近年は日本に永住する外国籍の方も増えました。
外国籍の方が日本で暮らしていく際に、やっかいな問題となりやすいのが相続のことです。
日本在住の外国人の相続
外国籍の方が日本で亡くなった場合、その方の本国(米国籍ならアメリカの州)法がまず適用されます。
その結果、日本で亡くなった方の相続手続のために、本国の資料を取り寄せる必要があるだけでなく、本国法に則って手続をしないといけないケースもあります。
外国人が日本で遺言作成できるのか
外国籍の方が日本で生活し、日本で亡くなることも珍しくありません。
相続が発生したとき、遺言書の有無で残される相続人の負担が何倍も変わります。
ましてや、それが異国で亡くなったとなると、相続人の苦労は容易に想像できますので、遺言書の重要性は日本国籍の方よりも高いともいえます。
外国籍の方が、日本で日本法に基づいて遺言書作成できるのかについては、次の問題を考えることになります。
遺言書作成
遺言書作成については、形式的な要件(書き方・作り方)と、成立及び効力(実際に効力を発生させることができるか)の要件があります。
日本法でいうと、形式的要件は民法に規定があり、自筆であれば本文を自署押印すること等です。
成立及び効力については、15歳以上で遺言能力があること等です。
形式的要件
遺言は遺言者の最期の意思表示であり、遺言書が効力を発揮するときにはご本人はこの世にいません。
取り返しがつかないものですし、万が一無効になっては遺言者も相続人も浮かばれません。
日本では「遺言の方式の準拠法に関する法律」によって、遺言をなるべく有効にするという遺言保護の立場が採られています。
これにより、日本法の要件をクリアしていれば、遺言の形式的要件は満たすことになります。
ただし、自筆で遺言書を作成すると、翻訳や検認など新たな問題が生じてしまうため、当事務所で外国籍の方が遺言書を作成するときはまず間違いなく公正証書で作成するようにしています。
成立及び効力
日本法でいうと15歳以上で遺言能力があれば遺言書を作成できます。
遺言の「成立及び効力」については、「遺言の成立及び効力は、その成立の当時における遺言者の本国法による」とされています。(法の適用に関する通則法第37条)
したがって、外国籍の方の本国法での遺言書成立と効力の要件を調べ、クリアできているのであれば、外国籍の方が日本で遺言書を作成することができます。
遺言書がないとどうなるか
遺言書がない場合は、外国籍の方の本国に従って相続手続をすることになります。
最終的に日本で亡くなった場合に日本の法律を適用できるケースもありますが、それは個々のケースにより異なってきます。
仮に日本に財産のある外国人が本国法に基づいて相続手続をしなければならないとき、相続人の金銭的・身体的・精神的負担はとても大きくなります。
外国籍の方が遺言書を活用できれば、残された相続人の方も安心です。
まとめ
遺言書のほかにも、死後事務委任契約や任意後見契約など、外国籍の方が利用を検討すべき制度がたくさんあります。
相続を専門とする当事務所では、外国籍の方の遺言書作成から相続手続まで経験がありますので、ぜひご相談ください。
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