「権利書」「権利証」とは、不動産の所有者に対して法務局から交付される書類の1つです。
正確には新たに登記名義人になる人に対して交付されますが、日本においては不動産の所有者のみが有する重要な書類に分類され、これを保有することが所有者であることの疎明資料の1つになっています。
万が一権利証を紛失してしまったとき、法務局で再発行や紛失届ができるのか、不動産の相続登記手続きで権利書がない場合、どうすれば良いかなどを解説します。
相続登記とは?所有権移転登記とは?
相続登記とは、亡くなった方名義の不動産(戸建て、マンション、土地など)を相続によって相続人の名義に変更する登記手続きをいいます。
所有権移転登記とは、「所有権=不動産を保有する権利」を誰かに移転させる登記手続の総称で、所有権移転登記は原因によって「相続」「売買」「贈与」などがあります。
権利書とは?権利証・権利書・登記識別情報通知の違いは?
権利書とは、不動産の名義人(所有者)になった人が、名義人になったときに法務局から発行される「不動産の名義人である(権利を持っている)ことを証明する証書」のことです。
「登記済権利証書」を省略して「登記済証」「権利書」「権利証」と呼ぶことがありますが、意味はすべて同じです。
法務局が管理する不動産の登記情報(=登記簿)には、不動産の地番、地目、地積など基本的な情報が記載されているほか、所有者や所有者に関する権利関係(銀行の抵当権など)が記載公示されています。
「登記済証」「権利書」「権利証」は、登記名義人になる際に法務局から1回限り交付される書類ですので、ある不動産についてこの権利証を持っていることで、所有者であることが推定されます。
登記識別情報通知とは
登記識別情報通知とは、平成17年に改正された不動産登記法に基づき、「登記済証」「権利書」「権利証」の代わりに発効されるようになった書類です。
全国各地にある法務局の不動産の登記情報は、従前は手書きで記載管理されていましたが、すべてコンピュータ管理に移記され、各法務局の「オンライン指定日」と呼ばれる日以降に申請した権利関係については登記識別情報通知が交付されるようになりました。
つまり、登記識別情報通知とは、昔で言うところの「登記済証」「権利書」「権利証」と実質的に意味しているものは同じです。
登記済権利証と登記識別情報通知との違いは?
登記済権利証と登記識別情報通知は、どちらも登記名義人になる際に法務局から交付される重要書類であることは共通していますが、呼称以外に大きな違いがあります。
登記済権利証(=オンライン指定日以前の登記名義人に交付されていた書類)は、「登記申請単位」で交付されていたのに対し、登記識別情報通知は、「人ごと」「不動産ごと」に個別に交付されるようになりました。
つまり、例えば複数の人間で共有する集会所、山林、田畑、私道などの不動産の場合、昔の登記済権利証はまとめて1通しか交付されず、共有者の誰かが代表して原本を保管する方法しかありませんでした。
そのため、原本を保有していない他の共有者が相続や売買をするために権利書が必要になった際、権利書が手元になく、誰が保管しているのかも保管場所もわからなくなっていることが多々あります。
登記識別情報通知の場合、複数名で共有する不動産だとしても、各名義人ごとにそれぞれ登記識別情報通知が交付されるため、共有者の一部が不動産を売却、相続することになったとしても、他の共有者が管理する権利証を預かる必要はありません。
登記済証権利書・権利証・登記識別情報をなくしたら再発行できる?
登記済権利証・権利書・登記識別情報通知は、それぞれ名義人になるとき1回かぎり交付される書類です。
名義人になる際に交付を受けていない、あるいは災害や引越で紛失してしまった場合に、法務局で登記済権利証・権利書・登記識別情報通知を再発行してもらうことはできません。
権利証・登記識別情報通知の紛失届の申し出はできる?
仮に権利証や登記識別情報を紛失していることが判明した場合に、法務局に対して紛失届の申し出ができるかというと、紛失届などの手続はありません。
紛失ではなく、盗まれたり登記識別情報の暗証番号を盗み見られて第三者に不正に登記されるおそれがある場合には、紛失届ではなく、「不正登記防止申し出」という制度を利用することができます。
登記識別情報通知が法務局から交付されないことはある?
