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株主や取締役が死亡したときの手続や相続の手順

2024 3/28

株式会社や合同会社は、一般社団法人のように複数人数での設立が要件となっていないため、1人で立ち上げることができます。

近年では人口減少、事業の成り手不足、コストカット、定年の引き上げなどにより、小規模な個人事業主が唯一の株主かつ取締役として1人で会社を経営していることも珍しくありません。

しかし、最近では株式会社の唯一の取締役兼株主が死亡してしまったがために、会社の事業自体が停滞してしまう問題が顕在化しています。

株主や取締役が死亡したときの手続きや相続の問題、唯一の株主かつ取締役(いわゆる1人会社)が死亡したときの問題点や対策を解説します。

目次

複数いる株主のうち1名が死亡したとき

複数いる株主の内の1名が死亡したとき、亡くなった方の保有する議決権の数が多数でなければ、会社の経営的な面ではそれほど大きな問題になることは多くありません。

株式は相続財産

株式は預金、不動産などと同じく立派な相続財産です。

株式と聞くと東証などに上場している大きな会社の株式を想像する方も多いですが、中小企業や1人会社の方が保有する非上場株式(簡単に手に入れることのできない、市場に流通していない会社の株式)も相続財産です。

相続人が株式を相続する

株式を保有する人が亡くなると、相続人が株式を相続します。
株式は昔のように株券が存在することは稀ですので、視覚的に観念することは難しいですが、相続人の財産として遺産分割の対象になります。

定款に相続人に対する売渡請求がある場合

会社には定款と呼ばれるルールブックが必ず存在します。
定款は会社法上で強制的に記載が決められているものがある一方で、会社それぞれが任意に記載している規定もあります。

会社の定款の中に、「相続人に対する売渡請求」という条文が存在することがあります。

これは、会社の株主が死亡し相続が発生した結果、会社にとって望ましくない相続人が株式を取得し、会社の経営に支障を来す恐れがあることを想定して規定がなされます。

この規定が存在する場合は、会社が株主の相続人に対して強制的に株式を売り渡すように請求することができるのです。

相続人による議決権の行使方法

株主が死亡し、その法定相続人が複数人である場合、相続人が確定的に株式を取得するまでの間に、議決権をバラバラに行使することはできません。

例えば、100株を保有していた株主Xが死亡し相続人がA、B、Cの3名であり、ABCのいずれが(あるいは全員が)何株を相続するか決まっていない場合には、ABCは共同して100株について議決権を行使しなければならず、3分の1ずつ各自で議決権を行使することはできません。

この場合、ABCが協議により議決権を行使する行使権者1名を選定し、会社に対して通知をすることで、議決権行使権者が相続人を代表して議決権100株を行使することになります。

遺産分割や法定相続により相続した相続人が単独で行使

先ほどの例で、ABCが遺産分割協議をした結果、Aが100株すべてを相続することが確定した以降は、Aが100株すべてについて単独で議決権を行使することができます。

そのほか、ABが50株ずつ相続する内容の遺産分割協議が成立した場合、協議成立以降はAとBがそれぞれ50株の株式について独自に議決権を行使することができます。

複数いる取締役のうちの1名が死亡したとき

複数いる取締役のうち1名が死亡したとき、会社として以下の手続が必要となります。

取締役死亡による退任の登記

取締役が死亡すると、死亡による退任の登記が必要です。
役所に死亡届を提出したとしても、自動的に死亡の登記がされるわけではなく、会社が法務局に申請する必要があります。また、死亡の日から2週間以内に登記しなければならないことになっています。

最低員数を欠く場合は株主総会による取締役選任決議

会社の定款または会社法の規定により、取締役の人数を「3名以上5名以下」のように規定していることがあります。

取締役A、B、Cの3名がいる会社の取締役Aが死亡し、定款に取締役3名以上と規定がある場合、取締役の人数を1名欠く状態になってしまいますので、取締役1名を選任する株主総会決議をすることになります。

