相続が起きると、葬儀費用、役所での手続、入院費や施設費の清算、自宅の遺品整理など、様々な費用がかかります。
ここでは相続手続きの中で、預貯金と不動産についての相続手続にかかる費用を、遺言書の有無に分けてご説明します。
相続手続の流れ
相続手続は、遺言・相続人・財産調査から始まり、遺産分割協議書の作成などの一連の流れがあります。
具体的なケースによって行う手続内容が変わりますが、大まかには次のような手続きを行うことになります。
①相続人調査
相続人調査とは、亡くなった方の相続人が誰なのかを、法的に証明するために行う調査です。
具体的には亡くなった方の出生から死亡までのすべての戸籍を取得し、法定相続人を特定します。
②財産調査
財産調査とは、亡くなった方名義がどんな財産を持っているのかを調べることを指します。
代表的な不動産、預貯金などは固定資産税納税通知書や預貯金通帳の存在から容易に把握できますが、稀に解約し忘れている預金、ネット銀行など通帳のない口座、「私道」や「用悪水路」など固定資産税のかからない不動産を所有していることもあります。
財産調査でこれらの財産がないか可能なかぎり調査し、相続手続漏れを防ぎます。
③遺産分割協議書の作成
相続人が複数人おり、かつ遺言書が存在しない場合、ほぼすべての相続手続で遺産分割協議書を作成します。
遺産分割協議書は相続人全員が「誰が、何を、どのように相続するのか」を合意した書面のことであり、相続人のうち1名でも協議に非協力的な方がいると遺産分割協議が成立しなくなります。
遺産分割協議が成立すると、相続人全員が署名実印で押印し、印鑑証明書を提出することで次の相続手続きに移ることができます。
④相続登記、預貯金の解約
相続人調査、財産調査、遺産分割協議書の作成が終わると、はじめて不動産の相続登記、預貯金の解約など具体的な相続手続きに移ることができます。
相続手続にかかる費用はいくらぐらい?
相続手続にかかる費用は、大きくわけると①調査にかかる実費、②登録免許税、相続税などの税金、③司法書士や税理士への専門家報酬の3つにわけることができます。
①調査にかかる実費
相続人調査は亡くなった方の出生~死亡までのすべての戸籍を収集します。
戸籍は1通450円、原戸籍や除籍は750円かかります。
一般的に、配偶者と子供2名の合計3名が相続人になるケースでは、戸籍収集の実費が約5000円~1万円程度かかることが多いでしょう。
また、財産調査では、通帳の再発行や残高証明書の取得、入出金明細の取得など、預貯金や金融資産の調査内容によって大きく費用が変わります。
調査の必要がないケースでは数千円程度ですが、多種多様な財産を持っている方の場合は調査だけで実費が数万円になることもあります。
②登録免許税、相続税などの税金
不動産を相続により名義変更(相続登記)するには、登録免許税という税金が生じます。
登録免許税は、不動産の評価額の1000分の4かかるため、例えば1000万円の評価額の土地を相続する際には4万円の登録免許税がかかります。
登録免許税は、役所から届く固定資産税納税通知書に記載があるほか、役所発行の評価証明書にも記載されています。
また、一定以上の財産を保有していた方が亡くなった場合、相続税が発生します。
相続税算定にあたり様々な税控除があるので一概には言えませんが、相続税がかかるケースは、相続財産の額が「相続人の数×600万円+3000万円」で求められる基礎控除額を超えている場合に発生する可能性が高くなります。
相続税は最大で30%ほど課税されることもあり、3億程度の資産を有している方の場合、約1億を相続税として納税することもあります。
③専門家報酬
相続手続きを自分で行わずに専門家に依頼することもできます。
亡くなられた方名義の不動産が存在する場合、主な相談先の専門家は司法書士です。
専門家報酬は相続人の数、遺産分割協議の合意可能性、他の手続(未成年者や認知症の方がいるか)、不動産や預貯金の数によって報酬が変わるため一概には言えませんが、一般的に相続人が4名程度、不動産1~3つ程度の相続手続は10万~20万円程度になることが多いでしょう。
相続手続の費用が変わるのはどんなケース?
