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遺産分割で相続放棄はできない?正しい相続手続とは

2023 12/12
遺産分割で相続放棄はできない?正しい相続手続とは

相続人同士が、どの財産を誰がどれだけ相続するかの話し合いをすることを、遺産分割協議と呼びます。
遺産分割協議の中で相続放棄をしたと考える方がいますが、これは誤解です。

ある相続人が遺産分割協議で「相続放棄します」と発言したとしても正式な相続放棄には当たらず、債権者から借金の返済を請求される可能性があります。

遺産分割協議と相続放棄の正しい方法と考え方を理解することで、相続人同士のトラブルや債権者からの取り立てを回避することができます。

遺産分割協議と相続放棄の考え方、手続き方法や注意点を分かりやすく解説します。

目次

遺産分割協議で相続放棄ができる?

相続人同士がどの財産を相続するかを話し合う遺産分割協議の中では、相続放棄をすることはできません。

日常的な会話では「私は何もいらないから放棄した」という表現を用いることがあります。

ここで使用されている相続放棄とは「相続人同士の話し合いの結果、自分が相続する財産は何もなかった」という意味ですが、これは法律的には相続放棄ではなく、「遺産分割協議の対象になった相続財産(プラスの財産)を取得しないことが確定した」ことになり、法定相続人であること、負債を相続すること、遺産分割協議の対象になった財産以外の財産について相続する可能性があることは変わりません。

法定相続人の地位は残る

遺産分割協議の中で「相続放棄します、相続財産はいりません」という意思表示をしたとしても、これは相続人としてプラスの財産を取得しない意思表示をしただけであり、遺産分割協議後も法定相続人であることに変わりません。
つまり、法定相続人として相続手続に協力する必要があり、他の相続人同士の争いにより調停や訴訟になった場合に当事者になることもあります。

相続債務の支払義務は残る

遺産分割協議は、原則として相続人同士がプラスの財産をどう分けるのかを話し合い、被相続人が負っていた債務については債権者の同意がない限り遺産分割協議の内容に関係なく法定相続人が承継します。

つまり、遺産分割協議書で何も財産を取得しなかったとしても、後日債権者から請求を受けたときは相続人として弁済に応じなければなりません。
この債務を完全に放棄したい場合は、後述する法律上の相続放棄を行う必要があります。

法律上の相続放棄とは

法律で規定された相続放棄とは、「法律上相続人ではなくなり、プラスの財産とマイナスの財産を相続する一切の権利を失うこと」です。

この相続放棄は自分が相続人になったことを知ってから3か月以内に家庭裁判所に申立をすることで手続ができ、相続放棄が受理されると始めから相続人でなかったことになります。

自分が相続人になったことを知ってから3か月以内に家庭裁判所に相続放棄の申立をしない、または相続人として財産を取得したり処分する行為は、相続を承認したとみなされ、相続放棄ができなくなります。(単純承認みなし)

遺産分割協議とは

遺産分割協議とは、亡くなった方(被相続人)の法定相続人が話し合いで、どの財産を誰がどれだけ相続するかを決定することです。

遺産分割協議で合意した内容は書面で作成し、法定相続人全員が署名または記名と実印にて押印をします。

法定相続人同士が話し合う協議ですので、相続放棄をした人は遺産分割協議に参加することができません。
反対に、遺産分割協議に参加した相続人は、相続人としての地位を認めた上で参加することになるため、単純承認みなしとなり、相続放棄をすることができません。

遺産分割協議後に相続放棄をすることができる?

遺産分割協議は法定相続人として話し合う行為であり、自分が相続人であることを認めたことになります。

相続放棄は家庭裁判所への申述によって相続人ではなかったことになる手続で、遺産分割協議や相続財産を処分するなどした場合は法定単純承認となり、相続放棄をすることができなくなります。
つまり、遺産分割協議をしてしまうと、原則として相続放棄は出来なくなります。

遺産分割協議後に相続放棄をする方法

遺産分割協議をしてしまうと、原則として相続放棄は出来ませんが、
・遺産分割協議によって財産を取得せず、かつ相続財産を処分していないケース
・遺産分割協議自体が無効であるケース
などは遺産分割協議後でも相続放棄が認められる可能性があります。

