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相続した土地に休眠担保権が付いているときの対応

2024 4/30
相続した土地に休眠担保権が付いているときの対応

相続した土地や建物に、大正や昭和初期に設定された古い抵当権や根抵当権が付いたままになっていることがあります。

この古い抵当権や根抵当権のことを休眠担保権と呼びます。

目次

休眠担保権とは

休眠担保権とは、登記されたまま何十年もの間放置されている抵当権や根抵当権のことを指します。

抵当権や根抵当権などの担保権は、一般的に土地や建物の所有者が金銭を借りる際、貸主の債権を担保するために借主名義の土地や建物に設定する権利です。
銀行から住宅ローンを組んで不動産を購入する際などが代表的な例です。

休眠担保権がついているかどうかの確認方法

休眠担保権が設定されている場合、法務局で取得する不動産の登記事項証明書や、インターネットで取得する登記情報の「乙区」と呼ばれる箇所に、抵当権や根抵当権の記載がなされます。抵当権や根抵当権の記載がなされている場合、抵当権者の住所氏名、債権額(根抵当権の場合は極度額)、債務者の住所氏名が記載されています。

その抵当権の記載に、下線部が引かれていない場合は、現在も有効な(登記上に存在している)抵当権や根抵当権ということになります。

抵当権・根抵当権の表示や、抵当権者の住所氏名、債権額などに、この文章のように下線が引かれている場合は、昔存在していたものの、現在は綺麗に抹消されている抹消済みの抵当権根抵当権という意味です。

なぜ休眠担保権がそのままになっているのか

休眠担保権がなぜ抹消されずにそのままになっているのか、その理由は、「当時(から現在に至るまで)の所有者が抹消手続を行っていないから」に他なりません。

抵当権などの担保権は主に銀行からお金を借りる際に司法書士に依頼して設定します。

その後、ローンを弁済したとしても、担保権は自動的に消える訳でもなく、銀行が消してくれる訳でもなく、所有者が自ら法務局に申請をしなければ登記事項証明書の記録上残り続けてしまいます。

返済が無事に終了し、実体上は消滅しているからと安心して登記手続をしないでいると、担保権が残り続け、休眠担保権と化してしまうのです。

休眠担保権の問題点

休眠担保権の問題点は、通常の担保権の抹消よりも多くの時間と費用がかかる点です。

後ほど解説しますが、休眠担保権は何十年も前に設定された権利であるため、当事の所有者、抵当権者などの当事者が死亡していることが珍しくありません。

また、当時の契約書などの資料が残っていることも少なく、最終的に供託や訴訟など特殊な方法による抹消手続になるケースがほとんどですので、費用と時間が一般的な担保権抹消登記よりもかかりやすくなります。

休眠担保権を放置しておくデメリット

不動産を売却することができない

休眠担保権に限らず担保権が付着している不動産は、そのまま売却することができません。

厳密には、登記手続的には担保権が付着したまま売却することも可能ですが、取引の実態として、売主名義の不動産に担保権が付着している場合にそのまま購入してくれる買主はほとんどいません。

担保権の抹消には数か月かかることが多いため、売却するタイミングを逃してしまう可能性があります。

不動産に担保権を設定することができない

銀行から新たに融資を受ける代わりに土地や建物を担保に入れる場合、休眠担保権が付着したままだと銀行の審査過程で融資の話が止まり、休眠担保権の抹消登記を先に行うよう指摘される可能性があります。

休眠担保権を消す方法

休眠担保権を含む担保権を抹消するためには、いくつかの方法があります。

休眠担保権の抹消は、担保権者の所在が判明しているか否か、所在が判明している場合は相手が協力してくれるか否か、判明していない場合は担保権設定当時の書類や弁済を証する書類があるか否か、担保権が抵当権か根抵当権かなど、具体的な条件によって選択できる手続きが変わります。

ここでは代表的な例をご紹介します。

休眠担保権者の所在が分かる場合

(1)共同して抹消登記を申請

不動産登記の大原則は、共同申請です。

共同申請とは、権利者(その登記をすることで利益を得る人)と義務者(その登記をすることで不利益になる人)が協力して一緒に登記を申請することを意味します。

抵当権を抹消する最も簡単かつ一般的な方法が、所有者と抵当権者(根抵当権者)が協力して申請する方法です。

(2)判決による抹消

休眠担保権を設定した抵当権者や根抵当権者の行方が判明したものの、抹消登記申請に協力してくれないときは、「(根)抵当権抹消登記手続請求訴訟」を提起して、確定判決を得ることで、不動産の所有者が単独で抹消登記を申請することができます。

休眠担保権者が行方不明の場合

休眠担保権者が行方不明である場合、以下の3つの方法により抹消することができます。
行方不明である状態とは、担保権者が個人であるか法人であるかによって変わります。

(1)弁済供託による単独抹消

担保権の弁済期から20年を経過しており、かつ、債権額、弁済期までの利息及び遅延損害金の全額を法務局に供託し、供託証明書を添付することで不動産の所有者が単独で抹消する方法です。

この方法は、大正~昭和初期の抵当権は金額が「45円」など少額である場合に有効な手段です。当時の紙幣価値を現在の紙幣価値で考える必要はないため、利息や損害金を合わせても2000円程度の供託で抹消することができます。

反対に、債権額が数十万円の抵当権など高額な場合には利用できず、実際に全額弁済を完了していたとしても元本利息遅延損害金を供託するため二重の弁済になってしまう点に注意が必要です。

