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【相続 相談解決事例】不動産に古い法人名義の根抵当権が付いていたケース

2024 4/22
【相続 相談解決事例】不動産に古い法人名義の根抵当権が付いていたケース

令和6年4月1日からの相続登記義務化に伴い、相続に関するご相談がこれまで以上に多くなっています。

今までは亡くなった方名義のまま放置していた不動産を放置しても罰則がありませんでしたが、法改正後は放置すると過料の対象になります。
その影響で、「子や孫の代に迷惑をかけたくないから相続登記を行ってしまおう」という方が増えているのですが、調べてみると曾祖父の名義のままということも珍しくありません。

そして、大正初期の不動産登記の中には、当時関係のあった近隣住民との間で金銭や物資(米)の貸し借りが行われ、抵当権や根抵当権を設定していることもあります。

当事務所が実際にご相談いただいた、古い根抵当権が設定された不動産の相続登記手続を紹介します。

目次

ご相談内容

相続登記

そもそものご相談は、先祖代々にわたり住んできた土地と建物を相続登記したいというご相談でした。
調べてみると、曾祖父名義のまま不動産の名義が止まっていたため、曾祖父の相続人全員が手続きに協力して相続登記をしなければなりませんでした。

休眠担保権の存在

ご相談のケースでは、土地に根抵当権が付着していました。
根抵当権とは、家を担保にしてお金を借りる際に設定される登記で、もっとも多いのは住宅ローンを組む際に銀行が不動産に設定する抵当権です。

今回のケースは大正初期に根抵当権が設定されており、しかもその根抵当権を設定したのは銀行などではなく一般の法人でした。

実態上この根抵当権は消滅していると考えるのが自然ですが、登記記録上は残ってしまっているため、抹消登記を申請しなければ、のちに不動産を売却することも出来なくなります。

しかし、この休眠担保権、しかも法人名義の根抵当権を抹消するにはかなりの時間と費用を要します。
ご依頼者には時間と費用を充分にお伝えし、納得いただいたうえで抹消のご依頼をいただきました。

当事務所の解決方法

相続人の調査~

相続人の調査~相続登記の完了

根抵当権の抹消登記をするためには、前提として相続登記を完了させる必要があります。

曾祖父名義の相続人は実に29名になり、どなたも遠方、高齢、しかも曾祖父名義の不動産が残っているなどと全く思ってもいないため、その説明をすることだけでもかなりの時間を要しました。

最終的には、奇跡的に29名全員が相続登記に協力してくれたため、無事ひ孫に相続登記をすることができました。

休眠担保権の抹消方法と今回の事例の特殊性

長年相続登記がなされていない土地や建物には、銀行や個人名義の古い抵当権が残ったままになっていることがあります。この古い抵当権などを休眠担保権と呼びます。

担保権とは、お金を借りるときに貸主が設定する権利のことで、返済が完了しても借主(不動産の名義人)が法務局で抹消手続きをしないかぎり勝手に消えることはありません。
休眠担保権は、実態上は消滅している可能性が高いものの、抹消登記を怠ったために長年残った状態になっているのです。

休眠担保権を簡単に抹消するための手続はいくつかあります。
しかし、今回のように、「法人名義の根抵当権」となると、簡易な方法で抹消することが難しく、最終的に訴訟を提起するケースもあります。

最悪の場合は訴訟をすることを念頭に、まずは根抵当権の資料があるかどうか、そして法人の関係者などに協力をしてもらえるかどうかを調査しました。

根抵当権について当時の資料の捜索、聞き取り

大正初期に契約、設定された根抵当権に関して、まず契約書や弁済証書などの資料が手元に残っていないか、ご依頼者に家探しをしてもらいました。しかしながら、当時の資料は見つかりません。

次に、根抵当権を設定した法人名や代表取締役の住所氏名から、親戚や親族、現在も関係のある方でないか、何か根抵当権に関係する話を聞いたことがないか聞き取りをしましたが、当然曾祖父のお金のことなど、孫やひ孫の代の方々は知りもしませんでした。

法人調査~清算人への事前連絡と協力の可否

根抵当権を設定した法人を調査すると、昭和60年に解散しており、平成12年に清算結了登記がなされていました。つまり、法人は登記上存在しないことになります。

そして、清算結了後に、清算人1名が就任し、そのあと清算事務を完了していることも判明しました。

そこで、まずは昭和60年解散当時の取締役、清算人5名の住所から戸籍謄本や住民票を取り寄せ、健在であるか(連絡が取れるかどうか)を調査しました。
結果、当時の取締役=清算人は全員死亡していることが判明し、清算人の調査に入りました。

最後に清算事務を行った清算人を調査すると、現役の弁護士であることが判明したため、法人について知っていることがあるかどうか、休眠担保権の抹消登記に協力してもらえるかどうかを打診しましたが、取り付く島もなく、関与しないとの返答がなされました。

裁判所への根抵当権抹消登記手続請求訴訟

当時の資料から取締役や清算人が存命であれば、根抵当権抹消の協力を要請することも出来ましたが、全員死亡しており、最後に清算人に就任した弁護士が協力的であれば、共同で抹消登記を申請することが出来たのですが、そのいずれもが出来なかったため、やむなく訴訟を提起し、ご依頼から実に1年近くかけて根抵当権を抹消することができました。

登記の記録からすると、根抵当権の抹消登記というシンプルな手続で、しかも当時の曾祖父がすぐに手続きをしていれば大きな費用をかけずに済んだものの、放置してしまったがために、ひ孫の世代に大きな経済的負担を強いることになりました。

令和5年法改正

以上のように、法人が根抵当権者である場合の休眠担保権抹消は、多くの時間と費用がかかっていましたが、
令和5年法改正により、解散法人については休眠担保権の抹消登記が簡素化され、以下の条件を満たせば単独で抹消できるようになりました。(本件の場合は清算人に連絡が取れているため、改正後の方法を使うことはできないことには変わりありません。)

(あ)法人の解散から30年を経過している
(い)弁済期から30年を経過している
(う)清算人の所在が判明しない

根抵当権は被担保債権が確定できないことがほとんどであり、弁済期も不明なことがほとんどです。
抵当権のように弁済期が閉鎖登記事項証明書に記載されていることもありません。
そこで、根抵当権については、元本確定登記がなされているときは元本確定日を弁済期として考えます。
元本確定登記がなされていない場合、登記記録から元本確定が明らかであるときは当該日、元本確定が明らかでないときは設定日から3年を経過した日を元本確定日=弁済期と考えます。

「清算人の所在が判明しない」とは、現地調査まで要請されているものではなく、書面による調査、具体的には法人の登記事項証明書に記載された清算人の住民票などが取得できず、かつ法人及び清算人に宛てた書留郵便などの郵送物が「宛どころ尋ね当たらず」で返送された場合を指します。

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