MENU

電話・メールでご相談
メール24時間受付中

お電話はこちらから WEBからのご相談はこちら

遺留分を渡したくない場合の対策

2023 11/08
遺留分を渡したくない場合の対策

「遺言に従って財産を取得したら、他の相続人から遺留分を請求された」というケースがあります。

遺留分とは法律で法定相続人に認められた「財産を相続する最低限の権利」のことです。

しかし、遺留分を見ず知らずの相続人や、遺言に記載のない相続人に渡したくない場合もあるでしょう。

遺留分の基本的な考え方、渡したくない場合の対策、注意点を解説します。

目次

遺留分とは?

「相続人に認められた、最低限の金銭的利益を要求する権利」のことを遺留分と呼びます。

まったく相続するものがない相続人のために、多くの財産を受け取った相続人や受贈者に対して最低限の金銭を支払うように要求できる権利のことで、法定相続人同士で生じる不公平感をなるべく少なくするための制度です。

遺留分は誰に認められる?

兄弟姉妹を除く法定相続人に認められる権利で、亡くなった方の兄弟姉妹に遺留分はありません。

被相続人に子がおらず、両親が死亡しているときは兄弟姉妹が相続人になりますが、兄弟姉妹は遺留分が認められません。

例えば、被相続人Xが死亡し、Xの配偶者Yと、Xの兄Aが法定相続人だとします。

このとき、XがYにすべての財産を相続させる遺言書を残していると、Yが全財産を相続しますが、Aは遺留分が認められないため、AからYに対して1円も請求することができなくなります。

前夫・前妻に遺留分はある?

前夫・前妻は離婚や死亡により相続人ではなくなっていますので、遺留分がありません。

遺留分の割合は?

自己の法定相続分に1/2を乗じた割合が、遺留分の割合です。

法定相続分とは?

法定相続分:「民法で規定された相続の基準となる割合」を法定相続分と呼びます。

法定相続分の割合は下表のとおり

 子あり親あり兄弟姉妹あり
配偶者あり配偶者1/2配偶者2/3配偶者3/4
 子1/2親1/3兄弟姉妹1/4
配偶者なし

配偶者がいるときは、配偶者は常に法定相続人になります。

子>親>兄弟姉妹の順に法定相続人の順位が決まります。

具体的な遺留分率と遺留分割合の計算方法

法定相続分に、法律で規定される遺留分率を乗じた数字が遺留分割合です。

民法第1042条

1項 遺留分率:直系尊属のみが相続人のとき 1/3

     上記以外のとき 1/2

2項 遺留分権者が複数いる場合は、上の遺留分率に法定相続分を乗じた数

上記の遺留分率を法定相続分に乗じた遺留分割合は下表のとおり。

 子あり親あり兄弟姉妹あり
配偶者あり配偶者1/4配偶者2/6配偶者1/2
 子1/4親1/6兄弟姉妹 なし
配偶者なし1/21/3なし

配偶者と兄弟姉妹が相続人であり、被相続人が兄弟姉妹に遺言で全財産を相続させるとき、配偶者が兄弟姉妹に主張できる遺留分は1/2です。

法定相続分3/4×遺留分率1/2=3/8になりそうですが、兄弟姉妹は遺留分がそもそもないので、1042条2項の適用がなく、1項により1/2となります。

遺留分を渡さないことができる?

請求されたのに渡さない、ということは難しい

遺留分を請求され、実際に遺留分を侵害しているにもかかわらず、渡さない、支払わないという選択はありません。

遺留分は金銭を請求する権利ですので、請求された相続人は相続した物が不動産、株式、自動車、貴金属などの金銭以外だったとしても、金銭を支払うことになります。

請求するか否かは相続人の自由

遺留分は権利ですので、行使するかどうかは各相続人の自由です。

遺留分の行使可能期間中に遺留分を行使しなければ、遺留分を主張する権利自体がなくなります。

遺留分の行使期間は?

