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相続人の廃除とは

2023 10/20
相続人の廃除とは

相続が発生したとき、民法に定められた法定相続人が法定相続分を取得することになります。

しかし民法には相続人の欠格、相続人の廃除という規定があり、法定相続人が除外される制度があります。

ここでは相続人の廃除について、適用されるケース、廃除にする方法、注意点などを解説します。

目次

相続人の廃除とは

推定相続人が、被相続人に虐待、侮辱、または著しい非行を加えたとき、被相続人が裁判所に対して当該推定相続人を相続人の枠から廃除してもらう手続のことを指します。

(1)遺留分を有する推定相続人

廃除の対象になるのは、遺留分を有する推定相続人だけです。

遺留分とは、法律で最低限保障された金銭を相続する権利のことです。

遺留分を侵害されている相続人は、自分の遺留分を主張することで最低限保障された金額を受け取ることができる(遺言などに対して文句を言うことができる)ということになります。

遺留分を有する推定相続人とは具体的には被相続人の配偶者、子供(直系卑属)、親のことを指し、遺留分をしない推定相続人とは被相続人の兄弟姉妹を指します。

つまり、廃除の対象になるのは被相続人の配偶者、子供(直系卑属)、親だけであり、兄弟姉妹は廃除することができません。

これは、「廃除したい相続人=財産を渡したくない相続人」であり、遺留分のない(自分の取り分に文句を言う権利のない)兄弟姉妹は遺言を作成して除外する方が手続き的に相続人廃除よりも簡単なので、廃除の対象者から外れています。

(2)被相続人の生前に

被相続人の生前に侮辱、虐待、著しい非行をしたことが必要です。

後述するように相続人の廃除は被相続人しか主張できず、廃除の方法は生前にするか遺言に記載するかのいずれかなので、時系列的に被相続人が生前に虐待、侮辱または非行を受けていることが必要だからです。

(3)侮辱、虐待、著しい非行

侮辱、虐待、著しい非行とは、積極的な言動だけではなく消極的な言動も含みます。

具体的には、暴言暴力といった積極的な言動は当然のことながら、長年にわたり無視し続ける(ネグレクト)、扶養関係にあるにもかかわらず生活費を渡さない(経済的DV)などの消極的な言動も相続人廃除の理由になりえます。

(4)被相続人自身が

相続人廃除を申し立てられるのは被相続人のみです。

例えば、被相続人Xが相続人Aから生前に侮辱や虐待を受けていたことを知った他の相続人Bが、被相続人Xの死後にAに対して廃除を申し立てることはできません。

(5)裁判所に申し立てる

相続人廃除は、被相続人自身が能動的に申し立てをしなければなりません。

相続権を喪失させる制度として相続欠格がありますが、相続欠格は相続に関する重大な侵害ですので、欠格事由に該当すれば当然に相続権を喪失させることになっている点で、相続人廃除と異なります。

申立てのタイミングは生前か死後のいずれかです。

相続人の廃除はどれぐらい認められるのか?

廃除を申立てたからといって必ずしも認められるわけではなく、具体的な事情によって判断されます。

一般的には相続人の廃除は認められにくい傾向にあります。

相続人の廃除になるとどうなるのか

相続人の廃除が認められると、廃除された人は相続権(遺留分含む)を失います。

ただし、相続人廃除によって廃除された相続人に子供がいる場合は、代襲相続人として法定相続分を取得します。

相続人の廃除は届出や手続が必要?

相続欠格の場合は、該当すると自動的に相続権を失いますので、届出は必要ありません。

しかし、相続人廃除は相続欠格と違い、廃除を申し立てる必要があります。

(1)被相続人が生前に廃除を申し立てる

被相続人自身が生前に裁判所に対して廃除を申し立てます。

(2)遺言に廃除の旨を記載し、相続開始後に遺言執行者等が申し立てる

遺言書に廃除の旨とその具体的な理由を記載し、遺言執行者を指定すれば、被相続人の死後に遺言執行者が家庭裁判所に対して廃除を申し立てます。

遺言執行者とは、遺言の内容を実現させるために行動する方のことで、相続人の代理人という法的立場があります。

遺言執行者を選任することで、他の相続人は勝手に財産を管理処分することができなくなります。

相続人廃除は戸籍に記載される?