相続放棄は「自分が相続人であることを知ったときから3か月以内」に家庭裁判所に申立をすることで行えます。

この「自分が相続人であることを知ったとき」の解釈は過去の裁判例によって様々な見解があり、例えば、被相続人の死亡後数年を経過してから多額の借金が見つかったケースで、自己が相続する財産がまったくないと信じ、かつそう信じたことに相当な理由がある場合には、相続放棄の3か月の熟慮期間は相続債務の存在を知ったときから起算すると示された判例があります。

また、遺産分割協議をしてしまった後に債務の存在が発覚したケースで、遺産分割協議書にサインをしたのは他の相続人が相続財産を取得するための手段として署名押印したのみで、自分自身はまったく相続財産を取得せず、かつ相続財産がないと信じていることに正当な理由があった場合、遺産分割協議が実態としてなされていないと考えられ、債務の存在を知ったときから3か月以内であれば相続放棄をすることができると示された判例があります。(東京高決平26・3・27)

遺産分割協議書の注意点

未成年者がいる場合

18歳未満の未成年者がいる場合、その方は自分自身が意思表示することができても、法定代理人(親や未成年者後見人)が分割協議に参加して遺産分割協議書に署名押印します。

さらに、法定代理人とその未成年の子供がともに相続人になる場合は、法定代理人と子供は利益相反する立場となりますので、家庭裁判所に特別代理人選任の申し立てをすることになります。

後見制度を利用する人がいる場合

補助・保佐

相続人の中に後見制度のうち補助・保佐を利用する人がいる場合、補助人や保佐人の代理権に「遺産分割協議」の文言があれば補助人や保佐人が遺産分割協議に参加し署名押印します。

代理権がなければ、別途代理権付与の申し立てを行うか、原則どおり本人が遺産分割協議に参加することになります。

後見

後見制度のうち後見を利用する人がいる場合、後見人が本人の法定代理人として遺産分割協議に参加し署名押印します。

さらに、未成年者のときと同じように、法定代理人(補助人・保佐人・後見人)と後見制度利用者(被補助人・被保佐人・被後見人)がともに相続人になる場合は、法定代理人と子供は利益相反する立場となりますので、家庭裁判所に特別代理人選任の申し立てをすることになります。

相続放棄するか迷っている時にしてはいけないこと

相続放棄するか迷っている、悩んでいるときに絶対にしてはいけないことが、放置です。

何も手続しないことは、相続を受け入れることと同じ結果になります。

相続したくない、放棄したいなら急いで家庭裁判所で手続しましょう。
もし自分で手続できないなら、司法書士や弁護士に相談しましょう。

次に、相続放棄するか迷っているときにしてはいけないことが、

安易に預貯金や現金を受け取ったり、借金や債務を認めたり、支払う約束や支払をしない
・医療費や公共料金、携帯電話の費用を立て替え払いしない

金銭の受け取りや債務の承認・弁済は相続することを認めていることになりますので、どんなに少額でも触ってはいけません。

そのほか、
・亡くなった方のお金を受け取った
・亡くなった方の現金、預金などを引き出した
・亡くなった方の遺品を持ち帰った、捨てた
・遺品整理をした
・家の解約、立ち合い、敷金などの清算をした
・家や預貯金の相続手続きをしようとした、既に終わっている
・車の名義変更をした
・病院、施設、未払い債務を支払っている
・公共料金、携帯代などを支払った
・債権者に、お金を支払う約束をした、一部を支払った
・借金の一部を支払った、支払う約束をした

このような行動をしてしまうと、相続したとみなされ、相続放棄ができなくなる恐れがありますので、絶対にしないでください。

もし、債権者や関係者からお金の支払いを要求された場合は、正直に「相続放棄をする予定である」ことを伝え、決して口頭でも「支払を少し待ってくれ」「もうすぐ払うと思う」「立て替えます」などの口約束をしないようにしましょう。

相続放棄を相談したい場合

相続放棄をする場合は、限られた時間の中で裁判所に書類を提出しなければなりません。

確実な手続ができるよう弁護士か司法書士に相談しましょう。(行政書士は裁判所への提出書類作成業務ができません)

相続を扱う弁護士や司法書士なら、未受領や未払いの金銭の問題や、ご自宅の遺品、今後気を付けるべき点などを含めてアドバイスしてくれます。

ご相談フォームはこちらこちらのフォームよりお気軽にご予約ください。

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