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【相続登記手続相談事例】相続と相続放棄で迷っているケース

2023 11/22
【相続登記手続相談事例】相続と相続放棄で迷っているケース

相続手続きは相続するか相続放棄をするかによって取るべき行動が変わります。

相続する場合は早急な対応が必要になることは多くありませんが、相続放棄する場合は家庭裁判所に書類を提出しなければなりません。

目次

【ご相談内容】

ご相談者は50代の女性。
先週父が亡くなったとのことで相続のご相談に来所されました。

ご相続人はご相談者を含めて3人の兄弟姉妹、関係は良好とのことで、相続でもめる心配はないようです。
しかし、相続人である兄弟姉妹はそれぞれ父と5年ほど疎遠になっており、亡くなったときの債務の状況がまったく分からないとのことで、債務が多い場合は相続放棄をしたいとのことでした。

【当事務所の解決方法】

相続手続きは相続するか相続放棄をするかによって取るべき行動や費用が大きく変わります。

相続放棄はマイナスの財産だけでなくプラスの財産もすべて放棄してしまう手続であり、相続を知ってから3か月以内に家庭裁判所に申し立てをすることになります。

また、相続放棄前に財産を処分(財産を受け取ったり、債務の返済)すると「単純承認=プラスの財産もマイナスの財産も相続する意思表示をした」とみなされてしまうため、財産の扱いは慎重に行う必要があります。

ご相談の事例は相続放棄を視野にご相談に来られたため、まずは相続をするのか、相続放棄をするのかを決断いただくための資料集めから始めます。

当事務所がご提案した解決方法は主に3つです。

1.分かっている債務の返済や財産の受け取りを控える

ご相談時点で相続するのか放棄するのかが不明なため、まずはご相談時点で分かっている債務の返済や財産の受け取りを控えてもらうように依頼しました。

具体的にはお父様が亡くなる直前の債務(医療費、介護費、携帯電話料金、公共料金の支払)を保留していただきました。
また、お父様は自宅の一部を他人に賃貸し、家賃収入を得ていたため、その家賃の受け取りも借主に依頼していったん保留してもらうことで対応しました。

これにより、今後万が一相続放棄をすることになっても単純承認みなしで放棄ができなくなるリスクを回避することができます。

2.相続するか放棄するかの判断

次に早急な財産の概要の把握のため、財産調査を行いました。
具体的には、次のような方法です。

預貯金

通帳がある銀行に対して残高証明書の発行、通帳のない銀行は大手銀行を筆頭に何行かに対して現存照会(取引があるか否かを回答してもらう)を行い、預貯金の概要を把握します。

株式

証券保管振替機構に対して開示請求を行い、株式を保有しているか否かを調査します。

株式や投資信託など証券会社に対して何らかの商品を保有している場合は証券保管振替機構に証券会社の情報が記載されます。
そのほか、亡くなったお父様の自宅に証券会社や株式名簿管理人の信託銀行から書類が届いていないかを確認してもらいました。

不動産

お父様が所有していた自宅の市区町村に対して「名寄台帳」を請求しました。
名寄せ台帳は、お父様名義が同一市区町村内で所有する不動産の一覧が記載されます。

公衆用道路や用悪水路など、固定資産税がかからないものの所有共有している不動産を調査する場合に名寄台帳を取得します。
これにより不動産漏れの可能性を少なくすることができます。

債務

亡くなった方の債務を調査するには日本信用情報機構(JICC)、指定信用情報機関(CIC)、全国銀行協会(JBA)に対して開示請求をします。

JICC、CIC、JBAに対して開示請求を行うことで、「クレジットカードの未払い金」「住宅ローンなど銀行借入金の有無」「消費者金融からの借入の有無」を調査することができます。

この3つに対して行った開示請求の結果、調査書に「該当なし」「取引なし」と記載されている場合は、銀行、クレジットカード会社、消費者金融に対する債務はないと考えて問題ありません。

問題点は個人(友人、知人、親族など)からの債務分からない点です。これは、亡くなった方の自宅に借用書などがないか確認してもらうほか、不動産に抵当権や仮登記が設定されていないかを確認する方法しかありません。

3.相続の方針決定と速やかな相続手続

1と2の結果、亡くなったお父様は大きな債務がないことが分かりましたので、相続をしていただくことで方針を決定し、止めていた債務の支払や財産の受け取りを再開していただきました。

その後、不動産は老朽化で管理が大変なために相続したのちすぐに売却するものとして不動産業者と連携して手続きを進め、預貯金は売却までの運転資金のために速やかに解約し相続人に法定相続分で取得していただきました。

ご相談のケースは結果的に相続することになったものの、相続放棄が選択肢にある場合は、財産の扱いを慎重にしなければならないほか、速やかに財産調査をしなければなりません。

不動産の相続登記や相続放棄は司法書士や弁護士にしかできず、税理士や行政書士が行うことはできません。

当事務所は相続に特化した司法書士事務所ですので、別途他の事務所に相談いただくことなく、相続時の相続登記手続や預貯金解約、相続放棄時の家庭裁判所への書類作成や提出ができます。

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