相続手続を行う際に、税務署から「相続についてのお尋ね」が届くことがあります。
このお尋ねがきたからといって、焦る必要はありませんが、無視しておくよりも専門家に30分相談する方が安心確実です。
相続税のお尋ねがくる方、基準、時期、注意点を解説します。
相続についてのお尋ねとは
「相続についてのお尋ね」とは、亡くなった方が保有していた財産の金額が一定以上であり、相続税がかかる可能性のある方に対して、税務署から送付される書類です。
相続のお尋ねが届くからといって、必ずしも相続税がかかるとは限りません。
相続についてのお尋ねはなぜ届く?
相続が発生し、亡くなられた方の財産が一定金額以上である場合は相続税の申告(=相続税の納税)をしなければなりません。
相続税の申告が必要な場合は、故人が亡くなってから10か月以内に申告することが義務付けられており、期限を過ぎてから申告すると延滞税がかかります。
相続についてのお尋ねは、相続税がかかる可能性のある家庭に対して、申告の必要性を認識してもらうために送付されます。
税務署が財産の概要を把握している
ある方が亡くなり、役所に死亡届を提出すると、役所から税務署に対して死亡の旨が通知されます。
そして、税務署は故人の財産の概要を調査、把握することができますので、相続税がかかるかどうかをある程度認識しています。
過去の申告情報
亡くなられた方自身が不動産収入や個人事業等で所得を申告している場合や、先に亡くなった方について相続税の申告をしている場合は、当然ながら税務署は申告情報を把握しています。
その申告情報によって財産や預貯金を推測し、相続税がかかる可能性のある家庭に相続のお尋ねを送付することがあります。
預貯金
税務署は亡くなった方名義の預貯金について金融機関に照会し調査する権限があります。
預貯金は不動産や株式のように評価金額が変わることがなく、残額そのままが財産額となりますので、調査の結果預貯金が多い方には相続についてのお尋ねを送る確率が高くなります。
上場株式
上場株式については、証券会社から株式を有する方に対し「特定口座年間取引報告書」が毎年送られますが、同様の書類が証券会社から税務署に送られます。
特定口座年間取引報告書によって、亡くなられた方が保有する株式や配当額を把握することができます。
不動産
税務署は亡くなられた方名義の不動産情報(名寄せ台帳)を役所から取得することができます。
不動産は小規模宅地の特例制度の適用可否や評価方法によって相続税法上の評価額が大きく変わるため、役所が評価する不動産の金額(固定資産税評価額)とは必ずしも一致しませんが、不動産の数や種類によっては相続のお尋ねをする1つの目安にするようです。
また、よくあるケースで「不動産の相続登記手続きをしていない状態では相続のお尋ねが届かなかったのに、相続から数年経って相続登記手続きをしたら相続のお尋ねが届いた」ということがあります。
相続登記が完了した時点で、その情報が法務局から税務署に通知されます。
不動産について積極的に調査していなかった税務署が、この通知の際に概要を調査し、相続についてのお尋ねを送付するケースがあるようです。
相続についてのお尋ねは誰に届く?
相続についてのお尋ねは、相続税がかかる可能性のある場合に、相続人の代表者1名に対して届きます。
税務署が相続人調査を行い、住所と相続人を特定したうえで送付します。
お尋ねが届くタイミングはいつ?
相続が発生してからおよそ6~9か月後に届きます。
相続税の申告が必要な場合は10か月以内に申告を要しますので、期限の少し前に到着することになります。
ただし、事案によっては財産の調査や相続人の確定に時間がかかるため、相続が起きてから何年も経過してから届くこともあるようです。
相続についてのお尋ねの内容は?