(2)除権決定による単独抹消

官報で催告をしてもらうように裁判所に対して申し立てを行い、債権者からの申し出がなければ除権決定をしてもらい、単独で抹消する方法です。

これは当時の契約書、弁済したことを証する書類を提出しなければならず、これらの書類が残っていることはほとんどないため、除権決定を選択することは実務上ほぼありません。

(3)債権証書と弁済証書による単独抹消

契約書や借用書など債権を証する書類と、領収書など弁済をしたことを証する書類をもとに、不動産の所有者が単独で抹消する方法です。

しかし、これも前述の除権決定と同様に、当時の書類が残っていることは稀ですので、利用されることは多くありません。

行方不明とは

休眠担保権者が行方不明であるときに、弁済供託による抹消特例などを利用することができますが、どういった状態を行方不明と指すのかは、個人と法人とで変わります。実際には、法人が行方不明であると認められることはほぼありません。

個人(自然人)

抵当権者個人の行方不明とは、単純に現住所を知らないというだけでは足りず、住民票なども取得できない状態(不在住不在籍証明が取得できる)であることを指します。つまり、積極的に調査を行ったが、その所在を知ることができない状態のことを「行方不明」と呼びます。

具体的には、不動産の登記記録上に記載された抵当権者の住所地で戸籍、住民票が取得できず、かつその住所地に対して配達証明付き内容証明郵便で債権の受領催告書を通知したところ、「宛てどころ尋ね当たらず」で通知書が返送された場合に、行方不明であるとして、弁済供託等の方法により単独で抹消することが可能となります。

法人

法人が行方不明であると言えるのは、「不動産登記事項証明書に記載された法人の所在地及び商号で登記事項証明書を取得請求したものの、その法人閉鎖事項証明書がまったく存在せず、取得することが出来なかった場合」のみを指します。

つまり、閉鎖登記事項証明書が取得できた場合(解散や清算結了されている場合)は行方不明であると言えず、法人の登記事項証明書が取れた以上は取締役や清算人や死亡していようがいまいが行方不明に該当しません。

解散法人に対する抹消特例

上述のとおり、法人が行方不明であるといえるのは登記簿自体が取得できないときに限られており、法人の担保権抹消は訴訟して判決を得て抹消するしか現実的な方法がありませんでした。そこで、令和5年から法改正により、解散法人については休眠担保権の抹消登記が簡素化され、以下の条件を満たせば単独で抹消できるようになりました。

(あ)法人の解散から30年を経過している
(い)弁済期から30年を経過している
(う)清算人の所在が判明しない

「清算人の所在が判明しない」とは、現地調査まで要請されているものではなく、書面による調査、具体的には法人の登記事項証明書に記載された清算人の住民票などが取得できず、かつ法人及び清算人に宛てた書留郵便などの郵送物が「宛どころ尋ね当たらず」で返送された場合を指します。

所有者が死亡して相続が発生している場合

所有者が死亡し、相続が発生している場合、休眠担保権抹消の前提としてまず故人名義から相続人等存命の方名義への相続登記が必要となります。

相続登記については別記事で詳しく解説しています。

担保権者が死亡して相続が発生している場合

休眠担保権者が死亡し相続が発生している場合、相続を原因とする抵当権移転登記が必要となることがあります。

必要か否かの判断基準は、休眠担保権が消滅した日(解除日や弁済期)が分かる場合、その日付と相続が発生した日との先後関係で決まります。

時系列登記の内容
休眠担保権消滅→休眠担保権者死亡の順抵当権移転登記せず抵当権抹消できる (登記義務者は相続人全員)
休眠担保権者死亡→休眠担保権消滅の順抵当権移転登記をしてから抵当権抹消

なお、休眠担保権者が行方不明のために供託特例を利用して抹消する場合、相続が発生している蓋然性が高くても抵当権移転をすることなく抹消登記を申請することができます。

担保権者が合併等により消滅している場合

抵当権者が合併等により消滅している場合、相続と同様に考えますので、合併日と休眠担保権消滅日との先後で抵当権移転登記をすべきか否かが変わります。

休眠担保権抹消にかかる費用

休眠担保権抹消にかかる費用は主に以下のとおりです。

①登録免許税

登録免許税とは、担保権抹消の際に法務局に支払う税金のことで、土地の数×1000円がかかります。

多くのケースでは2000円程度であり、上限は2万円ですので、休眠担保権抹消の費用全体でみると、登録免許税が占める割合は多くありません。

②調査費用実費

個人の住民票、法人の登記事項証明書、不動産の登記事項証明書などを調査する実費です。

そのほか、内容証明郵便や書留郵便を送達する実費も生じます。

一般的には1万円~2万円程度になることが多いでしょう。

ただし、相続人が判明した場合は相続人調査をすることになりますので、戸籍の数によっては5万円~10万円かかることもあります。

③供託をする場合の供託金

抵当権者が行方不明であるときに、供託特例を利用して抹消する場合、法務局に債権額、利息、遅延損害金を供託することになります。

この制度を利用するケースはそもそも供託金が多額にならない場合ですので、元金、利息、遅延損害金を合わせても2000~5000円程度になることが多いでしょう。

④司法書士報酬

休眠担保権抹消で最も高額になるのが司法書士報酬です。

休眠担保権者が個人か法人か、行方不明か否か、当時の資料があるか否か等により手続きの選択肢が大きく変わるため、一律に報酬を伝えることはできませんが、一般的には20万円~50万円程度の費用感になるでしょう。

詳細は必ず司法書士に相談し、見積もってもらいましょう。

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