相続人の廃除が確定すると、廃除された相続人の戸籍にその旨が記載されます。

戸籍はあらゆる相続手続に共通するもっとも基本的な書類ですので、戸籍の記載によって相続人が廃除されているかどうかが分かります。

相続人廃除に関する公的な証明書はある?

相続人廃除が確定すると戸籍に廃除の旨が記載されるため、その戸籍が廃除の公的証明書となります。

相続人の廃除と相続欠格の共通点と違い

相続欠格と相続人廃除は一覧にすると次のようなとの共通点、違いがあります。

 相続欠格相続人廃除
要件・被相続人や相続人を死亡させ(ようとする) ・詐欺や脅迫で遺言書を作成変更撤回させ、またはそれらを妨害する ・遺言書を変造偽造破棄隠匿する・被相続人に対する侮辱、虐待、著しい非行
効果相続権、遺留分を失う相続権、遺留分を失う
代襲相続の有無ありあり
申立ての必要性なし(当然に欠格する)・被相続人が生前に裁判所に申し立て ・被相続人が遺言に廃除の旨を記載し遺言執行者が申し立て
戸籍への記載記載されない記載される
   

相続人の廃除になる具体的なケース

  • 相続人が被相続人を虐待した場合
  • 被相続人に対して重大な侮辱を与えた場合
  • 被相続人に対する著しい非行があった場合
  • 重大な犯罪行為を行い、有罪判決を受けている場合
  • 被相続人の財産を不当に管理処分した場合
  • 相続人が多額の借金を作り、これを被相続人に支払わせた場合
  • 配偶者が愛人と同棲して家庭を省みない
  • 扶養義務があるにも関わらずネグレクトや経済的DVなどを行う

相続人廃除は、虐待、侮辱、非行が日常的に反復継続して繰り返されているなどの客観的証拠があれば認められやすくなりますので、録音録画、日記やメモに日付時間回数、虐待侮辱非行の具体的な内容を記載するなど、証拠として残しておくことが重要です。

さらに、医師の診断書や通院記録などがあるとより効果的です。

相続人廃除の注意点

申し立てが必要

相続欠格と異なり、申し立てをしない限りどんなにひどい虐待、侮辱、非行を受けていたとしても廃除されません。

必ず認められるわけではない

廃除を申し立てたからといって必ずしも認められるわけではありません。

単に疎遠になっている、不仲といった関係ではなく、被相続人が社会通念上許容できないほどの虐待、侮辱、非行を受けていることが廃除の要件です。

他の相続人は廃除の申立ができない

廃除の意思表示ができるのは被相続人のみです。

非行を繰り返す相続人に対して他の相続人が憤りを感じていても、被相続人自身が廃除の意思を表示しなければなりません。

相続人廃除を司法書士に相談するメリット

廃除の流れ、費用や注意点など実務レベルでアドバイス

司法書士は相続に精通した法律の専門家で、かつ裁判所申立て書類の作成ができるため、相続人廃除の書類作成に長けています。

また、豊富な経験と知識から、申し立て前後の注意点や手続き全体の流れなど、より詳しいアドバイスを受けることが可能です。

廃除後の相続手続に対応できる

司法書士であれば相続人廃除をした後の相続手続をそのまま引き受けることができます。

特に、相続財産に不動産が含まれている場合、不動産の相続登記手続きは司法書士が専門家であるため、弁護士に相談するよりもスムーズかつ低額で手続きを行えます。

遺言書の手続きや執行も行える

遺言による廃除の場合、遺言書の検認手続や遺言執行者の選任が必要な場合があります。

司法書士は遺言書の検認、遺言執行者の選任申立、廃除の申立すべてに対応でき、しかも遺言執行者として廃除を行うことも可能です。

これらを一連で一括して行えるのは弁護士と司法書士だけであり、司法書士は弁護士よりも安価なことが特徴ですので、より安く、より早く手続きを行うことができます。

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