このガイドでは、エンディングノートの定義と目的、エンディングノートを書く適切な時期、作成のメリット、選び方、書くべき項目と詳細な書き方、注意点、そして書き終えた後の手続きについて解説していきます。
エンディングノートの定義と目的
エンディングノートは、自分が亡くなった後に家族や親族が手続きや決断をする際に必要な情報をまとめた書類です。
エンディングノートの目的は、亡くなってしまった後でも自分の思いや遺したいメッセージを伝えること、家族の負担を軽減すること、自分の経済状況を把握すること、そして自分の状況を整理し今後の人生をより穏やかに過ごすことです。
エンディングノートと遺言書の違い
エンディングノート
エンディングノートは、個人の意思や望む最期の過ごし方を記録するための文書です。
これには、人生の終焉に向けての具体的な希望や意思の表明が含まれます。
例えば、葬儀の希望や埋葬方法、臓器提供に関する意思などが挙げられます。
エンディングノートは、実生活での要望や、葬儀方法、手術や延命治療についての意思など、ご自身の身体や生活に関する希望を書き連ねて第三者にも分かりやすく意思表示することが主な目的です。
遺言書
一方、遺言書は、財産や資産の分配に関する相続の仕方を記載する法的書面です。
遺言書は法的効力を持ち、ご自身が亡くなった後に、相続人や受遺者が遺言書に従って財産を承継します。
遺言書を作成することによって、自分の財産の行き先を決めておき、相続人同士の紛争や混乱を未然に防いだり、あるいは紛争の論点を減らすことができます。
エンディングノートを書く適切な時期
エンディングノートはいつでも書くことができますが、できるだけ早めに作成することが重要です。
緊急の事態や急な変化が起きる前に、冷静な状態で書き進めることができます。
意思能力や判断能力が低下してしまってからでは、エンディングノートを作成しても本当にご自身の本意なのかを親族や周囲の関係者が判断できない可能性があります。
エンディングノートは一日で作成するようなものではありませんが、なるべく早めに少しずつ作成していき、こまめに半年~1年に1回程度見返したり加筆修正していくことが望ましいでしょう。
エンディングノートの作成メリット
エンディングノートの作成には、さまざまなメリットがあります。
最後のメッセージ:自分の思いを託す
エンディングノートを作成する最大のメリットは、ご自身の考えを客観的に明示できることです。
その中で、ご家族友人知人など、ご自身に関わる人達に対し、日常生活では伝えられない思いを書き留めることも可能です。
以下に、最後のメッセージを書く際に考慮すべきポイントをいくつか挙げました。
1.目的の明確化
誰に何を伝えるためのメッセージなのかを明確にしましょう。
その方がメッセージを読むときは、つまりご自身が亡くなっているか意思表示できない状態になっていることが多く、そのメッセージが直接言葉として相手に伝わるため、誤解のない表現で記載しましょう。
2.感謝の表現
最後のメッセージでは、感謝の気持ちを表現することが推奨されます。
丁寧な言葉や感謝の意を示すフレーズを使用し、関係者や支援者への感謝を明確に示しましょう。
感謝の言葉は、相続人や残された方々がその後歩んでいく人生の中にずっと残り続けます。
前向きな感情は周りの方々に良い影響を及ぼすだけでなく、相続人間の紛争の可能性を下げることにもつながります。
3.経験や教訓の共有
最後のメッセージでは、自分の思い出、経験や教訓を共有することができます。
相続人や関係者が知らないあなたの一面を知ることができ、人生の先輩として教訓や家訓を伝えることで、残された相続人が人生をより豊かにすることができます。
以上が、最後のメッセージを書く際に考慮すべきポイントです。これらのポイントに基づいて、自分の思いを最後のメッセージに託してみてください。
あなたに合ったエンディングノートの選び方
次に、エンディングノートの選び方について考えてみましょう。
自分に合ったエンディングノートを選ぶためには、以下のポイントを考慮しましょう。
人生を振り返りたい場合は、自分史や履歴が書けるノートを選びましょう。
備忘録として活用したい場合は、銀行口座や保険の項目があるものを選びましょう。
エンディングノートには、書くべき項目と詳細な書き方があります。以下の項目を参考に、自分のエンディングノートを作成しましょう。
エンディングノートに書くべき項目と詳細な書き方
エンディングノートにどのような項目が含まれるかを詳しく説明します。
自分の基本情報
エンディングノートでは、名前、生年月日、住所、電話番号、メールアドレスなどの基本情報を記載する必要があります。また、重要な文書やパスワードのリストなど、個人情報の保護に関連する情報も含めると良いでしょう。
最近では故人のPC、スマホなどのデジタル機器を「デジタル遺品」と呼び、パスワード解除方法やデータの保存、消去、さらにはSNSなどのアカウントの削除が問題になったりします。
自分以外の人がパスワードを確認する必要が生じたときのために、確認方法をまとめた情報はとても重要です。
財産・資産について
自分の財産や資産に関する情報をエンディングノートに記載することも重要です。
銀行口座、不動産、車、株式、保険、投資など、所有している財産や資産を一覧にしましょう。さらに、それらの資産の詳細な情報や管理方法、相続に関する希望なども追記してください。
