金銭的な解決策ですので、例えば不動産を誰が相続するかで話し合いがまとまらないと言った問題は解決できます。

事後対策

相続人同士がもめないことが一番ですが、既にもめてしまっているケースでは、その紛争をどうやって解決するかに焦点をおいた方が建設的です。対立する相続人がそれぞれ何を望んでいるのかをまずは確認し、どこかに歩み寄れる点があるかを探るべきです。
仮にその話し合いが難しい場合は、無理に相続人同士が協議しようとせず、弁護士に依頼し現実的な視点で遺産分割協議の落とし所を見つける方が良いでしょう。

財産の独占を試みる相続人がいる

かつては長男が財産を全て継ぐという家督相続が存在していましたが、相続法改正により現在は法定相続分に従って公平に分割されるようになってきました。それでも、一部の相続人(長男や長年面倒をみた親族)が全財産を継ぐと信じ込んでいるケースは見受けられます。

事前対策

例えば、父母と同居する長男が、父母の財産から自分の生活費や子ども(父母からみて孫)の教育資金などを引き出し、使用しているケースがあります。
これらのケースでは、父母が自分から進んで行っていることもありますが、父母の判断能力が低下していることを利用して使い込んでいることもあります。

他の相続人は父母の判断能力が低下していないかこまめに確認し、父母が本心で長男家族に支出しているのかをチェックするようにしましょう。仮に父母の判断能力低下の疑いがある場合には、後見人制度を利用して父母の財産を守るようにしましょう。

事後対策

相続が発生すると、不動産や動産など、物理的に分割して共有することができない財産の場合は相続人の一人が代表して管理することもありますが、複数の相続人で共有する相続財産の財産を一人の相続人が無断で独占することは、遺言書が存在しないかぎり基本的には認められません。

預金通帳や株券、配当金などを不正に受け取ろうとしている相続人がいる場合、速やかに金融機関に相続届出を行い、預貯金を凍結させることが必要です。預貯金を凍結することで、相続人が書面によって適切に相続手続を行わない限り、預貯金が引き出される心配はなくなります。

また、仮に使い込みが判明した場合、金額などをしっかり把握するようにし、ご自身が対処することが難しければ弁護士に依頼して不正な使い込みを止めましょう。

相続財産の内容や評価額が不透明である

すべての財産を一人の相続人が相続する場合を除いて、相続財産の内容が分からないと、遺産分割協議ができません。相続人同士が分割する遺産の内容を把握していなければ、「もっと財産があるのでは?」という疑念が生じやすくなってしまいます。特に、不動産や非上場株式のような評価が複雑な財産は、その金銭的価値の算定方法が困難であり、遺産分割協議でもめてしまう原因にもなります。

事前対策

具体的な相続財産が何であるのか、財産目録を作成することが大切です。

事後対策

司法書士や弁護士などの相続の専門家によって財産調査を行うことで、相続財産の内容や評価額の算定をしやすくなります。また、税理士や不動産鑑定士に依頼して不動産や非上場株式の評価を行うこともできます。
専門家介入のもとで財産目録を作成し、財産の透明性を高めることが大切です。

不動産が主要な相続財産のケース

預貯金が少なく、主な相続財産が不動産だけのケースでは、唯一の財産である不動産を売って分割すべきか、それとも特定の相続人が居住するために家のまま相続するのかで意見が別れることがよくあります。
相続人が自分の持分だけを第三者に売却することは現実的ではなく、かといって居住を希望する相続人がその持分相当額の金銭を支払う能力もない場合、遺産分割協議が長期化する原因になります。

事前対策

不動産のみが相続財産の場合、相続したい(住みたい)相続人と、家を売却したい金銭を得たい相続人とで意見が対立する場合に備えて、相続人それぞれを受取人とする生命保険金を用意しておくことが有効です。
仮に相続人同士が不動産の処分や相続でもめてしまっても、手元にある保険金から金銭を支出して解決を図ることができます。

また、亡くなる方自身が不動産に対して要望がある場合には、遺言書を作成して法的な書面化にしておくことで、相続人同士の話し合いをすることなく、不動産の相続手続が可能になります。

事後対策

不動産の相続あるいは処分について意見が対立する場合、まずは話し合いをするための参考資料として不動産の市場価値を正確に評価することが大切です。

複数の不動産業者に査定を依頼し、場合によっては、不動産鑑定士に依頼を行い不動産の価値を確認します。
分割方法については、弁護士や司法書士などの専門家の意見を求めることが透明性に繋がります。

特定の相続人が、生前贈与を受けているケース

生前贈与については、特別受益に該当する場合は、遺産の前渡しとして評価することになります。そのため、生前贈与の有無、贈与した財産の評価金額を巡って、紛争が生じるケースが多いです。
また、生前贈与は金額によっては贈与税が発生しますが、贈与税の申告をしておらず、相続税がかかる際に初めて問題になることもあります。

事前対策

生前贈与が行われた場合、その時期、金額、相手方によって相続への影響が大きく変わります。
また、暦年贈与、相続時精算課税による贈与、贈与税の配偶者控除、教育資金贈与など、贈与の性質によって扱える制度が変わりますので、非課税だからといって安易に自己判断で利用するのではなく、税理士に相談して行うことが大切です。

