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相続放棄前の債権債務調査の方法は?どんな手段がある?

2024 6/27
相続放棄前の債権債務調査の方法は?どんな手段がある?

親、兄弟姉妹、子供、叔父叔母など親族が亡くなった場合、必ず「相続」の問題が生じます。

相続が発生して自分が相続人であることを認識したとき、まず第一に「財産がいくらあるのか?自分以外の相続人は誰なのか?相続するのか放棄するのか」が気になる方が多いかと思います。

時には、父母が離婚したあと、父(あるいは母)と30年、40年以上音信不通の絶縁状態になっており、突然父母の死亡通知を役所や債権者から受ける方もいます。

相続するのか相続放棄するのかに悩んでおり、判断材料として相続財産がどの程度あるのか調査したいという方に、相続財産調査ができるのか、調査の方法、調査にあたり注意すべきことをまとめました。

目次

相続放棄とは?

相続放棄とは?

相続放棄のことを「自分は何も遺産を受け取る意思がない。だから放棄だ。」と考えている方が多くおられますが、これは大きな間違いです。

相続放棄は家庭裁判所に対して行う法律行為です。

相続放棄は期間内に家庭裁判所に対して行わなければならず、期限を超過するとすべてを相続したとみなされてしまいます。
相続放棄=裁判所の手続ということを認識しておかないと、後から債権者に請求を受けてしまうことがありますので注意しましょう。

相続放棄の期限はいつまで?

相続放棄の期限はいつまで?

相続放棄は家庭裁判所に対して行う法律行為ですが、いつでも好きなときに申請できるわけではなく、期限があります。

原則は自己が相続人になったことを知ってから3か月

相続放棄は、①相続が発生し、②自己が相続人であることを知ってから3か月以内に行う必要があります。

相続の大原則は「単純承認」です。
単純承認とは、相続を単純に承認する、つまり「相続による権利、地位、財産をすべて受け入れます」という意味です。

相続が発生し、自己が相続人であることを知ってから3か月以内を経過すると自動的に単純承認になるため、単純承認を覆したい方が、3か月の期間内に相続放棄をすることになります。

相続放棄では、この3か月の期間がいつから開始するのかでしばしば問題になります。

葬儀に参列した、他の相続人から死亡の連絡を受けた

亡くなった方と生前連絡を取っており、または関係が疎遠ではなく死亡後すぐに連絡を受けたり、葬儀に参列したような場合は、被相続人の死亡日がそのまま3か月の期間開始日です。

債権債務の存在を知らず、知らないことに正当な事由があるとき

亡くなった方と疎遠になっており、死亡の事実だけは知っていたものの、相続するだけの債権債務が存在するとは思っていなかったケースがあります。

よくあるのは亡くなった方が自分(相続人)と疎遠になっている兄弟姉妹で、配偶者や子供がおらず死亡し、死亡する直前まで生活保護を受給していたケースです。

このようなケースでは相続人は兄弟姉妹の生活状況をまったく理解しておらず、しかも生活保護を受給していることから相続するような財産(不動産や多額の預貯金)など存在するはずもない、反対に債務も存在しないだろうと考えている相続人がほとんどです。

この場合、相続人が債権者から催告や請求を受けた時点で、自分に相続すべき財産があることを初めて認識し、かつそのことについて正当な事由があると考えられますので、相続放棄の期間である3か月の開始時期は「債権者からの通知を受領した日」となります。

相続か放棄か悩んでいるけど財産調査できる?

相続か放棄か悩んでいるけど財産調査できる?

債権者からの通知を受けて初めて相続の発生を認識した相続人や、相続の開始自体は死亡時点で知っていたものの相続するか相続放棄するか迷っている場合に相続財産の調査ができるのか、というと相続財産調査は可能です。

相続財産調査を行うにあたり、関係各所に対して「被相続人〇〇の相続人△△」として請求をしていくことになりますが、これはあくまで法定相続人として、相続するのか放棄するのかの判断材料のための調査でしかないため、なんの問題もありません。

ただし、相続財産調査の過程で判明した預金を引き出したり、解約したり、金銭や物品を受領してしまうと「相続財産を引き継いだ」とみなされて遺産相続放棄ができなくなります。

財産調査をすると相続放棄できなくなる?

財産調査をすると相続放棄できなくなる?

先ほど説明したとおり、相続財産の調査と相続放棄の選択は関係がありませんので、相続財産調査をしたあとに相続放棄を選択しても何の問題もありません。

相続財産を調査するために故人の預金通帳をもって銀行窓口に行き、相続届出書などの必要書類を提出したとしても、相続放棄ができなくなるわけではありません。

相続放棄するか判断するための財産調査方法は?

相続放棄するか判断するための財産調査方法は?