補欠取締役を選任している場合

会社は取締役の死亡や辞任などにより最低員数を欠いた場合に備えて、補欠の取締役を選任することができます。補欠の取締役を選任していた場合は、取締役が死亡しても補欠取締役が代わりに就任します。

ただし、補欠取締役の効力は、定款に定めのないかぎり補欠取締役の選任後最初に到来する定時株主総会のときまでとされています。

1人会社(唯一の株主かつ取締役)の経営者社長が死亡したとき

自動的に相続人が取締役になるわけではない

唯一の取締役が死亡したとき、取締役の相続人が自動的に取締役の地位に就くわけではありません。

取締役とは会社との委任契約に基づいて選任される関係であり、取締役の死亡により当然に退任するため、相続人がその地位を当然に引き継ぐことにはなりません。

あくまで取締役を選任するのは会社の株主による決議の方法になります。

取締役を選任する方法

一般的な株主総会は、代表取締役ないし取締役が株主に対して招集通知を行い開催します。

しかし、会社の唯一の取締役かつ株主の死亡により相続が生じた場合は、株主総会を招集すべき取締役が存在しませんので、最もオーソドックスな方法での株主総会が招集できないことになります。

この場合、株主の相続人全員を含めた株主全員が同意できる否かによって、取りうる方法が変わります。

株主全員の同意が得られる場合

株主全員の同意による招集手続を省略した株主総会

株主総会の招集通知を行わずに、株主総会を開催する方法があります。
それは、株主の全員が同意している場合です。

株主が死亡している場合、株主の相続人全員から同意を得る必要がありますが、株主の相続人を含めた全員の同意が得られるのであれば、招集手続きを省略して株主総会を招集することができます。

みなし決議

株主が提案した株主総会議案について、株主全員が書面または電子的方法により同意している場合は、先に述べた招集通知だけでなく株主総会そのものを省略する(成立したとみなす)ことができます。これを株主総会のみなし決議(書面決議)と呼びます。

株主に相続が発生している場合、株主の相続人全員が同意する必要がありますが、株主全員の協力を得られるのであれば、招集通知のみならず株主が集まる必要もないため、この方法が最も形式的に決議を行えます。

株主全員の同意が得られない場合

亡くなった株主の相続人全員を含む株主の内、連絡がつかない株主や同意しない株主がいる場合、先述の株主総会招集通知の省略やみなし決議を行うことができないため、裁判所を介しての手続を利用することになります。

仮取締役(一時取締役)の選任申立

一般的に株主総会は取締役が株主に対して招集通知をします。

しかし、唯一の取締役かつ株主が死亡し、株主全員の同意が得られない場合は、株主総会を開催することができないため、一時的に職務を行う取締役(仮取締役や一時取締役と呼びます)を裁判所から選任してもらい、一時取締役が招集通知を行います。

しかし、裁判所の手続きは基本的に時間を要することが多く、緊急性の高い一時取締役選任申立の場合も数週間は要しますので、その間は会社の業務が停滞してしまうことになります。

株主総会の招集請求

総議決権の100分の3以上を有する株主(公開会社の場合、当該比率の株式を半年以上有する株主)は、取締役に対して議案の提案及び株主総会の招集請求をすることができ、株主からの請求後遅滞なく招集の手続きが行われず、請求から8週間以内の日を開催日とする株主総会の招集通知が発せられないときは、株主は裁判所に対して、株主総会招集許可申立てをすることができます。

株主からの株主総会招集許可申立てがなされた場合、通常1か月弱程度で許可決定がなされますが、取締役に対して招集請求をしたこと、その後8週間以内の日に株主総会が開催されないことが要件となっています。

まとめ

唯一の株主、唯一の取締役が死亡し相続が発生してしまうと、会社の円滑な事業に支障を来すことになります。また、株主の相続人が非協力的な場合や、株主の相続人がもめている状態だと、会社はその紛争や対応に巻き込まれてしまうことになります。

特に最近では唯一の株主=唯一の取締役である1人会社が非常に多いため、相続が発生したときのリスクが高くなっています。

万が一のことを考え、重要な株主や取締役に相続が起きた時の対策を打っておきましょう。

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