相続手続は、ほとんどのケースで相続人の同意を証する遺産分割協議書が必要となります。
相続人の中に判断能力が低下している方がいると、手続の時間や難度は跳ね上がります。
当事務所で解決した、「判断能力が低下したかどうか疑わしい相続人のいる相続登記」事例を紹介します。
ご相談内容
依頼者は50代の男性
お父様が亡くなり、相続人はお母様と、依頼者の兄弟が3名の計4名。
最近お母様の判断能力が低下して施設に入所しました。 お父様名義の家の改装が必要になったところ、亡くなられた方名義のままでは手続ができないので、ご依頼者名義に相続登記をしてほしい、と来所されました。
問題点
相続人全員による遺産分割協議
遺言書のない相続手続では、相続人が法律で定められた法定相続分以外の割合で相続するとき、相続人全員が同意した書面=遺産分割協議書を作成します。
ご相談のケースでは、亡きお父様の家をご依頼者様お一人の名義にしたいというご希望のため、相続人全員の同意を証する遺産分割協議書を作成して手続を行います。
判断能力低下している方の代理人
お母様の判断能力が低下しているケースでは、低下の程度によっては、お母様の権利を守るために、お母様の代理人を選任する、つまり成年後見制度を利用しなければいけないことがあります。
この制度を利用するには書類を作成し、家庭裁判所で手続を経る必要があり、通常の相続手続よりも3~6か月ほど時間がかかります。 また、成年後見申立ての費用など、様々な費用がかかります。
当事務所の解決策
判断能力の程度を確認
お母様の判断能力がどの程度低下しているのかを確認するために、施設の介護担当者と連絡を取り、日常生活の様子をうかがいました。
その上で、主治医の意見を聞き、判断能力を医学的に診断してもらうために、認知症テストを行いました。
その結果、たしかに判断能力低下は見られるものの、顕著に低下している訳ではなく、日常の会話や簡単な受け答えであれば問題ないとの診断が下されました。
本人との面談
医学的に問題がないとの診断を受けて、当事務所はご本人(お母様)と面会しました。
自己紹介から始まり、他愛のない雑談をしながら判断能力や記憶力などを観察し、最終的に亡きお父様の家の名義や手続の話をしました。
結果的に、当事務所が数多くお会いした方と比較しても、判断能力低下の度合いは低いと考えられ、通常どおりの相続手続を行いました。
このケースでは遺産分割をするだけの判断能力はあるとされたケースですが、場合によっては判断能力が低下した方のために成年後見制度を利用しなければいけないことがあります。
ご相続人の中に判断能力が低下している方がいるにもかかわらず、専門家に相談せずに書類を作成したり登記を申請すると、後に無効になったり紛争になる危険性があります。
ご相続人の中に判断能力が低下している方がいるケースでは、相続と成年後見制度に精通した司法書士や弁護士に相談してください。