MENU

電話・メールでご相談
メール24時間受付中

お電話はこちらから WEBからのご相談はこちら

認知症と不動産名義変更の知っておくべきポイントと対策

2023 10/23
認知症と不動産名義変更の知っておくべきポイントと対策

認知症の進行や判断能力の低下に伴い、高齢のご本人が自分で財産管理をすることが難しくなるケースがあります。

このような場合、本人が施設に入所し、本人が住んでいた不動産を売却して、その分を介護施設費用にしたいケースがありますが、認知症になった方の不動産売却は簡単ではありません。

目次

認知症と不動産処分

大原則は本人の意思、判断

大原則として、不動産の売却を含む本人の財産の処分は、当然ながら本人が判断します。
認知症が初期の段階で、ご本人が不動産を処分する明確な意思、誰にいくらで売却するのか等の判断、売買契約を締結して売却するまでの能力があれば、ご本人が主導で手続を行います。

認知症の程度と不動産処分の可能性

認知症の程度により、不動産処分の可能性が変わってきます。
認知症の進行や判断能力の低下により、「判断能力」がない状態だと、ご本人が単独で不動産を売却することは難しくなります。

判断能力とは、自己のが自由意志に基づいて契約等の法律行為をし、その行為の結果を予測判断する能力のことです。

未成年者や認知症により後見制度を利用する人は、法律上行為能力がない状態(制限行為能力者)と呼ばれます。

さらに、判断能力の低下だけでなく、「意思能力」がない状態だと、不動産の売買契約自体が無効になるため、売却はより困難となります。

不動産の売却が否認される可能性とその理由

認知症の程度によっては、本人の意思や判断能力が明確でないとみなされます。

判断能力がない方の売買契約は取り消されるリスクがあり、意思能力がない方の法律行為は無効となり、不動産の売買が後にひっくり返されるリスクが生じます。

これは、本人の意思に反する財産の処分や管理を防ぎ本人の利益を保全するためです。

認知症の方が所有する不動産の移転方法とその手続き

認知症の方が所有する不動産を処分する場合、相手が親族であるのか第三者であるのか、処分方法が贈与なのか売買なのか等に違いはありますが、いずれにしても通常の処分とは異なり、複雑な手続が必要となることが一般的です。

方法1:「贈与」

一般的には贈与は認められない

判断能力に問題のない人であれば、贈与をすることは自由ですが、認知症などで判断能力が低下している状態の方は別です。
判断能力が低下している人が一方的に贈与したいといっても、その意思が明確なものであるかが判断できず、後から贈与自体の有効性が争われたり、無効になるおそれがあります。

また、本人のために成年後見人が就任しているケースでは、後見人は本人の「利益」のために行動する本人のための代理人ですから、本人の財産を贈与(無償で譲り渡す)という行為は行えませんし、後見人を管轄監視する家庭裁判所が認めません。


 ただし、本人が保有し続けることでデメリットが大きい財産や、まったく無価値の財産、本人が認知症になる前に契約していた贈与などであれば、本人の判断能力が低下した後でも贈与できる可能性はあります。

しかし、これらの場合でも、後から取り消されたり無効とされるリスクを回避するために、認知症の可能性がある人に対しては、後見制度を利用し、家庭裁判所の許可をもって贈与するなど、適切な手続を選択しましょう。

贈与契約

贈与は書面による贈与と口頭による贈与の2パターンがありますが、いずれも贈与する人と受け取る人の「契約」によって成立します。

書面による贈与の場合、原則として撤回することができません。

口頭による贈与の場合、既に贈与した部分を除いて撤回することができます。

贈与税の発生

贈与の場合、贈与税が発生する可能性があります。
贈与税は、贈与により財産を取得した場合に、その取得した人に課される税です。


生前に贈与することで相続税の課税を逃れようとする行為を防ぐという意味で、相続税を補完する役割を果たしていますが、相続税よりも贈与税の方が税率が高く設定されているため、相続時精算課税制度、暦年贈与などの特別な方法を除いて、贈与はあまり活用されていません。


最近では相続に関して贈与の持ち戻し年数が3年から7年に伸長されるなど、相続発生前の財産承継(贈与)に対する風当りが強くなってきているものの、相続時精算課税制度で贈与税を先延ばしにしたり、無税にする方法もあります。

親から子へ、祖父母から孫へ、夫婦間で贈与する場合や不動産などの大きい財産を贈与する際は、必ず税理士に相談しましょう。

方法2:「売却」

所有権移転登記の手続き

判断能力のない人が売買などにより家の所有権を移転する際、本人の後見人が家庭裁判所で許可を得なければいけないケースがあります。


後見人がついていない方で認知症の疑いがある場合は、贈与などと同じく契約自体が無効になってしまうリスクがありますので、意思確認を何度も行うなど、慎重な対応が求められます。

