不動産は日本におけるもっとも高額な資産の1つであり、不動産の権利を有していることを証明するために登記をします。
不動産を売買したときは売主から買主への所有権移転登記が、不動産の所有者が亡くなったときは故人から相続人への相続登記が必要になります。
しかし、時に「未登記」と呼ばれる不動産が存在し、単純な売買や相続登記では解決できないことがあります。
未登記とはどういうものなのか、未登記不動産を調べる方法や対策などをわかりやすく解説します。
登記とは

不動産は日本におけるもっとも高額な資産の1つであり、不動産の権利を有していることを証明するために登記をします。
登記とは、土地や建物の基本情報、所有者、権利関係を明確にするための手続きのことで、登記手続きをすると「登記事項証明書」という不動産に関する情報が記載された証明書に記録されます。
日本にある土地と建物はそのほとんどが登記されており、登記事項証明書を取得することで不動産の場所、地目や種類、面積、所有者や抵当権などの付随権利の有無を知ることができます。
未登記とは

土地建物の中には登記がされていない状態のものが存在し、これを「未登記」と呼びます。
不動産は大きく分けると土地と建物の2つであり、未登記の不動産のほとんどは建物です。
未登記土地

未登記土地とは、文字通り「登記がなされていない」土地のことで、一度も土地に関する記録が作成されたことのない状態を指します。
つまり、その土地が日本に存在することを公に証明する登記事項証明書自体が存在しないのです。
現在の日本において未登記の土地はほぼ存在しません。
登記未了土地との違い
亡くなった方名義のまま登記をしていない土地は「登記未了土地」と呼ばれ、登記記録自体が存在しない未登記土地とは異なります。
しかし、本当に未登記である土地はほぼ存在しないので、世間一般的には亡くなった祖父母や配偶者の名義のままで登記手続きを放置している土地のことを未登記と呼ぶことが多いかと思います。
建物表題登記、保存登記

建物は、建築されると「表題登記」と「所有権保存登記」の2つの登記をなします。
表題登記とは、建築された建物の所在、家屋番号、種類、構造、床面積、新築年月日など建物そのものの基本的な情報を記録する登記のことで、建物を測量したうえで土地家屋調査士が行います。
その後、表題登記がなされた建物について権利関係を明らかにするために、所有者に関する「所有権保存登記」をします。
未登記建物

未登記建物とは、前述の表題登記がなされていない建物、もしくは表題登記はしているものの所有権保存登記をしていない状態の建物を指します。
所有権保存登記がなされている建物には家屋番号が付されるため、未登記か否かは建物に「家屋番号」が付されているかで判断ができます。
未登記不動産があるか調べる方法

固定資産税納税通知書
毎年役所から通知される固定資産税納税通知書の建物に家屋番号が付されていない場合、その建物は未登記であることがわかります。
家屋の課税明細欄の家屋番号が空欄になっているかどうかを確認してみましょう。
名寄せ台帳
固定資産税納税通知書が手元にない状態で未登記不動産があるかどうかを調べるには、役所で名寄せ台帳を請求する方法があります。
「名寄せ台帳」とは、市区町村に対して故人の氏名、住所、生年月日、死亡日を示し、一致する方の所有する不動産の一覧が記載された書類のことです。
名寄せは市区町村単位で請求しなければならないものの、所有だけではなく共有する不動産や未登記の不動産まで、役所が把握している不動産であればすべて開示されます。
名寄せ台帳にもし「家屋番号」が付されていない建物があれば、未登記建物が存在していることになります。
未登記建物のデメリット

(1)権利を主張できない
登記とは、その不動産の所有権が誰にあるのかを対外的に主張できる重要な権利情報です。その登記が未登記であるということは、第三者や隣人に対して、自分が建物の所有者であることを主張できないことになります。
建物の所有者であることを主張できないとなると、建物を不法に占拠する人や建物に損害を与えうる相手に対して、訴訟や立ち退きなどを主張することが難しくなる可能性があります。
(2)不動産を売却できない
未登記の建物は誰が所有権を有しているのかを明示できていないため、例えその建物に長年住んでいるからといって売却することができない可能性があります。
買主がその建物に住む場合、所有権が売主から買主に移転したことを証明するために登記が必要であり、そのためには建物の登記をすることになります。
(3)リフォームローンを組めない
建物が未登記だと権利関係が主張できないため、リフォームローンなどの銀行からの借り入れが通らない可能性があります。
銀行は融資をする際に不動産を担保に取るため、抵当権という権利を不動産に設定します。
建物が未登記だと抵当権の設定ができないので、急なリフォームなどが出来ないおそれがあります。
未登記を解消して建物を登記するには?

未登記建物を登記するには、「建物表題登記自体ができていない建物」なのか、「建物表題登記はされているが所有権保存登記ができていない建物」なのかによって対応が変わります。
表題登記自体ができていない
建物表題登記自体ができていない建物の場合、まずは建物の表題登記をして、その後所有権保存登記をすることになります。
建物表題登記とは、建物の基本的な情報、すなわち建物の所在、家屋番号、種類、構造、床面積、新築年月日など建物そのものの基本的な情報を記録する登記のことで、土地家屋調査士が専門家です。
まずは土地家屋調査士に依頼し、建物の面積、構造などを調査してもらい、図面を作成してもらうことから始まります。
所有権保存登記ができていない
建物表題登記があるものの所有権保存登記ができていない建物の場合、所有権保存登記をすることになります。所有権保存登記は司法書士が専門家です。
建物表題登記には、表題部所有者という欄に建築建物の材料費を負担した者の住所氏名が記録されています。
表題部所有者が現在も存命であれば、その表題部所有者が司法書士に依頼して登記申請を行います。表題部所有者が死亡している場合、その相続人が司法書士に依頼し、所有権保存登記の申請人となることができます。表題部所有者の相続人が申請人となるときは相続の手続となるため、表題部所有者が死亡したことがわかる戸籍、相続人の戸籍、遺産分割協議書などが必要となります。
未登記不動産は誰に相談すべき?

未登記不動産がある場合、誰に相談すべきか悩むかと思います。
弁護士、司法書士、税理士、行政書士、土地家屋調査士など様々な専門家の中で、未登記不動産を相談すべきなのは司法書士です。
未登記不動産は、不動産登記と民法、相続法などの法律を横断的に精通していることが必須であり、これらの知識を横断的に有している専門家は司法書士しかいません。
弁護士、税理士、行政書士も相続の手続きを一定の範囲でできますが、どれも登記には詳しくありません。
土地家屋調査士は土地や建物自体の登記には精通していますが、相続法などの民法には詳しくありません。
未登記不動産がある場合は、必ず司法書士に相談しましょう。
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