高齢化社会、核家族化などにより、ご高齢になってから身寄りがない方や、親族と疎遠になってしまった方が非常に多くいます。
自分の財産などを相続してもらう人がいない、または相続手続を頼める人がいないという方も多くなってきています。
総務省の調査によると、2021年に全国の市町村で管理していた「無縁遺骨」は約6万柱、引き取り手のない死者は3年半で10万6000人にも上ると言われています。
身寄りのない方が自分らしい最期と自分自身の相続(お亡くなりになる直前~亡くなった後)のことを考えて生前に対策、準備したい場合や、お亡くなりになった後の、葬儀、火葬、年金の停止など死後の事務手続、遺品の整理、預金の解約、家の引渡しなど、相続の手続を相談したい場合、どの専門家に相談すればいいのでしょうか?ポイントをご説明します。
1.終活とは
終活とは、自分が元気な内から、自分らしい最期と自分自身の相続(お亡くなりになる直前~亡くなった後)のことを考えて生前に対策、準備しておく活動のことです。
終活は何歳から始めるべき?
終活に決まった定義や方法はありませんが、早い時期から少しずつ行う方が良いと言えます。
なぜなら、年齢を重ねるごとに整理しなければならない事柄が増え、反比例して判断能力や筋力などは低下していき、本当に終活が必要なときに思うように行えない可能性があるためです。
また、不慮の事故や病気の可能性もあります。
自分が自分らしく最期を迎えるために、思い立ったときから少しずつ行動していきましょう。
終活の目的は?
終活の目的は「自分の人生を自分らしく終えるために準備して、生前の不安を解消する」ことです。
終活は「人生の終わり方に向けた活動」なので、どうしてもマイナスイメージを持つ方がいますが、そうではありません。終活によって自分がいつまでも自分らしく前向きに明るい気持ちで生きていけるように心を軽くする活動なのです。
漠然と抱える将来、自分の死後の悩みを整理し解消することで、その後の人生をより良く過ごすことができます。
2.終活は具体的に何をする?
自分らしい最期を迎えるために、身辺の整理、財産の整理、友人知人の情報整理、亡くなった後の葬儀や供養の希望などをエンディングノートなどに書きまとめていきます。
自分自身だけで行う場合は、まずエンディングノートなどに自分の希望や現在の情報などを整理して書き留めていきましょう。終活をより良く、確実に希望を実現するためには、司法書士や弁護士など相続の専門家に相談しながら、遺言書や死後事務委任契約を作成していきます。
2-1.終活を自分で行う場合
身辺の整理
終活での身辺整理とは、主に自分自身の身体のこと、将来的な生活拠点の希望などを記します。具体的には次のようなことを検討します。
手術や医療行為に関すること
持病や手術歴、常備薬、主治医など健康状態に関することに加え、延命治療を希望するか、治療方法があるのか、希望する病院や医師がいるかなど、自分自身が怪我や大病をして意思表示できなくなったときに望まない治療や延命をされないために、意思を表示します。
最期の場所のこと
どこでどんな最期を迎えたいか、病院や施設がいいのか、自宅で最期を迎えたいかなどです。
施設も個室や大部屋、グループホーム、サービス付き高齢者住宅など様々です。
看取りを行ってくれる施設やホスピスもあります。
エリアの希望だけでなく、施設や病院の場合は金額、大部屋か個室かなども希望を記します。
葬儀のこと
宗派の有無、どんな葬儀にしたいか、場所や規模、知らせたい人、金額、喪主を任せたい人などです。
近年では通夜告別式を行わず、直葬(火葬だけ)する場合や、知人を招かない家族葬を望む方が増えています。
また、葬儀会社との間で事前に契約を交わしていたり、葬儀会社の共済に加入している場合は、葬儀会社の名称や連絡先を記載しましょう。
供養のこと
供養の方法、場所、金額、お墓などです。
海洋散骨や樹木葬、合同葬、など供養方法も近年多種多様になっています。
永代供養後の墓参りや墓じまいのことも考えてみましょう。
遺品のこと
形見分けの有無、処分方法(寄付、価値をわかる人にあげるなど)、身の回りや家にある物に関する大切な物の最後についてです。
ここでいう遺品とは、金銭的価値の大きくないもので、ご自身が大切にしている物などを想定しています。
金銭的価値の大きな物になると遺品ではなく相続財産として譲渡することになるため、エンディングノートではなく遺言書に記載するようにしましょう。
財産の整理
終活ではご自身の財産についても整理します。財産とは現金、預金、車、不動産、株式などのプラスの財産のほか、借金、定期的な支払(公共料金、公租公課、サブスク)のマイナスの財産も含まれます。
お金のこと
治療費、施設費用、葬儀や永代供養などすぐに必要になる費用の確保や、今後の自分のライフプランでいくらぐらいお金が必要になるかを試算します。
車、動産など
相続人や親しい人に引き継いでもらうのか、相続人がいない場合や身寄りがない人は財産をどのように処分するかを考えます。
場合によっては元気なうちに車を手放したり、家の中を整理していきます。
不動産のこと
相続人や親しい人に家のまま相続してもらうのか、売却してお金にして渡すのか、寄付するのかを考えます。
2-2.専門家とすすめる場合
専門家に相談しながら終活をすすめる場合、まずは相続の専門家に相談しましょう。
ご自身の希望を思いつくままに伝えることで、専門家がその人にあった終活プランを提案します。
また、専門家と契約することで、ご自身の最期を迎えたあとの死後の手続を、依頼することができます。
終活の内容を実現する方法は?