相続の分野で相続人から良くあるご相談が、「故人の財産が分からない」というものです。
相続人は想像以上にあなたの財産の詳細を知りません。
相続人が困ることのないように、預貯金、株式、不動産などの情報はまとめて管理しましょう。
身の回りのこと
エンディングノートには、日常生活に関連する情報も含めることをおすすめします。
例えば、身体的な情報でいうと健康状態やアレルギーの情報、服薬や治療に関する情報、既往歴、信頼できる医療機関や医師の連絡先、手術や入院に関する希望、延命措置やドナー提供の可否などです。
日常生活についての情報では、さらに、家具・家電製品の保証書、公共料金の支払い状況や引き落とし口座、お客様番号などの契約番号、食事や趣味嗜好の希望も大事です。
家族・親族について
自分の家族や親族に関する情報をエンディングノートに書くことも重要です。
妻、子供、孫などの名前、連絡先、関係性を明記しましょう。
エンディングノートを見る人は、「あなたのことについて何も知らない」前提で書くとより丁寧です。
親しい友人・知人について
エンディングノートには、自分の親しい友人や知人に関する情報も含めることができます。連絡先や関係性を明記し、特定の遺産や贈り物についての希望や意思を追記することも考慮しましょう。
あなたが亡くなったとき、誰に亡くなったことを連絡してほしいのかの目安になります。
ペットについて
もしペットを飼っている場合は、エンディングノートにペットに関する情報を記載することもおすすめです。
ペットの名前、種類、年齢、特別なケアや食事に関する指示を記載しましょう。ペットの保護や世話を引き継ぐ人についても明記しておくと良いでしょう。
高齢社会、核家族化、近隣者との関係性の希薄化などから、高齢独居の方が亡くなったり認知症や急病で自宅が無人状態となったとき、ペットが放置される案件が非常に多くなっています。
ペットが自宅に置き去りにされることのないように、動物病院や関係者の方に対してペットの件をしっかり伝えておきましょう。
医療・介護について
終末期や高齢化に備えて、医療や介護に関する情報をエンディングノートに含めることも重要です。信頼できる医療機関や医師の情報、保険の詳細、希望する治療方法などを明記しましょう。また、介護を受ける場合や自分自身が介護する場合に関する意思や計画も追記すると良いでしょう。
葬儀・お墓について
エンディングノートには、自分の葬儀やお墓に関する希望や指示を明確にすることも大切です。
基本的な情報では宗派がある方は明確にしましょう。
近年では大々的な葬式は行わず直葬を希望する方も増えています。直葬の中でも、副葬品や献花の希望などを細かく指定することができますので、ご自身の最期をイメージしながら具体的に記載しましょう。
そのほか、葬儀だけでなく供養の仕方、一族のお墓がある方は永代供養や墓じまいの希望、墓を立ててほしい方は墓の値段、デザイン等詳細に記載しましょう。喪主や弔問者についての情報も有益です。
連絡先
最後に、エンディングノートには緊急時や自分が亡くなった後に連絡をするべき人たちの連絡先を明記することも重要です。家族や親戚だけでなく、医師、司法書士など法律の専門家、銀行や保険会社の連絡先、信頼する友人や知人の情報なども含めましょう。
自分からのメッセージ
エンディングノートの最後には、自分自身からのメッセージを記載することで、最後の意思や思いを伝えることもできます。家族や友人、知人への感謝の気持ちや遺したい言葉など、大切なメッセージを綴りましょう。
以上が、エンディングノートに書くべき項目と詳細な書き方の一連のガイドです。この情報を基に、重要な情報を整理し、自分自身や大切な人たちの未来に備える貴重な文書を作成してください。
エンディングノート作成時の注意点も忘れずに確認しましょう。
以下のポイントに留意してください。
- エンディングノートの保管場所を家族に伝える
- 法的な効力がないことを理解する
- 銀行口座の暗証番号は記入しない
- 書き終えた後も定期的な見直しを行う
- 現在の気持ちを書き込む
- 空欄を気にしない
- 家族との相談を経て作成する
- 法的な効力のある遺言や死後事務委任契約を検討する
これらの項目と注意点を参考に、エンディングノートの作成を始めましょう。
まとめ
エンディングノートは自分の意思を反映させ、家族や親族の負担を軽減するために非常に重要な書類です。
早めに作成し、適切な情報を記載することで、亡くなった後も自分の思いが伝わり、円満な手続きができるでしょう。ぜひ、このガイドを参考にエンディングノートの作成に取り組んでみてください。
エンディングノートは、未来を見据えた重要な文書であり、個人の遺志を実現するための道しるべでもあります。自分自身と大切な人々の将来に対する心配を軽減し、安心感を得ることができます。
これらの文書を作成することで、自身の遺産や哲学を受け継ぐことができ、自分の人生の細部に対して積極的に関与することができます。
ただし、エンディングノートは法的効力がありません。
法律に則った遺産承継や葬儀のことを依頼する場合は、遺言書や死後事務委任契約を検討しましょう。
遺言書、死後事務委任契約は司法書士などの相続の専門家に相談ください。