登記識別情報通知は、「登記名義人になる人が申請人となっている」場合に、その申請人に対して交付される書類です。
そのため、所有権の登記名義人になっているものの、名義人自身が申請人になっていない場合には、登記識別情報通知が交付されません。
「名義人自身が申請人になっていない場合」とは、例えば申請人の債権者が差し押さえの前提として債権者代位で登記を申請した場合や、相続人の1名が保存行為として法定相続分に基づく相続登記申請をした場合の他の相続人を指します。
また、登記申請の際に「登記識別情報の通知を希望する」か否かを選択することができるため、登記識別情報の通知を希望しない旨を届出した場合には、登記識別情報通知の交付を受けることができませんし、後日交付を希望することもできません。
登記済権利証・登記識別情報はどんな時に必要?なくした場合のデメリットは?
登記済権利証や登記識別情報が必要になるとき
登記済み権利証や登記識別情報通知が必要になるのは、主に不動産を売却するとき、ローンの設定や借り換えに関して抵当権を設定するときなど、「登記名義人が自分の権利に不利な手続をする」ときです。
不動産を売却するとき、贈与するとき、抵当権の設定をするときの登記申請に関する添付書類として、登記済権利証や登記識別情報通知を法務局に提出することになります。
紛失すると所有者であることの証明ができない?
「登記済権利証や登記識別情報通知がない=所有者ではない」ことにはなりませんが、登記済み権利証や登記識別情報を持っていることは所有者であることの強力なな疎明の1つになります。
特に、登記済権利証・登記識別情報通知が必要となるのは、不動産を売却するとき、不動産に抵当権を設定するときなど、不動産の権利関係に関する重要な場面ばかりです。
司法書士や金融機関、不動産仲介業者はそれぞれ不動産の所有者であるかを厳格に確認する本人確認義務がありますので、権利証を紛失している場合は、他の資料や書類の提出、手続きが必要になりことがあります。
紛失している場合はどうなる?具体的なデメリット
登記申請時に登記済権利証・登記識別情報通知を紛失しており提供できないときは、「事前通知」「本人確認情報」「前住所通知」「上申書の作成」などと呼ばれる各種代替手段を取ることになります。
これらの手段を用いることで権利証がなくても手続自体は可能となりますが、「本人確認情報」「上申書」と呼ばれる手続きは、司法書士が所有者に本人確認のうえ権利書がない事情を書類にして法務局に提出することになりますので、現実的なデメリットとして専門家報酬が高くなります。
相続手続は権利証・登記識別情報通知がなくても良い?
相続登記手続の場合、売買や贈与に基づく所有権移転登記と異なり、原則は登記済権利証・登記識別情報通知がなくても手続可能です。
しかし、不動産登記記録の情報、戸籍が集まらないなどの事情により、例外的に権利証・登記識別情報通知を提供することがあります。そのときに権利証がないと、先ほどの例に挙げた「上申書」と呼ばれる書類を作成することとなり、専門家報酬が加算されます。
本人確認情報は司法書士以外も作成できる?
登記済み権利証・登記識別情報通知がない場合の「本人確認情報」と呼ばれる代替書類は、司法書士以外の人が作成することはできません。
また、本人確認情報は登記申請時に作成する書類ですので、申請時以外に前もってあらかじめ作成しておくこともできません。
登記済権利証・登記識別情報通知がないときに相談すべき専門家は?
相続をはじめとする不動産の登記手続きの専門家は、司法書士です。
登記済み権利証や登記識別情報通知がないときは、「本人確認情報」「上申書」「前住所通知」「事前通知」など特殊な手続きを経ることになりますので、必ず司法書士に相談しましょう。
当事務所は司法書士の中でも、特に相続に特化した専門事務所です。相続登記手続きのことでお悩みの方は、ぜひ一度ご相談ください。
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