さらに、贈与は特別受益、遺留分侵害などの場合に相続にも影響を及ぼします。司法書士や弁護士に相談して、遺留分対策、特別受益での持ち戻しを想定した遺言書作成など相続対策をしましょう。

事後対策

生前贈与がある相続は相続税法上の計算が少し複雑になり、相続人が受け取れる実際の相続財産額にも影響を及ぼします。贈与が行われている場合はまず贈与契約書や贈与証書があるかを確認し、「誰が、いつ、何の目的で、いくら受け取ったのか」を明らかにします。

通帳の履歴や金融機関の入出金明細が必要になることもありますので、相続の専門家に調査を依頼するか、金融機関でこれらの証明書を発行しましょう。
そのうえで、生前贈与が特別受益や遺留分の侵害に該当する場合は、相続人が受け取る相続財産額が変わるため、司法書士や弁護士に相談して正確な相続財産額を把握するようにしましょう。

特定の相続人のみが、被相続人の身の回りの世話や介護を担っているケース

相続人が、亡くなった方の財産の維持または増加に無償で貢献した場合は、「寄与分」が認められることがあります。

寄与分とは、被相続人の財産を維持または増やすために特別な貢献をした相続人に対し、その貢献を認めて相続分以上の財産を分配する制度です。これは、相続人間の公平性を実質的に保つために設けられています。たとえば、ある相続人が被相続人の日常の世話や介護を行っていた場合、その行動によって被相続人の財産の減少を防ぎ、財産を維持したと認められれば、寄与分の適用を受ける可能性があります。

亡くなった方の介護や身の回りの世話を特定の相続人、またはその親族が行っているケースでは、介護を行っていた相続人側が多くの権利を主張することがありますが、一方で任せきりにしている他の相続人は介護の大変さを実感できず、感情的にもめてしまうことがあります。

事前対策

特定の相続人が介護をしているケースは、どのような介護をいつから行っていたのか、支援(生活費を負担してあげる、不動産を代わりに管理してあげる)などがあったのかをなるべく書面に残すことが重要です。

また、仮にご自身が介護や世話をみてもらっている立場であれば、遺言書を作成し、世話をみてくれている相続人に少し多めに財産を残すようにしたり、生命保険や生前贈与を活用して金銭が相続人に届くようにすることができます。

事後対策

一般的に、寄与分が認められるか否かはまずは相続人全員の協議により定まります。
しかし、寄与分を主張する相続人と他の相続人とで話し合いが成立しない場面では、寄与分を無理矢理請求することができないため、「遺産分割の調停」という裁判所の手続で解決を図ることになります。

寄与分を主張する場合、「私は相続人として大変だった」と主張するだけではあまり説得力がありません。まずは相続人がどの程度の期間、どのような内容の寄与をしたのか、財産の維持増加にどれだけ貢献したのかをある程度客観的に示すことが重要です。そのためには、介護福祉関係者とのやり取りの記録、書類などを活用します。

相続における争いを未然に防ぐための実践的なステップ

相続における争いを未然に防ぐための実践的なステップ

相続における問題点と事前事後対策である程度お伝えしましたが、相続争いを防ぐための現実的な対策方法は、客観的な資料を残しておくこと、遺言書を作成すること、など共通しています。

家族会議の開催

相続人同士の争いは、当然ながらコミュニケーションが不足している親族間で起きやすい傾向にあります。
まだ相続人同士の争いが起きていない、話し合いの余地がある場合は、定期的に連絡や意思疎通を図り、それぞれの考えを事前に知っておくことが大切です。これにより、予期せぬ誤解や不満を防ぎ、相続人間の透明性と信頼を築くことができます。

ただし、特定の相続人だけが話し合いを重ねていると、後ろめたいことがなくても他の相続人からすると気分の良いものではありませんので、相続人同士の話し合いはなるべく全員で公平に行いましょう。

専門家の活用

相続は起きる前、起きた後でできる対策が変わります。
特に、相続などの複雑な感情と権利関係が絡む問題は、司法書士や弁護士などの法律専門家に相談し、正しい知識で理解しておくことが重要です。

専門家の活用によって、法的なリスク、紛争の回避をすることができます。

遺言書の作成と更新

遺言書があれば相続人同士の話し合いが省略されるため、紛争の可能性が低くなります。

遺言書には自筆証書遺言書と公正証書遺言書がありますが、なるべく司法書士や弁護士に相談しながら公正証書遺言書で作成し、定期的に見直すようにしましょう。

事前の財産分配計画

財産目録を作成し、相続人間で公平に分配する計画を立てます。
特に不動産などの大きな資産については、争いの原因となりやすいため、事前に明確な分割方法を決定することが重要です。遺産の配分に大きな隔たりが生じる場合には、生命保険を活用して調整を図る方法もあります。

家族信託の検討

家族信託を活用すると、信託財産は相続財産から分離するため、相続の発生に関係なく財産を管理活用することが可能になります。

相続を巡る争いは、準備不足やコミュニケーションの不足が原因で起こることが多いです。しかし、事前の計画と家族間のコミュニケーション、そして専門家の助言によって、多くの問題は予防または解決することが可能です。相続は家族の絆を固める機会にもなり得るため、積極的に取り組むことが望ましいです。トラブルになる前にご相談ください。

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