終活の中で、「葬儀」「墓」「遺品」「家のこと」などご自身が亡くなった後のことを実現するには、相続人や親族に任せるか、司法書士などの相続の専門家に依頼することになります。
エンディングノートに記載するだけでは、ご自身の財産を望む人に渡したり、葬儀や永代供養などを希望どおりに実現することができません。
終活の内容を確実に実現させるためには、「遺言書」と「死後事務委任契約書」の作成が必須です。
3.亡くなった後の手続(死後事務)とは
お亡くなりになった後しなければならない手続のことを「死後事務」と呼び、一般的には次のような死後事務手続が必要になります。
- 死亡届けの提出
- 火葬の許可証
- 葬儀の準備(葬儀会社やお坊さんへの連絡)
- 関係者への連絡
- 通夜告別式
- お骨上げ
- 永代供養
- 役所での年金停止、保険証返却、住民資格喪失、葬祭費の受領など
- 金融機関での預金の解約
- 証券会社での株式の移管
- 不動産の名義変更(相続登記)
- 不動産などの中にある遺品整理
- 病院代、施設代、携帯代、公共料金など未精算金の支払い
- 病院、施設の遺品引き取り
- 携帯、水道電気ガス、NHK、新聞、ネット契約などの解約
- クレジットカードの精算と解約
- 固定資産税、住民税、保険料などの精算
- 生命保険、火災保険などの解約や保険金の受取
- 最終月の年金受け取り
- 郵便物の回収
- 相続人調査(戸籍の取得)
- 相続人への連絡
従来は、亡くなった方の配偶者、子供、親族関係者がこれらの手続を行うことが多かったですが、近年では身寄りのない方や親族と疎遠になった方が増え、頼れる人がいないというお悩みを抱えた方が非常に多くおられます。
4.亡くなった後(死後)のことを誰かに任せたい場合
身寄りのない方が亡くなった後の死後事務(お葬式、永代供養、年金の停止、役所届け出、公共料金、家や家財の処分、遺品の整理などの手続)や、遺産承継(預貯金、株式、不動産の処分や相続など相続手続)は、司法書士などの法律専門家と予め契約をしておくことで、司法書士などの相続専門家が死後の事務手続を行うことができます。
これを「死後事務委任契約」や「遺言執行」といい、近年では特にご高齢で身寄りのない方から非常に多くのご相談、ご契約をいただいております。
当事務所でも多くのご契約をいただいており、数多くの実績があります。
死後事務委任契約について詳しい内容は、こちらをご覧ください。
5.死後事務にかかる費用
当事務所では、葬儀、火葬、永代供養、墓じまい、年金の停止などの届け出、遺品の整理、預金の解約、家の引渡しなど、お亡くなりになった後の手続(死後事務)を契約によりお引き受けしております。
そのほか、契約時に預託金50~100万円をお預かりします。
預託金は、ご契約者様の死後すぐに支払う必要のある葬儀費用、お布施、永代供養、病院施設の清算などに充当します。
6.専門家や相談先のポイント
終活に始まり、亡くなった後の事務手続(死後事務)を契約で誰かに任せたい場合、どんな専門家に相談すれば良いのでしょうか?
選択肢としては、
- 弁護士
- 司法書士
- 行政書士
- 死後事務を請け負っている法人(業者)
などがあります。
どの相談先も一長一短がありますが、まず前提として、その相談先が死後事務などに特化した専門家か否かが非常に重要です。
法律の専門家といえ、得意不得意があるため、場合によっては相談した専門家が死後事務のことを全く理解していない可能性があります。契約など形式的な部分ではなく、実際に亡くなられた方の死後事務を行ったことがあるかをよく確認しましょう。
その上で、亡くなった後の事務手続(死後事務)を契約で誰かに任せたい場合、ご本人名義の不動産があるか、相続手続(預貯金や株式の解約)があるか、が死後事務の手続を相談し、依頼する先としてのポイントになります。
もし死後の手続の中に不動産がある場合は、司法書士にご相談ください。
司法書士は上に挙げた専門家の中でも特に不動産の専門家であり、不動産の名義変更(相続登記)は司法書士にしかできないためです。
また、相続手続(預貯金や株式の解約)がある場合、不動産と併せて司法書士が解約などを行うことができますので、手続がとてもスムーズになります。
7.死後の手続を依頼する上での注意点
終活などの相続専門家か否か
終活に始まり、身寄りのない方がお亡くなりになった後の、葬儀、火葬、年金の停止など死後の事務手続、遺品の整理、預金の解約、家の引渡しなど、死後の手続は、どれか一つだけ分かれば良い訳でなく、すべて一連の流れがあります。
近年では終活や死後事務専門の法人が宣伝をしていることがありますが、それらしい名前だから安心ということはなく、しっかりと死後事務を任せられるだけの知識があるのか、法律の手続も依頼できる死後事務に特化した専門家(弁護士や司法書士)なのかを確認しましょう。
預託金の有無と管理方法
契約時には100万円程度の預託金が必要になる場合があります。
これは、契約者がお亡くなりになった後すぐに必要になる葬式、永代供養、未払い費用の精算などに充当するためです。
通常は預り金専用の口座で管理します。
契約時に預託金を預かってくれるところは、その管理方法などについて確認しましょう。
8.おわりに
相続専門の当事務所では、身寄りのない方の自分らしい最期に向けた相続生前対策、生前整理、終活から、お亡くなりになった後のお葬式、火葬、永代供養、墓じまい、年金の停止など死後の事務手続、遺品の整理、家の引渡しなど、死後の手続をすべてお引き受けしております。
さらに、預貯金の解約や不動産の名義変更など法律的に必要になる手続も一括してすることができますので、ぜひご相談ください。