相続についてのお尋ねの封書の中には「申告要否検討票」が入っています。
相続税の申告要否検討表には次の事項を記載して税務署に返送します。
- 亡くなった人の住所、氏名、生年月日、死亡日、職業
- 相続人の氏名、続柄
- 遺産(不動産)の所在地、面積、概算の評価額
- 遺産(金融資産)の種類、金額
- 保険金・死亡退職金の金額
- その他の財産の種類、数量、金額
- 生前贈与を受けた人の氏名、贈与財産の種類、金額
- 負債、未払税金、葬式費用の金額
- 相続財産の概算
税理士に相談済みの場合は、税理士に任せているので申告要否検討表を記載して返送する必要はありません。
まだ税理士に相談していない段階で相続についてのお尋ねが届いた場合は、相続税がかかるかどうかを税理士に相談しましょう。
無視するとペナルティがある?
相続についてのお尋ねは、あくまで税務署が任意に送付している書類ですので、返送しないで無視したからといってそれ自体に特別なペナルティやデメリットはありません。
しかし、相続税の申告が必要な場合に申告期限を過ぎてしまうと、遅れたことに対する無申告加算税や延滞税が科されることになります。
さらに、申告内容によっては税務署の調査が入り、申告期限の超過や申告内容に悪質な誤りがあると重加算税が科されることもあります。
相続のお尋ねを無視することや申告要否検討表の返送が遅れること自体にはペナルティはありませんが、税理士に相談する方が良いでしょう。
相続についてのお尋ねが届いたときの対処法
速やかに税理士に相談
相続についてのお尋ねが届いた際にもっとも確実な方法は、税理士に相談することです。
税理士に財産のわかる書類を提示して相続税の申告要否を判断してもらい、申告が必要であれば速やかに対応してもらいましょう。
税務署に電話・窓口相談
相続税の申告要否検討表そのものの記載はそれほど難しいものではありません。
税務署のHPにも申告要否検討表の記載方法例が掲載されています。
しかし、不安がある方や書き方が分からない場合は、税務署に電話相談するか、窓口に相談しに行きましょう。税務署の窓口には輪番制で税理士がおり、無料で相談することができます。
相続についてのお尋ねの注意点
お尋ねが届く=申告がいるではない
相続についてのお尋ねが届いたすべての方が、相続税の申告が必要かといえばそうではありません。
あくまで申告漏れや遅れが生じないために、税務署が財産の概要のみで判断して広く浅く相続人に周知することが目的ですので、お尋ねが届く=相続税がかかるわけではありません。
お尋ねが届かない=申告が不要ではない
相続税がかかる相続人に相続のお尋ねが届かないことも良くあります。
相続税の申告は相続人自身が財産を把握したうえで申告することが義務化されていますので、届かなかったことを理由に相続税の申告をしない、遅れることが正当化されることはありません。
特に、故人名義の不動産を長期間放置しており、相続登記手続きをきっかけに税務署から相続についてのお尋ねが届くことが良くあります。
相続についてのお尋ねが届くとしても相続開始後6~9か月経過してからですので、税務署の書面に関係なく税理士に相談することが重要です。
無視したから申告を回避できるわけではない
相続についてのお尋ねはあくまで財産の概要を回答する用紙に過ぎません。
相続税がかかる相続人のもとに相続についてのお尋ねが届き、それを無視することで相続税の申告自体を有耶無耶にできるわけではありません。
相続についてのお尋ねを無視してもペナルティはありませんが、相続税がかかるのに無視して税理士に相談しないのはデメリットが非常に大きいため、まずは税理士に相談しましょう。
不動産の相続登記に注意
相続についてのお尋ねが不動産の相続登記手続きをきっかけに届くことが良くあります。
長年放置している不動産の相続登記をしたことで税務署が故人名義の不動産を把握し、お尋ねを送ることがあるようです。
不動産の相続については、小規模宅地の特例が利用できたり、遺産分割協議の内容によって相続税や登記手続に大きな影響を及ぼします。時には手続きの順番、内容によって数百万円の差が出ることもあります。
不用意な税金を支払わなくても良いように、不動産の相続登記手続きについては司法書士に相談しましょう。