売却に伴う譲渡所得税とみなし贈与税

売却には譲渡所得税が発生しますが、一定の要件を満たす場合は非課税となることもあります。

また、親から子等への親族に売却するケースで、売却価格が市場価格を大きく下回ることが良くみられますが、売却価格と市場価格に大きな乖離があると差額が贈与とみなされ贈与税が発生する可能性があります。

前提として後見制度の利用

先ほど説明したように、認知症が初期の段階で、ご本人が不動産を処分する明確な意思、誰にいくらで売却するのか等の判断、売買契約を締結して売却するまでの能力があれば、ご本人が主導で手続を行います。


一方、認知症が進行しており、判断能力の低下がみられる場合、そのままでは不動産を処分することができず、裁判所の手続を通じて本人のための代理人=後見人を選任してもらう必要があります。

成年後見制度とは?

認知症などによって精神上の障害をもち、判断能力が低下した人の代理人として、様々な契約や金銭の管理等を行う方を後見人と呼びます。
後見人は裁判所に申立をすることで選任されますが、その手続を利用することを成年後見制度と言います。

成年後見人の選び方とその役割

成年後見人は裁判所が選任しますが、特別な資格が必要なわけではなく、ご家族が後見人になることもあります。


申立の際に候補者をあげることができるため、ご親族や相談している専門家に候補者となってもらい、そのまま裁判所が認めて後見人になることが一般的です。


後見人の役割は、本人の財産管理や生活支援などの身上配慮です。
本人の不動産や預貯金などの財産の管理、本人の希望や体の状態、生活の様子等を考慮し、必要な福祉サービスや医療が受けられるよう、介護契約の締結や医療費の支払などを行ったり、不動産の管理、処分を行います。

成年後見制度の注意点

成年後見制度には注意点があります。それぞれ見ていきましょう。

候補者が必ず後見人になるわけではない

候補者をあげて裁判所に後見制度開始の申立てをしても、必ずしも候補者が後見人に選任されるとは限りません。
後見人は選任されたあと、原則はご本人が亡くなるまで就任するため、候補者が本人と物理的に近い距離にいるか(何かあったときに駆けつけられるか)、金銭管理を適切に行えるのか等の事情を考慮して裁判所が決定します。
資産額が多い方や、親族の候補者では後見人としての業務が期待できない場合は、法律専門家である司法書士や弁護士が選ばれることもあります。そのため、候補者は注意深く選択することが必要です。

後見人への報酬が必要になる

法律専門家が成年後見人に任命された場合、その報酬は本人の財産から支払われます。たとえ一時的に不動産の売却のために成年後見制度を利用する場合でも、その後のご本人の財産管理や身上監護のために後見人は就任し続けるため、報酬は本人が存命の間、継続して支払われることになります。
親族が後見人になる場合でも、報酬を受け取ることはできますが、親族を理由として受け取らないこともあります。

家庭裁判所への報告が求められる

成年後見人は毎年、家庭裁判所への報告や手続きが求められます。
そのほか、不動産を処分する際は許可申立をしたり、ご本人の住所が変われば住所変更をしたりと、その都度裁判所への連絡や手続が必要となります。

成年後見人のできることとできないこと

成年後見人が行えることには制限があります。
後見人は本人のために財産を管理する立場ですので、親族が本人に会いに来た際の交通費を支給することや、本人名義の空き家を第三者に賃貸したりといった行為は認められないことがほとんどです。
また、後見人は医療行為の同意もすることができませんので、法律の専門家が後見人になっていたとしても、医療行為(手術など)の同意は親族に依頼することになります。

途中で止めることができない

基本的に、一度成年後見人になると、ご本人が死亡するか判断能力が回復しない限り、途中で任務を終了することはできません。そのため、申し立て前に十分な検討が求められます。

名義変更のための書類とその作成方法

不動産の名義変更を行うためには、法務局に登記申請を行う必要があります。
また、先ほど説明したように一定の場合では後見人が家庭裁判所で許可を得なければ不動産の名義変更自体ができない場合もあります。


さらに、現所有者(認知症のご本人)の住所が移転している場合は、所有権の移転の前提として住所変更登記が必要であったり、古い買戻し特約や抵当権といった第三者の権利が付着していることもあります。


権利書を紛失している場合は権利書に代わる書類を作成することもあり、これは登記の専門家である司法書士にしか行えません。
不動産の名義変更の際には必ず司法書士に相談しましょう。

まとめ

認知症となった親の不動産名義変更は、認知症の進行度や法的制約、税金の問題など複数の要素を考慮する必要があります。贈与や売却などの移転方法、成年後見制度の活用、税金を抑えるための特例などを上手く活用し、適切な対策を講じることが大切です。詳しい手続きや法律については、司法書士への相談をおすすめします。

この記事が気に入ったら
いいねしてね!

目次
閉じる