相続放棄するか迷っている場合に相続財産調査を行う方法は、調査したい財産ごとに異なります。
相続財産の調査手段を順番に見ていきましょう。

預貯金

生活しているほぼすべての方が保有している相続財産が預貯金です。

通帳が存在する場合、その銀行の支店に連絡し、保有口座の照会をすれば、通帳のある支店だけではなく、同一氏名、生年月日、住所などと一致する口座の有無を確認することができます。

通帳が存在しない銀行の口座を確認する場合は、最寄りの銀行窓口で現存照会をすることで故人名義の口座を確認することができます。

不動産

故人名義で所有している物件の場合は、法務局で発行できる不動産登記事項証明書で権利関係を確認することができます。登記事項証明書には所有者の住所氏名のほか、住宅ローンなどの借入がある場合は銀行の抵当権(担保権)が付着しています。

故人名義の不動産があるかどうかが分からない場合、役所に対して「名寄せ」をすることができます。

名寄せとは、市区町村に対して故人の住所、氏名、生年月日と一致する所有者の不動産を一覧にして交付してもらう方法のことで、発行される書類を「名寄せ台帳」と呼びます。

名寄せ台帳の請求は市区町村ごとに行わなければならないため、不動産をどこで所有していた可能性が高いのかある程度絞って照会する必要があります。

有価証券、株式

有価証券、株式を保有している場合、毎年何回かにわけて証券会社から故人の自宅住所あてに報告書などが届くため、自宅に該当する書類があるかを確認する方法が一般的です。

仮に証券会社から書類が届いていない、もしくは株式を保有していることはわかるが書受け会社が分からない場合、証券会社を網羅的に把握したい場合は、「証券保管振替機構」に対して開示請求を行えば、故人が保有している株式の証券会社を突き止めることができます。

債務の調査方法

相続時の債務の調査方法

相続放棄でもっとも多いのが債務の調査です。

債務の調査の場合、金融機関、消費者金融、クレジットカード会社など、一定の法人に対する債務は調査する手段があります。

調査するのは主に「日本信用情報機構(JICC)」、「指定信用情報機関(CIC)」、「全国銀行協会(JBA)」の3か所です。

一方で、個人的に友人や知人から借り入れている借金、役所への未払い公租公課などは信用情報に記載されませんので、自宅への郵送物や役所への問い合わせで照会することになります。

相続放棄するか検討段階での財産調査で注意すべきこと

相続放棄するか検討段階での財産調査で注意すべきこと

(1)故人の通帳や現金の管理

故人名義の通帳は、そのまま単に保管しているだけであれば相続したことにはなりませんので、通帳を持ったまま相続放棄することができます。

ただし、通帳から現金を引き出したり、解約しようと銀行窓口で手続きを行う等する行為は、相続したとみなされる恐れがあるため、やめましょう。

また、現金を保管する場合も、費消すると相続財産を処分した=相続したことになるため、必ず自分の財産とは明確に分けて(例えば封筒にメモ書きをして別途保管して)おくなどしましょう。

(2)相続放棄の期限に注意

相続放棄は期限があります。

債権債務調査に時間がかかり、放棄の期間を過ぎてしまうと相続放棄ができなくなります。
もし期限を過ぎてしまいそうな場合は、家庭裁判所に「期間の伸長」を申し出ることができますので、ためらわずに伸長手続きを行いましょう。

(3)債権者との交渉

債権者は、相続人を突き止めた時点で1円でも多く債権を回収したいと考えています。

債権者から通知や連絡があったとき、下手に交渉したり対応すると、相続したと誤解されたり、トラブルになりかねません。債権回収の望みが薄いとわかった時点で、債権者が半ば脅迫や嫌がらせのような行為を行うことも珍しくありません。

債権者に直接債権債務を尋ねるときは、債権債務の関係があったのか、あるなら証拠書面を提示してほしいという事実関係だけに話を終始しましょう。

債権者からの弁済の請求や交渉があったとしても応じず、「相続放棄を検討している。」とだけ伝えましょう。また、後日の証拠のために、なるべく口頭ではなく書面でやり取りすることが望ましいです。

債権債務調査、相続放棄を司法書士に依頼するメリット

債権債務調査、相続放棄を司法書士に依頼するメリット

債権債務調査は債権者とのやり取りが生じることがあり、慎重な言動が求められます。
また、相続放棄を見越して行うのであれば、期間内に迅速な手続が必要であり、平日の日中に動くこともあります。

司法書士は相続に関する法律の専門家であり、債権債務調査に精通しています。
司法書士に依頼していただくことで、債権者とのやり取りを任せられ、迅速かつ確実に調査を行うことが可能です。

また、相続放棄をする場合、家庭裁判所に対して申し立てをすることになりますが、裁判所への書類を作成できる専門家(士業)は弁護士か司法書士だけです。

弁護士よりも司法書士の方が一般的に業務を素早く、かつ安価に行うことが多いため、コストを抑えつつ債権債務調査から相続放棄までをまとめて依頼することができます。

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