財産を管理・承継する制度として家族信託、遺言、成年後見が挙げられます。
家族信託、遺言、成年後見はそれぞれ財産に関して本人・第三者(相続人)が介在する制度ですので、共通点や違いがあります。
ここでは家族信託と遺言の2つの制度に絞り、家族信託と遺言の制度の違い、費用などについて解説します。

家族信託と遺言の共通点と違い
家族信託と遺言の共通点
家族信託は、自分(委託者)の財産を信頼できる家族や親族など誰か(受託者)に託す制度です。
遺言は、自分の財産を家族や親族、お世話になった人や団体などに承継させる制度です。
家族信託と遺言は「誰かに自分の財産を承継させる」という点で共通しています。
家族信託と遺言の違い
家族信託と遺言の違いは数多くありますので、違いを具体的にまとめました。
| 家族信託 | 遺言 | |
|---|---|---|
| 認知症の方が利用すること | × | △ |
| 効力が発生するとき | 存命中から | 相続発生時(遺言者死亡時) |
| 財産の受取人と管理者の同一性 | 受取人≠財産管理者 | 受取人=財産管理者 |
| 何代にもわたる財産承継の指定 | 〇 | ×(1代限り) |
認知症になってから利用できるか
家族信託は「契約」です。しかも、日用品の購入などと異なり高度な(難しい)契約に位置付けられています。
認知症や寝たきりで判断能力が低下してしまった方は、法律上「自分自身でメリットデメリットを検討し、内容を理解し、判断する」という契約の能力がない方と考えられてしまうため、家族信託を利用することは原則できません。
遺言は、法律上、認知症などで判断能力が低下してしまっても、内容によっては作成出来ると考えられています。
ただ、本当に本人の意思に基づいて作成されたのか、相続人でトラブルになることがありますので、医師や法律の専門家に相談のうえ、慎重に行う必要があります。
効力が発生するとき
家族信託は自分自身の財産を誰かに管理してもらうために利用されますので、財産を託すご本人が契約した瞬間から効力を発生させ利用することができますし、自分の死後や判断能力低下時など条件を付すこともできます。
さらに、家族信託は財産を託したご本人が亡くなった後も終了することなく、次の世代の方に財産を託し続けることができます。
対して遺言は、「自分が亡くなった後に、自分の財産をこの人に渡します(相続させます)」という意思表示ですので、あくまでご本人の死後にしか効力が発生しません。
財産の受取人と管理者の区別
家族信託は、財産の受取人と管理者を区別することができますが、遺言は財産の受取人と管理者を区別することはできません。
例えば、財産を託す人Aが、自分の子供である未成年者Bのために家族信託を利用するとします。
家族信託であれば、自分の預貯金と家の管理を別の家族Xに託し、XがAの子供Bにお金を定期的に渡す、といった契約も可能です。
遺言では、Aができるのはあくまで財産の相続人をBに指定することだけで、XとBには何の関係もないため、B自身が財産を管理しないといけません。
何代にもわたる財産承継の指定
家族信託は、財産受取人(当初受益者)が死亡した場合に、次の受取人(受益者)を指定することができ、これが家族信託と遺言との最も大きな違いです。
先祖代々続く財産を子供に託し、託された子供が万が一亡くなったら自分の弟に託す、といったことが家族信託であれば可能ですし、その管理方法(売ってはいけない)などの指定までできます。
家族信託は、長男が死んだら家は長男の妻ではなく、二男に承継させたい等の相談時に活用することができます
遺言はあくまで「自分が亡くなった後に、自分の財産をこの人に渡します」という意思表示ですので、財産を託すご本人が死亡したあと、財産の受取人(相続人または受遺者)が万が一亡くなったら、通常の相続(遺言を残している場合は遺言)手続きになります。
さらに、遺言では財産の受取人がどのように財産を活用、処分するかを指定できませんので、ご本人が売ってほしくないと思っていても、それを制限することはできません。
遺言は財産を受け取った方がどう処分活用しても自由ですし、受け取った方が死亡すればその相続人に流れていきます。
家族信託と遺言の費用
家族信託と遺言はどちらも公正証書で作成することをおすすめしております。
家族信託と公正証書遺言を当事務所にご依頼いただいた場合の書類作成時費用を比較します。
| 家族信託 | 公正証書遺言 | |
|---|---|---|
| 作成費用 | 44万円~ | 11万円 |
| 信託登記 | 11万円 (不動産信託時) | 0円 |
※いずれの手続きも必要書類収集の実費、交通費などがかかります。
家族信託は自由度が高く、ご本人の意思を生前から死亡後何年にもわたり継続させられることができる制度ですが、比例して書類作成の難度が高いため、費用が高くなります。
遺言書は家族信託より費用が安い代わりに、財産の受取人(相続人・受遺者)を一代までしか指定できませんし、財産を受け取った後のことを指定できません。
相談者の実現したい内容や状況に応じて、どちらの制度が良いか専門家に相談しながら選択し、後悔のないようにしましょう。

家族信託、遺言どちらを利用すべきか
遺言がオススメなケース
・自分が亡くなった後に財産を引き継いてほしい相手が決まっている
・全財産を特定の人に承継させたい
・費用をなるべく安くしたい
・財産を受け取った方がどのように財産を処分しても問題(心配)ない
家族信託はこんな方にオススメ
・今すぐ自分の財産を管理活用したい、してほしい
・障害や認知症のある方に、長期的に継続して金銭を渡す仕組みを作りたい
・財産を受け取った方が死亡したら、また別の人に財産を承継してほしい
・お金がかかっても、自分の希望どおりの契約、内容を実現したい
相続・生前対策専門の当事務所では、遺言の作成、家族信託契約のご相談を数多くいただいております。
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