相続が発生すると、法律で規定された相続人が順位に従って相続する権利を取得します。
一方、婚姻関係にない、いわゆる内縁関係にある妻、夫、その子どもについては、財産を相続するために少し特殊な手段が必要になります。
内縁関係とは
内縁とは、事実婚とも呼ばれ、婚姻関係にないものの同居している男女のことを指します。
婚姻の意思がある
婚姻の意思がない男女は内縁状態にはなりません。
孫と祖母が同居している、シェアハウスで生活の一部をともにしているケースが婚姻意思のない典型的な例です。
婚姻届を提出していない
内縁、事実婚とは婚姻の意思があるものの婚姻届を提出していない状態です。
婚姻の意思を持って婚姻届を提出した男女は戸籍上の夫婦になります。
同居、共同生活している
生活費をともにしているなど、共同生活を営んでことが条件です。
同居期間は約3年程度あれば、社会的に内縁状態と認められやすいとされています。
内縁(事実婚)の妻・夫の相続権
令和5年現在の法律では、婚姻関係にある配偶者には相続権があるものの、内縁の妻・夫の相続権は認められていません。
内縁関係の子どもの相続権
母と子どもの関係であれば、子どもの出生時に母の戸籍に子どもが入籍します。
母が亡くなった場合については、子どもは相続権があります。
内縁の夫が亡くなったとき
内縁の夫が亡くなったとき、内縁の夫が子どもを認知していれば親子関係が認められ、子どもは内縁の夫に関して相続権を取得します。
内縁の夫に認知させるには
内縁の夫が子どもを認知しない場合、裁判所に強制認知の訴えをすることで戸籍上の親子関係とすることができます。
強制認知の訴えは、子ども自身、子どもの直系卑属(孫など)、それらの法定代理人(子どもの母親、内縁の夫の相手方)がすることができます。
内縁の子どもの相続権は少ない?
内縁関係にある男性Xと女性Yの間に子どもAが生まれ、XがAを認知したあとにY以外の女性Zと婚姻し、XとZとの間に子どもBが生まれたとします。
この場合、Xが死亡したときの相続人はZ、BだけでなくAも含まれます。
さらに、婚姻関係にあるXZとの間の子Bと、認知されているものの内縁関係にあったYとの間の子Aとの相続権に差違はありません。
内縁の妻・夫が財産を相続する方法
内縁関係の妻・夫はそのままだと相続人ではないため、相続権がありません。
内縁の妻・夫が財産を取得するには次のような方法があります。
遺言
もっとも典型的な方法は遺言書です。
遺言書は法律上有効な要件さえ整っていれば相続人ではない第三者に対しても財産を譲渡することができます。
遺言書には自筆証書遺言書と公正証書遺言書があります。
自筆証書遺言書は簡単に作成できる分、遺言書を無理やり書かせた、遺言書を紛失したり捨ててしまう、遺言書の存在自体を忘れてしまう等のリスクがありますので、公正証書で作成することが推奨されます。
注意点として、遺言書の内容が公序良俗に反する場合、例えば配偶者のいるAさんが、配偶者や子供ではなく不倫相手に全財産を渡す内容の遺言を作成した場合には無効となってしまうことがあります。
死因贈与契約
死因贈与契約は遺言書と似た手続きで、亡くなった時に財産の贈与の効力が発生するようにあらかじめ契約しておくことを言います。
遺言と違う点としては、遺言は単独で作成するもので死因贈与契約は贈与者と受贈者の契約によること、遺言は拒絶できますが死因贈与の受贈者は拒否できないこと等があります。
特別縁故者として取得
内縁の妻・夫に法定相続人がまったくいないときは、特別縁故者という立場の人が財産の取得を申し出ることができます。
特別縁故者は、亡くなった人と生計を同一にしていた人、療養看護に努めていた人などで、主な例は内縁関係、子供の配偶者(義理の娘息子)です。
特別縁故者だからといって全財産を取得できるわけではなく、裁判所に申し立てをして認められた金額のみを取得することになります。
ちなみに、特別縁故者がおらず余った財産は最終的に国庫に帰属することになります。
まとめ
内縁関係の妻夫がパートナーから財産を取得するには遺言書がもっとも有効かつ確実です。
遺言書の作成は自筆ではなく公正証書で作成し、かつ相続人とのトラブルを極力避けるために司法書士や弁護士などの法律専門職に遺言執行者に就任してもらうケースがほとんどです。
遺言書作成は法的リスク、金銭的なリスクなどを検討しながら作成することが推奨されるため、必ず司法書士や弁護士に相談しましょう。