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遺留分を主張した、請求された場合の相続税

2023 11/24
遺留分を主張した、請求された場合の相続税

遺留分とは亡くなった方の兄弟姉妹以外の法定相続人に認められた、「遺産を最低限取得できる権利」のことです。

相続税は、相続が起きてから10か月以内に税務署に申告をすることになり、財産の取得割合に応じて相続人が申告と納税をします。

遺留分を主張したり、反対に請求された場合、相続税の申告や納税、金額などにどのような影響があるのかを解説します。

目次

相続税とは

相続税とは、亡くなった方の財産が一定金額以上ある場合に、受け取った相続人等が支払う税金のことです。相続税は相続人の数、自宅で同居する相続人の有無、相続する財産の内容等によって大きく変わりますが、大雑把にいうと基礎控除以上の資産を有しているときに相続税がかかることになります。

相続税申告、納税の対象になる人

相続税を申告する場合、財産を受け取る相続人が税務署に税金を申告して納税します。

取得する相続財産の割合によって、納税額が変わりますので、相続人ではあるものの、一切財産を受け取らない人は相続税がかかりません。

遺留分とは

遺留分とは、亡くなった方の法定相続人に認められた、「遺産を最低限取得できる権利」のことです。

具体的には、亡くなった方の配偶者、子ども、親に認められた権利です。亡くなった方の兄弟姉妹には遺留分が認められていません。

遺留分を主張するケース

遺留分は、遺言書や生前贈与によって相続人が本来受け取れるはずの最低限の財産額を侵害されている場合に、取り分が増えている相続人や受遺者(遺言で贈与を受けた人)に対して遺留分の請求をします。

自分が受け取れる最低限の財産額を下回っているときに限り遺留分を主張できるので、遺言や生前贈与があるからといって必ずしも遺留分の問題がでてくるわけではありません。

遺留分を主張した、請求された場合の権利関係

遺留分を主張した、請求された場合、遺留分を侵害している人(取り分が増えている相続人や受遺者)は、遺留分を主張した人(遺留分権者)に対して、金銭を支払います。

相続人Aが200万円の遺留分を有しているのに、相続で100万円しか受け取れなかった場合、遺言や生前贈与で財産を多く受け取っている相続人に対して遺留分を主張し、請求された相続人は差額の100万円を支払うことになります。

遺留分と相続税の申告、納税

遺留分の請求があった場合の相続税の申告や納税への対応は、遺留分の請求等が相続税の申告前か後かによって変わります。

遺留分の請求が相続税の申告をする前の場合

遺留分を請求した人遺留分を請求された人
遺留分額が確定している相続財産に遺留分額を足した金額で申告し納税相続財産から遺留分額を除いた金額を申告し納税
遺留分額が未確定遺留分は考慮せずに申告遺留分は考慮せずに申告

遺留分の具体的な金額が確定している場合は、遺留分を請求する人、請求された人どちらも遺留分の金額を反映させた内容で相続税の申告をします。

一方、遺留分の主張をしたものの、相続税の申告期限である「相続開始から10か月」の時点で遺留分の具体的な金額に争いがあったり、複雑な計算により遺留分額が確定していない場合は、いったん遺留分の請求がないものとして相続税の申告をします。

遺留分の請求、確定が相続税の申告をした後の場合

遺留分を請求した人遺留分を請求された人
相続税の申告方法修正申告(期限後申告)をする税務署に更正の請求をする

遺留分の請求、確定が相続税の申告をした後の場合、既に遺留分がないものとして申告と納税が終わっている状態ですので、申告内容を修正(更正)することになります。

遺留分を請求した人

遺留分を請求した人は、既にした申告から遺留分の額だけ自分の取得財産が増えているわけですから、修正申告を行い、追加で納税をします。

なお、最初の申告時点でまったく申告していない人が遺留分を請求したことで初めて申告する場合は修正申告ではなく期限後申告となります。

遺留分の額が確定したときから4か月以内に申告をすれば、申告が遅れたことの延滞税や無申告加算税はかかりません。

遺留分を請求された人

遺留分を請求された人は、既に相続税の申告と納税と済ませています。つまり、遺留分の額だけ自分が余分に申告、納税をしてしまっていることになります。

そこで、税務署に対して更正請求を行うことで、払いすぎた税金の還付を受けることができます。

相続税と遺留分の注意点

(1)相続税の期限は10か月

相続税の申告期限は、相続が発生したときから10か月以内です。
そして、先般のコロナのような例外でないかぎり、申告期限は原則として延長することができません。

遺留分を請求されたタイミングが相続税申告期限の直前ということもありえますが、だからといって申告を先延ばしにできるわけではないので、法的な紛争解決と税金の申告納税を同時に並行して行うことになります。

(2)遺留分の主張は期限がある

遺留分の主張は「自己が相続人であり、かつ相続分を侵害されていることを知ってから1年以内、または相続開始から10年」という期限があります。

つまり、遺留分を侵害されている状態を知ったまま放置すると、侵害を受け入れたことになってしまい、後々主張ができなくなります。

遺留分は具体的な侵害額が分かっていない状態でもとりあえず主張することができるため、遺留分を侵害されていることを知った場合は速やかに相手方に通知をすることが大切です。

なお、通知の方法や書式は特に決まりがありませんが、通常は証拠として残しておくために配達証明付き内容証明郵便で相手方に通知することがほとんどです。

(3)遺留分の範囲や算定は複雑

遺留分の対象になる財産は、遺言、遺贈に限らず、生前にされた特別受益や生前贈与も含まれます。また、遺留分を侵害することを知ってされた生前贈与は期間の制限を受けることなく遺留分の対象になるため、亡くなった方と財産を多くもらった方の通帳の動きや物的証拠の確保が相続財産や遺留分の金額に大きく影響します。

反対に、遺留分を主張する人が生前に贈与などを受けている場合、それは相続財産の前渡しとなり、その分だけ主張できる遺留分額は減少します。

さらに、遺留分は金額で算定しますが、不動産や貴金属など、容易に金額で算定できない財産がある場合、その算定方法について相手方と争いになることも珍しくありません。

このように、遺留分の範囲や算定は非常に複雑ですので、税理士や弁護士に相談せずに進めていくことはかなり難しいでしょう。

(4)当事者で解決しないときは弁護士に相談

遺留分は先ほど述べたように複雑な論点が絡み、その結果によって結果がなん百万も変わることがあります。

弁護士費用を差し引いても、それ以上の金額の差が生まれることもありますので、当事者での解決が難しい場合は迷わずに弁護士に依頼しましょう。

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