遺留分は、自己が相続人であり、かつ遺留分を侵害する内容の贈与や遺贈があることを知ってから1年以内に行使するか、相続開始時から10年が経過するまでに行使する必要があります。

遺留分をなるべく渡したくない方は、相手方が遺留分を行使できる期間がいつまでなのかをしっかり把握し、できれば客観的に立証できる証拠として残しておきましょう。

遺留分への対策方法は?

遺留分は相続人に認められた法律上の権利ですので、請求されたのにまったく渡さないことは基本的にできません。

しかし、遺留分を請求される可能性を低くしたり、遺留分を請求された場合に備えて対策することはできます。

遺言書の付言事項

遺言書は法的効力を生じさせる「本旨」と呼ばれる本文のほかに、「付言事項」というものを記載することができます。

付言事項とは、遺言書を作成した人の気持ちを書き記すことができ、なぜそのような遺言書を作成したのか、残された相続人にどう暮らしてほしいかなどを残す方が多くいます。

この付言事項の中で、遺留分の請求をしないように一言記載してもらうことで、遺言書で財産を受け取ることができない(遺留分を侵害された)相続人が遺留分の主張をする可能性を低くすることができます。

ただし、付言事項はあくまで気持ちを記載するだけで、法的な拘束力はありませんので、遺留分の請求をされる可能性はあります。

特別受益などの調査把握

特別受益とは、相続人が亡くなった人から生前に受け取った生計のための財産のことで、相続財産の前渡しとも呼ばれます。

遺留分を請求できる相続人は、自分自身の遺留分=最低限受け取る権利を侵害された相続人です。

特別受益をたくさん受け取っている人は、相続財産を前渡しで受け取っている=遺留分を侵害されていないこともあり得ます。

遺留分を渡したくない人は、遺留分を請求してきた人が過去に特別受益に相当する財産を受け取っていないか、通帳の記録や契約書を調査する方法が有効です。

生命保険を活用する

生命保険は受取人固有の財産であり、よほど極端な内容でないかぎり、遺留分の請求の対象には当たらないとされています。
極端な内容とは、生命保険を1億円かけておき、残りの手元預金は10万円しかない、といった例です。

生命保険を活用することで、遺留分の対象になる財産とは別に、お金を相続人に渡すことができます。

また、不動産など金銭以外の相続財産が多い場合に生命保険を活用すれば、遺留分を請求されても生命保険のお金から支払うことができます。

遺留分の放棄をしてもらう

遺留分は家庭裁判所に申し立てをすることで、放棄することができます。

ただし、遺留分の放棄に協力してもらえるほど深い関係性であれば、そもそも遺留分の主張自体もされないでしょうし、遺留分を渡したくないという話にはならないことが多く、あまり現実的ではありません。

相続人の欠格、廃除

遺留分を請求している相続人や、遺留分を渡したくない相続人が、亡くなった方の遺言書を改ざん、破棄、隠匿したり、亡くなった方に対しての暴言暴行など、およそ相続人にふさわしくない行為をしている場合は、「相続の欠格」「廃除」にあたる可能性があります。

相続の欠格事由は該当すれば直ちに相続権を失うため、その方に遺留分を渡すこともなくなります。

相続人の廃除は亡くなった方自身が生前または遺言書で廃除を希望しなければならないため、遺留分を渡したくない場合は、生前から廃除について検討してもらいましょう。

生前贈与を活用する

遺留分は、相続が発生したときの財産を基準に考えます。
生前贈与をすることで、相続時の財産を減らすことができ、結果的に遺留分を渡すことになっても金額を抑えられる可能性があります。

ただし、生前贈与は過去10年以内にしたものが遺留分の対象になってしまい、遺留分侵害を分かっていながら贈与した場合は無制限に遺留分の対象になりますので、あまり有効な方法ではありません。

遺留分、遺言書を司法書士に相談するメリット

この記事が気に入ったら
いいねしてね!

目次
閉じる