相続の手続は、具体的なケースによって費用や手続の流れが大きく変わり、特に以下に該当する場合には専門家報酬が大きく変わります。
当事者に関するもの
・相続人がもめている
・相続人の数が多い
・相続人の1人が行方不明・音信不通、未成年者、認知症に該当する
・相続人の1名が外国籍or外国に居住している
これらに共通するのは、相続人の話し合いがスムーズにいかない可能性が高い点です。
相続人の話し合いがうまくいかない、あるいは相続人の話し合いの前提として裁判所や公証役場の手続きを経る場合、費用が高くなりがちです。
財産に関するもの
・財産が多額(数千万円以上)
・財産の全てを把握できていない
・財産の種類が多い(預金口座6つ、証券口座3つ、貸金庫あり等)
・生前に多くの財産を贈与している
・生前に多くの預金などを解約、引き出している
・株の配当や家賃収入などを得ていた
財産調査に要する時間、労力が大きい場合は、費用が高くなる傾向にあります。
特に、多様な財産を保有しているケースでは、漏れが生じるリスクもあるため慎重な調査が求められ、さらに相続税の可能性があるため限られた時間内での正確な財産把握が要求されます。
手続に関するもの
・財産を受け取る当事者が多い(預金を5名に振り分ける等)
・亡くなった方が、生前に住所や本籍を転々としていた
・遺言書がある(公正証書遺言・自筆証書遺言・法務局保管)
・遺産分割協議書を何度も作成する、内容が複雑である
・数次相続が発生している
相続手続上で、相続財産を数多くの相続人に振り分けたり、何度も遺産分割協議書を作成し直すようなケースでは、手続きに通常予測される量を超えて業務を行うため、報酬が高くなることがあります。
上記に該当する場合は、ご自身で手続をすることが困難な(場合によってはかえって時間と費用がかかる)こともありますので、必ず司法書士など相続の専門家にご相談ください。
相続のケース別、費用一覧
参考までに、当事務所にご依頼いただいた場合の費用を、ケース別に分けてご紹介します。
<相続のケース>
亡くなった方 A
相続人 妻B、子供C・D の3名
相続財産 不動産(戸建ての土地建物) 価格1000万円
預金口座2つ 価格計500万円
子供はいずれも成人しており、妻含めて認知症等になっておらず、もめていないケースです。
遺言書の有無によって手続を一部省略できる場合や、反対に追加で手続を行う必要がありますので、遺言書の有無に応じて説明します。
1.遺言書がない場合
遺言書がない場合、大まかな費用は次のとおりです。
費用 | 備考 | |
---|---|---|
相続人・財産調査 | ~1万円 | 戸籍の数により変動 |
登録免許税 | 4万円 | 価格の0.4% |
司法書士報酬 | 12万円 | 預金解約を自身でする場合 |
相続税 | 0 | |
合計 | 約16~17万円 |
2.公正証書遺言がある場合
費用 | 備考 | |
---|---|---|
相続人・財産調査 | ~5000円 | 戸籍の数により変動 |
登録免許税 | 4万円 | 価格の0.4% |
司法書士報酬 | 8~10万円 | 預金解約を自身でする場合 |
相続税 | 0 | |
合計 | 約12~14万5000円 |
3.自筆証書遺言が手元にある場合
費用 | 備考 | |
---|---|---|
遺言書検認申立て | 1~2万円 | 相続人の数により変動 |
相続人・財産調査 | 1~2万円 | 戸籍の数により変動 |
登録免許税 | 4万円 | 価格の0.4% (相続人以外が取得する場合は2%) |
司法書士報酬 | 約25万円 | 預金解約を自身でする場合 |
相続税 | 0 | |
合計 | 約31~33万円 |
4.自筆証書遺言を法務局に預けている場合
費用 | 備考 | |
---|---|---|
相続人・財産調査 | ~1万円 | 戸籍の数により変動 |
登録免許税 | 4万円 | 価格の0.4% |
司法書士報酬 | 12万円 | 預金解約を自身でする場合 |
相続税 | 0 | |
合計 | 約16~17万円 |
以上のように、同じ家族構成、財産でも遺言書の有無や相続人が揉めている等によって費用が変わります。
相続登記を司法書士に相談するメリット
不動産の名義変更、相続登記の専門家は司法書士です。
1.相続に関する不安、疑問などを解消してもらえる
相続は、そもそも誰が相続人になるのか、相続人で揉めないようにするにはどうするのか、相続税や費用がどれぐらいかかるのか、といった不安や疑問点が非常に多い手続です。
相続専門の司法書士に依頼することで、疑問点や不安を解消することができます。
2.相続人調査、財産調査などを正確かつスピーディに行える
戸籍を集めるためには役所に請求し、財産を調査するには法務局や銀行に請求することになりますが、いずれも平日の日中にしか空いていないため、働きながらこれらを進めるのは非常に時間と労力がかかります。
相続を専門とする司法書士であれば、相続人調査(戸籍収集)や財産調査などを正確かつスピーディに行うことができます。
3.相続登記申請に必要な書類を作成してもらえる
相続登記には、遺産分割協議書や登記申請書、場合によっては上申書などを用意しなければなりません。
これらは書き方が決まっており、万が一不備があれば何度も法務局に行ったり、署名押印し直さなければなりません。
相続専門の司法書士であれば、これらの書類を正確に作成しますので、ご依頼者様の負担が大幅に減ります。
4.相続登記申請や銀行の解約までを依頼できる
相続専門の司法書士であれば、不動産の相続登記はもちろんのこと、預貯金の解約や株式の移管手続など、亡くなられた方の相続手続を一括してお引き受けすることができます。
当事務所は相続専門ですので、放置されている不動産や空き家問題などにも対応できます。お気軽にご相談ください。
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